こらぼでほすと 秋刀魚4
「それは、どこからのリークですか? キラ様。」
「キサカさんから。当人は、まだオーヴだから、こっちで、対処して欲しいって。」
「ああ、なるほど。」
「そういや、キサカに出禁を食らわせたんだろ? 懲りただろうから解除してやってくれないか? あれは、これから先のことを考えての勇み足というものだ。」
「・・・・まあ、そのうちにな。ほとぼりが冷めたら、勝手にやってくるだろうさ。」
「そうだ、シンとレイは? 」
「今日はバックヤードだから、来ないぞ。というか、おまえたちとは、ほぼ面識はないはずだが?」
「いや、せっかくだからトダカの日常の暴露なんてしてもらうと楽しいかと思ったんだ。」
「私は、トダカの考えに賛成だ。キラ様の抑止力として、シンとレイはザフトに在籍してくれたほうがいいと思う。確かにカガリ様の補佐にも相応しいが、私はキラ様のほうが気になる。」
「わぁーひどいなー。僕が、おかしくなってギルさんみたく壊れる前提で考えてるの? 」
「まあ、我々は、その場面に対処はできません。たぶん、引退しているでしょう。ですから、対処するための布石はさせていただきます。」
「わかってる。誰が、どうなるかなんてわからない。僕じゃなくてラクスやアスランが歪む場合もあるだろうしね。こればかりは、わからないもんなあ。」
今までのことでもわかるように誰もが最初は優秀な執政者だった。だが、どこからか歪んで大戦が興ることになった。だから、キラがまともでいられるかどうかなんて、誰にもわからないし、ラクスやカガリだって理想を追求しすぎて、世界の望まない方向に進んでしまう場合もある。布石は、そのためにある。それについては、キラたちも納得しているから止めない。
「とりあえずは、ただいまの連邦が、どの程度、歪まずに維持されるか静観することとなります。」
「うん、そのつもり。まあ、あまり長くは保たない気がするけど。」
「承知しております。こちらも、それについては対処するつもりで動いておりますので。」
「カガリが暴走しないように止めておいてね? みんな。いきなりキレたら危ないったらないんだからさ。」
「ははははは・・・・もちろんです。カガリ様も、そこいらは自重してくださってます。」
今回の連邦にはオーヴは参加していない。どう考えても三大大国だけに有利な連邦で、小国には利がないからだ。参加したところで、勝手に技術提供という名目で技術だけを盗まれる。そんなものには参加できない。ただし、経済的には繋がる部分は残るので、参加国ではないオーヴも国際会議なんかには出てくることになる。余計な条件を付け足されてはたまらないから、トップクラスが顔を出しているのだ。実務レベル会議の話は、ハイネとキラがじじいたちと情報交換する。これも本日の予定のひとつだ。
しばらく難しい話をしていたが、新しい料理と共に、八戒に手を引かれたニールが戻ってきた。今度は漢服の女装だ。緑のベストに銀の刺繍がされたもので下は薄い若草色の衣装、この衣装の裾にも細かい刺繍が施されている。下にはパンツをはいていて、もちろん髪飾りやネックレスなんかも変わっている。そちらが現れたら、キラと悟空、ハイネが消える。
「おお、今度のも可愛いなあ、トダカの娘さん。」
「ありがとうございます。砂漠料理は、いかがですか? かなり変わっていると思うんですが。」
「ああ、あまり目にしないものだから珍しくていい。」
「トダカの娘さん、座る前に、ちょっとくるりとやってくれないか? 」
衣装の見物も、今回の楽しみの一つだ。はいはい、と、ニールが広いところでくるりと回って、お辞儀する。ベストの背後には、大きく白い鳥が刺繍されている。ほおう、と、ウヅミーズラブの面々は、その衣装の綺麗さに感心する。これも舞台衣装などではなくて本格的なものだ。
「これ、本物じゃないのか? 」
「もちろん、本物だ。今回は、きみらの目が肥えているから、きちんとしたものを用意してもらったんだ。満州服より、漢服のほうが優雅だ。」
「確かに。いい色合いだ。・・・・そちらの人のもすごいな。」
