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鳥籠の子供達3 ~third & fourth~

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鳥籠の子供達3 ~third& fourth~


〜third〜
セカンドが息を引き取ってひと月が経った。
オーガスタ研究所を出て、スウィート・ウォーターに来てから五年目の事だった。
始めの検診の結果では、余命一年との診断だったが、本人の頑張りと様々な治療が功を奏し、五年も一緒に過ごす事が出来た。
いつも優しく、俺やフォースを守ってくれたセカンド。最期まで、俺たちの幸せを願ってくれた。
サードは安らかな表情で眠るセカンドを見つめ、ガラス越しにキスをする。
「セカンド、今までありがとう。愛してるよ。」

セカンドと始めて会った時、セカンドの隣には双子の様なファーストがいた。
二人は本当に仲が良くて、二人の間に入るのに気後れする程だった。
そんな俺を、二人はとても大切にしてくれた。
当時、俺たちの年齢差は二歳位だったが、二人はオリジナルの年齢に近づけるべく、何度も成長促進処置を受けさせられ、気付くとセカンドとの年齢差は八歳になっていた。
俺はその処置を受けることなく、自然に成長した。
後に、ファーストとセカンドが研究員と交渉してくれたお陰で、俺とフォースはその処置を受けずに済んだ事を知った。

「また、ここに来ていたのか?」
セカンドのカプセルの横に座り込むサードへと、シャアが声を掛ける。
「シャア総帥…」
サードはゆっくりと立ち上がり、シャアへと向き直る。
「すみません…」
「謝る事はない、いつでも会いに来ればいい」
「…ありがとうございます」
シャアはセカンドのカプセルへと歩み寄り、中を見つめる。
「彼は優しい男だったな。」
「はい」
「彼から優しさを貰った君も優しい」
「え?あ…そんな事…」
シャアが優しくサードに微笑む。
そして、隣に置いてある“ゼロ”のカプセルへと手を触れて、そっと中を覗き込む。
静かに眠る“ゼロ”、否、アムロ・レイの顔を見つめ、少し悲しそうな瞳をする。
「彼を…もっと早く見つけていたら…。あの時、彼と剣を交えた時、無理矢理にでも連邦から連れ去っていればと…後悔している…」
「シャア総帥…?」
彼はニュータイプのあり様を見せ過ぎた。
分かっていたのに、連邦に戻れば研究者達の餌食になると分かっていたのに…。
「今更言っても仕方ないな。」
「シャア総帥…」
サードもアムロのカプセルを覗き込む。
ファーストやセカンドとは違い、サードはアムロとの接触が無かった。だから正直、“アムロ”を見てもファーストやシャア程の想いは込み上げて来ない。
ただ、この人が自分たちのオリジナルなんだと思うだけだ。
「僕たちは、この人のクローンなんですよね。」
“アムロ”はどんな人物だったのだろう?どんな人生を送り、どんな思いで生きて来たんだろう。そして、最期に何を思って死んだのだろう…。
彼のクローンである自分にも、それは知り得ることは出来ない。
アムロ・レイの記憶を移植されたファーストには分かるのかもしれないが…。
じっとアムロを見つめるサードの肩を、シャアがポンっと叩く。
「君は君だ」
シャアの言葉に、サードは一瞬驚き、そして頷く。
「そうですよね…。僕は…僕…」
自身に言い聞かせる様に言葉にする。
「そうだ、君は君の人生を歩みたまえ、セカンドがそう望んだ様に…」
優しく微笑むシャアに、サードも笑顔を返す。
「シャア総帥…。僕たちを迎えに来てくれてありがとうございました。あの時、貴方が来てくれなかったら、ファーストにも再会出来なかったし、セカンドもあんなに安らかに眠りにつけなかった。本当に感謝しています」
サードが深々と頭を下げる。
「私も、君たちに会えて良かったと思っている。何か困ったことがあればいつでも言いなさい」
「はい、ありがとうございます」
サードはシャアを見上げて微笑む。
ファーストが愛するこの人に、言葉に出来ない想いが込み上げる。しかし、この想いは自分の物のようでそうでは無いと思う。もしかしたら、コレは“ゼロ”の想いだろうか…。
少し、“ゼロ”の心に触れた様な気がして“ゼロ”のカプセルへと視線を向ける。
『やっぱり、僕の中にも“ゼロ”が生きているのかもしれないな…』

「ああ、そうだ。サード、アムロが呼んでいたぞ。」
「え、ファーストが?」
「MSの整備の事で相談があるそうだ」
「あ、はい。分かりました」
サードはシャアへと一礼し、ファーストの元へと駆けて行った。



〜fourth〜
その後ろ姿を見送った後、小さな溜め息をつくと、シャアが部屋の片隅に向かって声を掛ける。
「出てきたらどうだ?」
すると、そこから十歳くらいの少年が現れた。
「バレてたんだ」
「まぁな」
シャアに近付き歩いてくる姿は、先程までいたサードに良く似た、アムロ・レイの四番目のクローン、〈フォース〉だった。
フォースはシャアの元まで来ると、側にある“ゼロ”のカプセルを覗き込む。
その、何とも言えない表情に、シャアがそっとフォースの頭を撫ぜる。
「自分の遺体を見る心境はどうだ?」
シャアの問いに、フォースが一瞬目を見開いて驚く、しかし直ぐに不敵な笑みを浮かべてシャアを見つめ返す。
「いつ気付いた?」
「君たちがスウィート・ウォーターに来て直ぐくらいかな。しかし、流石に確信が持て無くて、しばらく様子を見ていた。」
「そっか」
フォースは視線を“ゼロ”の遺体に戻し、自嘲気味に笑う。
「正直なところ、俺自身も本当にアムロ・レイなのか分からないんだ。もしかしたら、ファーストみたいにアムロ・レイの記憶を移植されただけのクローンかもしれない。」
フォースはシャアに向き直ると、戯ける様に両手を上げる。
「ただ、ファーストと違ってフォースとしての自我が生まれる前に移植された為に、アムロの記憶が完全な形で移植されたのかもってね」
「……」
シャアは何も言い返すことが出来なかった。
なぜならば、オーガスタ研究所の研究データを解析したが、フォースにアムロ・レイの記憶を移植したという記録は残っていなかったからだ。
「多分、貴方も調べたと思うけど、その事実がないか研究所のデータをハッキングしてみたんだ。けど、それらしい記録は残ってなかった。でも、だからと言ってありえない話じゃ無いだろう?」
そう、シャアとしても記録と事実に相違がある可能性を示唆しており、断定出来なかった。
「ただ…、おかしいと思ったのはさ…。アムロの…死の瞬間までも記憶があるって事なんだ」
フォースは両手を身体の前でクロスさせて自身を抱きしめる様に抱え込む。
「オリジナルに成り代わらせようと思ったら、死んだ瞬間の記憶なんてあったらマズイだろ?」
少し震えながらシャアを見上げる。
「心臓がうまく動かなくなって…身体が痙攣し始めたと思ったら…呼吸が出来なくなった。苦しくて苦しくて、でも…声も出なくて…怖かった…そして、徐々に身体が動かなくなってきて…心臓が止まるのを感じた。なんだか妙に辺りが静かになって、ああ、死ぬんだって思ったんだ」
語るフォースの瞳から涙が零れる。
カタカタと身体を震わせて、立っていられずフラリと崩れ落ちる。
「フォース!」
シャアは咄嗟にフォースを受け止めると、その腕に抱き締めた。
「大丈夫か?」
「ごめ…、ありがとう…」