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残された心

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どれだけ歩き回ったのだろう、、、、。

私達の懐かしい思い出の地や、まだ行ったこともない見知らぬ土地。
蘇蘇の魂を探して、歩き続けた。

あの日蓬莱で、小恭との闘いの後、消えてしまった蘇蘇の身体。
でも、散り散りになった魂は、きっとどこかで私を待っている。
蘇蘇も「待っている」、そう言っていたわ。

幽都の者は寿命が長い。
私は必ず蘇蘇の魂を見つけられると、確信を持っていた。
普通の人間よりも、遥かに長く探し続けられるもの。
蘇蘇の魂が、どんなに小さくとも、私は必ず見つけられるし、きっと蘇蘇だって私が近づけばわかる筈。

必ず、必ず、見つけてみせる、そう思って歩き続けた。

国中をくまなく探し続け、歩き続け、、、、。
地図にも無い、果ての地まで来てしまった。
蘇蘇との再会を心に思い描いて、その再会の一瞬をバネにして、歩き続けた。

でも、、、
、、、、、、いない、、、。

いないのよ、どこにも、、、。
きっと、もっと簡単に見つかると思っていたし、信じていた。
砕けて散った、蘇蘇の心のひと欠片すら見つからない。
何処にいるの、、、、。

「蘇蘇、、、。」
声に出しても答えてはくれず、寒々とした荒野に、誰の気配も無い、、。

これまで、蘇蘇を探して訪れた土地で、暮らしに困った人や、病の人々を助けながら旅を続けた。
きっと傍に蘇蘇がいたら、二人でこうしてる。
きっと蘇蘇ならば、この人にはこうする、そう考えて助け続けた。

人のいない荒野でも、蘇蘇がこの光景を見たらどう感じるのかしらと、蘇蘇の心の中を想像して歩き続けた。

蘇蘇、、、、。
見渡す荒野には、蘇蘇の魂どころか、妖獣の気配すら感じない。
地図にも無い、、、果ての地、、、。

今まで回った土地で、どこか見落とした所があったのかしら、、。
それとも、蘇蘇の魂は私にイタズラして隠れているの?。
、、違う、、、、そんな人では無い。

私の心のどこかが、疲れてしまったのだろうか。
もう、見つからないと絶望する私がいる。
考えなかった訳ではなかった。
蘇蘇に会いたい心が、絶望を砕いて、歩き続けてきたわ。
でももう、会いたい心が、、、無理だと、、、。
疲れてしまったのだろうか。

岩山の中程の、洞窟の中に入り、火を興して腰をおろす。
今日もまた、日が沈んだ。
今夜はここで休もう、、、。
何か食べて飲まなくては、、。

、、、、なんだか、とても、、疲れてしまって、、。
蘇蘇、、。
蘇蘇がどこかで待っていたら、諦めるなって私を叱ってくれる??。
、、叱って欲しい、今すぐここで、、、、、。
「蘇蘇、、、。」

何ももう、出来ない、、。
今夜一晩、休めば、、、きっとまた歩き出せる、、。
今までもこんな事は何度かあった。
きっと、明日からまた、、、、きっと、、、。

でも、、一晩眠っても、疲れは取れず、身体は昨日よりも重くなっている。
かつて何度か経験したけれど、こんなに酷いのは初めて、、。
内力が小さくなってゆき、身体に力が入らない、、、。
病気だろうか、、、。
何の病か、、自分で脈を診ても分からない、、。
一人きりの旅路、ずっと注意はしてきたのに、、、こんなに酷くなるなんて、、。
心細い、、、、蘇蘇、、、、助けて。
涙が止まらなかった、、、。

まだ、法力の使えるうちに、、、、そう思って、霊蝶を飛ばす。
飛ばせたのはたった一匹だけの蝶。
どうか誰にも、消されませんように、、、。

お願い、兄さんを呼んできて、、、。

幽都の広伯兄さんを、、、。

このまま、死んでしまうのかしら、、、私か死ねば、蘇蘇を見つけることは出来なくなる。
死ねないわ、、、、、旅を終われない、蘇蘇を見つけるまでは、、。
夢の中へ落ちてゆく、、、、抵抗はしないわ、、。