八戒のほうはニールより濃い色の深緑の衣装で、こちらは幾何学模様の刺繍がされている。ニールが目立つように色は抑えたものだ。
「はい、ありがとうございます。トダカさんから、漢服も本物で、ということでしたので、僕が選ばせていただきました。」
何着か用意して、トダカに選んでもらった。ニールの意見は必要ではない。トダカが気に入るというところがポイントだった。
「こういう衣装に造詣があるのかな? えーっと、きみは・・・」
「八戒と申します。僕は、こういう衣装の地域の出身ですので。」
「ああ、それで着こなしがいいんだな。」
普段からチャイナ服で仕事をしている八戒にとっては、いつもの仕事着だから、裾さばきも慣れたものだ。いつもよりは豪華だが、着慣れた衣装ではある。
「もし、肩こりや腰痛の方がいらっしゃいましたら、施術はできますので、ご遠慮なく、申し付けてください。」
「そういうのもあるの? 」
「はい、僕は、そちらの仕事がメインです。」
まあ、普段から肩こりやら眼精疲労やらにさらされているじじいたちなので、それなら順番に頼みたい、ということになる。では、奥のカウチで順番に、という流れになった。施術用のカウチも奥にセッティングしてある。普段なら施術用の部屋でやるが、ショートコースなら、ここでもできる。端に座っているのから、ひとりずつ、八戒が施術することにした。残りは、そのままフリートーク大会だ。
「ここの店は、こういうサービスもあるのか。」
「ああ、うちは、お客様に心地よくなっていただいて、お帰りいただきたいのでね。八戒さんの施術は人気だよ。」
「いいなあ、オーヴにも店を出してほしい。」
「それは無理だなあ。オーナーが許さないだろうさ。」
「ニールくんも施術とかできるのかい? 」
「いえ、俺はできないので肩叩きぐらいです。やりましょうか? 」
「ダメダメ、娘さん。そんなに甘やかしたら、こいつらは図に乗る。」
「乗らせろ。たまのことだ。」
「じゃあ、食事が終わったら叩きましょうか。・・・・まだコースの半分くらいなので。」
「いいなあ。じゃあ、酒で身体を柔らかくしておくとするか。」
「ニールくんも食べないか? 」
「ええ、じゃあ、失礼します。」
適当に料理は運ばれてくるので、それらを取り分けて用意する。さほど食事に興味はないが、まあ、お愛想程度に、ニールのほうも箸をつける。ハイネが戻って来て、今度は悟浄が消える。順番にホストも衣装を変えていく。ハイネも女物だが、割と地味なものだ。悟浄の代わりは紅が務めている。こちらは私服だが、自分の民族衣装なのでハイネたちと遜色はない。本物の王子様なので、本気で本物の衣装だからだ。
「娘さん、お座り。配膳係が揃ったから。私にも酌を頼むよ? 」
「ああ、すいません。どうぞ、お父さん。」
大きなガラスの器に酒を注ぐとトダカは口にする。そして、となりのニールを眺めて嬉しそうに笑う。とても楽しい。
「うん、いいねぇ。娘さんに酌をしてもらって飲むのは愉しい。」
「いや、お父さんは接待側ですが? 」
「キサカさんから。当人は、まだオーヴだから、こっちで、対処して欲しいって。」
「ああ、なるほど。」
「そういや、キサカに出禁を食らわせたんだろ? 懲りただろうから解除してやってくれないか? あれは、これから先のことを考えての勇み足というものだ。」
「・・・・まあ、そのうちにな。ほとぼりが冷めたら、勝手にやってくるだろうさ。」
「そうだ、シンとレイは? 」
「今日はバックヤードだから、来ないぞ。というか、おまえたちとは、ほぼ面識はないはずだが?」
「いや、せっかくだからトダカの日常の暴露なんてしてもらうと楽しいかと思ったんだ。」
「私は、トダカの考えに賛成だ。キラ様の抑止力として、シンとレイはザフトに在籍してくれたほうがいいと思う。確かにカガリ様の補佐にも相応しいが、私はキラ様のほうが気になる。」
「わぁーひどいなー。僕が、おかしくなってギルさんみたく壊れる前提で考えてるの? 」
「まあ、我々は、その場面に対処はできません。たぶん、引退しているでしょう。ですから、対処するための布石はさせていただきます。」
