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第二部27(100) エピローグ3

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「アレクセイ、随分盛り上がってたみたいだね。ダーヴィトと…」

その日の晩―。

ベッドの縁に腰かけたアレクセイの前に立ったユリウスに、そんな彼女の白い両手をギュッと握りしめる。

「まあな。…何てったって15年分の積もる話だからな。…ハハ、お前を仲間外れにしちゃってごめんな。でも、お前もお姉さんと、15年分の積もる話があっただろう?」

「うん・・・・。初めて…姉妹として…女同士の色々な…子供の事とか…それから夫の事とか話が盛り上がって…とても楽しかった。…本当に幸せなひと時だった」

「ん?なんだ~?俺たちの噂をしてたのかあ?こいつ~!」

そう言ってアレクセイはユリウスの両手を引っ張って抱き寄せ、彼女を自分の膝の上に座らせた。
ユリウスのしなやかな両腕がアレクセイの首に回る。

「なあ、ユリウス。…おまえ、故郷に…レーゲンスブルグに帰りたいか?」

真顔でそう聞いたアレクセイの、亜麻色の髪に指を入れ、ゆっくりと梳きながらユリウスは暫し、考えるような表情を見せた後に、ゆっくりと首を横に振った。

「ううん。あなたの傍にいられるならば…、ぼくは故郷なんて…いらないよ。例え地の果てでも、あなたさえいれば、そこがぼくの居場所だよ。ねえ、アレクセイ。…ずっと傍に、いてね。ぼくの手を、離さないでね」
そう言ってユリウスはアレクセイの頭に頬を寄せた。

ユリウスの眩い金の髪が、光のヴェールのようにアレクセイを包み込む。

こうして言葉もなくただお互いの温もりを感じ合っていた穏やかな沈黙をアレクセイがおもむろに破る。


「それよりお前、俺に何か隠し事をしてないか?」

「な、何のこと?」
アレクセイの唐突の質問に、ユリウスは戸惑いながらその答えをはぐらかし、固唾をのんでアレクセイの次の言葉を待つ。

そんな真顔で自分を見つめているユリウスに、

「お前、ダーヴィトの野郎に、この可愛い唇を許したんだってなぁ?!…俺というものがありながら〜〜!」

とアレクセイは、妻の頬を親指と人差し指で三度ほどフニフニフニとつまんでみせた。

「え?えー?!…じ、時効だよ」

頬を指をつままれながら、弁解するユリウスに、

「んなもんに時効なんかあるか!来い!…続きはベッドでお仕置きしてやる。15年分…な」

と彼女の腕を掴んでヒョイと抱き上げると、ベッドにポーンと放り、その上に馬乗りになった。
金の扇のようにベッドに広がったユリウスの豊かな長い髪を右手で梳きながら、左手で彼女の顎を引き上げて耳元で囁く。

「俺以外の男に、泣き顔なんか見せるな。ばかたれ」

アレクセイの吐息を耳元で感じながら、彼の体温と身体の重みを全身で感じながら、ユリウスの息遣いもまた徐々に高まって来る。

「愛してる…アレクセイ。ずっと傍にいてね。お願い…」

吐息交じりにそう囁いたユリウスの碧の瞳が潤み、二人の唇が合わさった。