夢の中ならば、蘇蘇に会えるかしら、、。


✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼


「晴雪!!晴雪!!。」
兄さんの声で揺り起こされる。
気が付くと、兄さんの腕の中にいたわ。
兄さんの驚いた顔が目に飛び込んだ。
涙か溢れる、、、、兄さんの胸の中で思い切り泣いた。
旅を止められないと思う反面、とても、、、とても辛くて、、。
だって、どんなに探しても、どこにも蘇蘇がいないんですもの。
弱い自分が許せなくて、諦めようとしている自分が許せなくて!。
兄さんは私を抱きしめて、子供にするように、私の背中をさすってくれた。
兄さんには、お見通しなのかも知れないわ。
何も言わずに、私が泣き止むまでそうしてくれた。

幾日、眠ったのだろう、、、霊蝶を飛ばしてからの記憶がないわ。
私はずっと眠っていたのかしら。
身体は相変わらずだわ。
飛ばした霊蝶は、幾日かかって幽都に辿り着いたのか。
でも、兄さんは、幽都から飛んで来てくれたはず。
「晴雪、身体が冷えきってる。一体どれだけここに居たんだ!。」
焚き火はとっくに消えていたわ。
北の地は、暖かい季節とはいえないわ。
よく、死なずにここで眠れたものね。
兄さんは私に霊力を注いでくれた。身体が温まっていくのが分かったわ。
そして、私の脈診をしてくれた。
すごく驚いていたわ、私はそんなに無理をしていたのかしら、、。
兄さんが驚く程、具合が悪いのかしら。
「晴雪、、どう言って良いのか、、。」
兄さんは聞く。
「、、、、屠蘇を見つけたんだね。」
「、、、、、。」
何も答えられなかった。
声を出そうとすると、また涙が溢れる、、、。
私は首を横に振るのが精一杯だった。
「居なかったのかい?」
もう何も答えられなかった。
兄さんの顔が見られない、、、ずっと下を向いていた。

しばらくの沈黙の後、兄さんが話し始める。
「晴雪、私にはここで感じるんだよ、、屠蘇の波動を。」
「えっ、、、。」
驚いて兄さんの顔を見た。冗談や嘘を言っている顔では無いわ。
「霊とか魂、、と、いうものでは無い、、屠蘇の心、、、というか、、屠蘇の波動なんだ。
晴雪を護ろうとする、屠蘇の波動なんだよ。」
兄さんは暫く考え込み、何かを理解した様だったわ。
穏やかに兄さんは話してくれる。
「晴雪、君と蓬莱で別れた時には、この波動は無かったんよ。
私にも、はっきりとは分からないのだが、あの日、屠蘇の身体は散り散りに散ってしまったのだろう?。」
「そう、、、まるで焦冥が光を浴びたように、、蘇蘇は龍の慳臾の背中に横たわったまま、上空で散ってしまったわ。」
私の記憶が、身体を震わせる。
「、、、蘇蘇、、、。」
また、一条零れる。
「晴雪、私の想像なのだが、屠蘇の心は感じ取れるような大きさでは、無かったのかも知れないよ。
屠蘇の身体が、古剣の太子長琴の仙霊と共に散り散りに散ってしまった、、、もしかすると、屠蘇の魂は更に、粉砕されて散ってしまったのかも知れない。
それは余りに小さくて、霊魂や記憶などという形では無かったのかも知れないよ。」
兄さんの言ってる事が、よく分からない、、、。
だからどこを探しても、蘇蘇はいなかったの?。
「君は世界中を歩き回って、気付かずにこの小さな屠蘇の心を、集めていたのかも知れないよ。
君が集めた記憶がないのなら、蘇蘇の小さな波動が君の回りに集まって君を護っていたのかも知れない。
そうでなければ、、、、
作品名:残された心 作家名:古槍ノ標