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Lovin 'you after CCA 10

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「だって凄く腹が立ったし、まぁ、あの時は総帥様じゃなくて大尉だったしね」
「だからって…」
「それにあの人…アムロさんを泣かせたんだ。アムロさんがあの人の手を振り払ってしまった時…アムロさん、泣いてたんだ。ディジュのコックピットで膝を抱えて…声を殺して泣いてた。自分じゃあの人を支えられないって…凄く辛そうに泣いてたんだ。」
カミーユが、グラスを握る手に力を込める。
「確かに…あの時、大尉の手を振り払ってしまったのは間違いだったと思う…、でもタイミングも最悪だったし…散々辛い目に合ってきた、あの時のアムロさんの精神状態を考えたら…仕方がなかったんだ…」
「カミーユ…」
「あの後、クワトロ大尉が行方不明になったと知って…それに、俺の状態を知って…アムロさんは物凄く自分を責めたらしい…。だから、あんなに怖がっていた宇宙にも上がって…ずっと大尉を探してたんだ…」
カミーユの瞳に涙が滲む。
「大尉もさ、いくら振られて辛かったからってアレはやり過ぎだろう!なんであんな無茶苦茶な事考えたんだか!」
人の革新を願い、腐敗した地球連邦政府を粛清する為にアクシズを地球に落とそうなどと…。
しかし、そんなカミーユの叫びに、ギュネイが目を伏せる。
「ギュネイ?」
「…でもさ、俺…大佐のその気持ちは分からなくも無いんだ。連邦のお偉方のやり方は本当に酷かったし…俺みたいな戦災孤児なんて…大佐が助けてくれなきゃとっくに死んでた」
確かに、やり方に問題はあったにせよ、スペースノイドの実情を憂い、行動に移したあの人は本当に凄いと思う。自分たちは文句を言うだけで何も行動を起こしていない。
「まぁな…」
「けどさ、アムロ大尉が捕虜になった時、尋問の後二人っきりになって、二人の間でどんな話があったか知らないが、大佐は多分、無理やりアムロ大尉を…」
ギュネイが言い掛けたのを、誰かが肩を叩いて止める。
振り返ると、アルフレッドが少し寂しげな表情を浮かべて立っていた。
「ドクター…?」
「ギュネイ准尉、そのくらいにしておこうか。アレは…クワトロ大尉も物凄く反省していたから…」
「アルフレッドさん」
「話に割って入ってごめんよ。途中までは面白くて聞いてたんだけど、後半は二人のプライベートな事だったから…他人がどうこう言うのはどうかと思ってね」
アルの言葉に、ギュネイがすまなそうに小さく頷く。
「ああ、別に責めてる訳じゃないから。そんなに気を落とさないで」
優しくフォローするアルに、ギュネイがもう一度頷く。
「アルフレッドさんは…アムロさんの事が好きなんですよね?」
カミーユの問いにアルが一瞬、驚いた表情を浮かべる。しかし、直ぐに優しく微笑む。
「そうだね。もうかれこれ七年くらい片想いしてたかな。その間、誰とも恋愛をしなかった訳じゃないけど…結局アムロを諦めきれなかった。」
そのアルの答えに、カミーユが違和感を覚える。
「過去形?」
「ああ、最近ね。良いなって想える人が出来たんだ」
「えええ!誰ですか?」
「うーん。すっごく綺麗な人で、普段は物凄くしっかりしてるんだけど、不意に見せる不器用さと言うか素直さと言うか…。なんだかそれが可愛くてね。目が離せないんだ」
優しげに微笑むアルに、「へぇ…」っと、二人が思わず声を揃えて羨ましそうに呟く。
「俺たちの知っている人ですか?」
カミーユの問いに、「うーん」と少し考えると、
「ふふ、多分、彼女が照れてしまいそうだから内緒かな」
明らかに知り合いだと言っているが、綺麗だけど不器用で素直と言う人物が思い当たらない。
二人で悩んでいると、不意にアルの携帯に連絡が入る。
「あ、もしもし?今から?ええ、良いですよ。それじゃあ、いつもの場所で」
通話の向こうから微かに聞こえてきた声に、ギュネイが目を丸くする。
「まさか…、ドクターの相手って…」
そこまで言いかけたところで、アルがギュネイに向かい、口の前に人差し指を立てて、内緒だよと微笑む。
『やっぱり、ナナイ大尉!?』
「それじゃ、僕はこの辺で失礼するよ。二人ともお酒は程々にね。」
そう言って、にこやかに去って行く後ろ姿を、ギュネイが呆然と見つめる。
そして、思わず呟く。
「不器用で素直?ドクター、目が腐ってないか!?」
酷い言い様に、カミーユがギュネイに詰め寄る。
「ギュネイ准尉は誰だか分かったのか!?」
「…多分…。でも…、ええ!!本当か!?」
やっぱり納得できずに、思わず叫ぶ。
カウンターで騒ぐ二人に、何処からか聞きつけたジュドーが乱入し、一晩中飲み明かす事となった。

その頃病室では、熱の上がってしまったアムロをシャアがずっと付き添って看病していた。
不意に目を覚ましたアムロが、自分を心配気に見つめるシャアを見上げる。
「…シャア?」
「どうした?まだ眠っていていいぞ。ここに居るから…」
「…ん。今…夢を見てた…」
「夢?」
「うん。私はシャイアンにいて…同じように熱を出して寝てたんだ…。一人で寂しくて…不安で…涙が溢れた。でも、不意に温もりを感じて目を開けたんだ。そうしたら、目の前に貴方がいた…」
「嬉しかった」と、涙を浮かべながら微笑むアムロに、胸が締め付けられる。
「ああ、側にいるから…ゆっくり休むんだ」
「…うん…。ありがとう…」
それだけ言うと、アムロは再び眠りに落ちていき、安らかな寝息をたて始める。
そんなアムロの手を、シャアが優しく握り締める。
自身の手の中に収まってしまう、この小さな手は、ひとたびMSに乗れば自在にMSを操り、無敵を誇る。そして、自身の危険も顧みず爆弾の解除までやってのける。
まるで魔法の手だ。
しかし、そんな手を持つ彼女が、ふと見せる弱さ…。
それを…誰でも無く、自分が守りたい。
瞼の端に溜まった涙をそっとキスで拭うと、そのまま小さな唇に自身の唇を重ねる。
彼女の、安らかな眠りを願いながら…。


end


【おまけ】
数日後、ナナイ大尉とレズン少尉がアムロの見舞いに訪れた。
その日はアムロの熱も下がり、体調も良かったので、ベッドから起き上がり、三人で病室内の談話室でお茶をする事にした。
「アムロ、あんたテロ騒ぎの後、更に爆弾の解体処理までしたんだって?ホント、あんたってネタが尽きないね!」
笑いながら話すレズンに、ナナイが大きな溜め息を吐く。
「笑い事じゃないわよ!あの後大佐が中々アムロ大尉から離れてくれなくて大変だったのよ!ただでさえテロ事件の事後処理が山積みなのに!」
「あああ、あの。ナナイ大尉、ごめんなさい!」
思わず謝るアムロに、ナナイが小さく溜め息を吐く。
「貴女が悪い訳ではないでしょう?寧ろ貴女には感謝しなければ。貴女のお陰で誰も怪我することなく無事に終わったのだから」
「でも…シャアに心配掛けた所為であの人、更に過保護になって…」
「そういやギュネイの奴、アムロの護衛から外されたんだって?もしかして、とうとう手でも出されたのか?」
レズンの言葉に、アムロが首を傾げる。
「手を出す?」
「だって爆弾事件の時、一緒に居たんだろう?ああ言う生死を分けた瞬間ってさ、本音が出ちまうもんだろ?」
「はぁ…?」
アムロはその時の事を思い返してみる。
作品名:Lovin 'you after CCA 10 作家名:koyuho