「わかってる。誰が、どうなるかなんてわからない。僕じゃなくてラクスやアスランが歪む場合もあるだろうしね。こればかりは、わからないもんなあ。」
今までのことでもわかるように誰もが最初は優秀な執政者だった。だが、どこからか歪んで大戦が興ることになった。だから、キラがまともでいられるかどうかなんて、誰にもわからないし、ラクスやカガリだって理想を追求しすぎて、世界の望まない方向に進んでしまう場合もある。布石は、そのためにある。それについては、キラたちも納得しているから止めない。
「とりあえずは、ただいまの連邦が、どの程度、歪まずに維持されるか静観することとなります。」
「うん、そのつもり。まあ、あまり長くは保たない気がするけど。」
「承知しております。こちらも、それについては対処するつもりで動いておりますので。」
「カガリが暴走しないように止めておいてね? みんな。いきなりキレたら危ないったらないんだからさ。」
「ははははは・・・・もちろんです。カガリ様も、そこいらは自重してくださってます。」
今回の連邦にはオーヴは参加していない。どう考えても三大大国だけに有利な連邦で、小国には利がないからだ。参加したところで、勝手に技術提供という名目で技術だけを盗まれる。そんなものには参加できない。ただし、経済的には繋がる部分は残るので、参加国ではないオーヴも国際会議なんかには出てくることになる。余計な条件を付け足されてはたまらないから、トップクラスが顔を出しているのだ。実務レベル会議の話は、ハイネとキラがじじいたちと情報交換する。これも本日の予定のひとつだ。
しばらく難しい話をしていたが、新しい料理と共に、八戒に手を引かれたニールが戻ってきた。今度は漢服の女装だ。緑のベストに銀の刺繍がされたもので下は薄い若草色の衣装、この衣装の裾にも細かい刺繍が施されている。下にはパンツをはいていて、もちろん髪飾りやネックレスなんかも変わっている。そちらが現れたら、キラと悟空、ハイネが消える。
「おお、今度のも可愛いなあ、トダカの娘さん。」
「ありがとうございます。砂漠料理は、いかがですか? かなり変わっていると思うんですが。」
「ああ、あまり目にしないものだから珍しくていい。」
「トダカの娘さん、座る前に、ちょっとくるりとやってくれないか? 」
衣装の見物も、今回の楽しみの一つだ。はいはい、と、ニールが広いところでくるりと回って、お辞儀する。ベストの背後には、大きく白い鳥が刺繍されている。ほおう、と、ウヅミーズラブの面々は、その衣装の綺麗さに感心する。これも舞台衣装などではなくて本格的なものだ。
「これ、本物じゃないのか? 」
「もちろん、本物だ。今回は、きみらの目が肥えているから、きちんとしたものを用意してもらったんだ。満州服より、漢服のほうが優雅だ。」
「確かに。いい色合いだ。・・・・そちらの人のもすごいな。」
八戒のほうはニールより濃い色の深緑の衣装で、こちらは幾何学模様の刺繍がされている。ニールが目立つように色は抑えたものだ。
「はい、ありがとうございます。トダカさんから、漢服も本物で、ということでしたので、僕が選ばせていただきました。」
何着か用意して、トダカに選んでもらった。ニールの意見は必要ではない。トダカが気に入るというところがポイントだった。
「こういう衣装に造詣があるのかな? えーっと、きみは・・・」
「八戒と申します。僕は、こういう衣装の地域の出身ですので。」
「ああ、それで着こなしがいいんだな。」
普段からチャイナ服で仕事をしている八戒にとっては、いつもの仕事着だから、裾さばきも慣れたものだ。いつもよりは豪華だが、着慣れた衣装ではある。
「もし、肩こりや腰痛の方がいらっしゃいましたら、施術はできますので、ご遠慮なく、申し付けてください。」
「そういうのもあるの? 」
「はい、僕は、そちらの仕事がメインです。」
まあ、普段から肩こりやら眼精疲労やらにさらされているじじいたちなので、それなら順番に頼みたい、ということになる。では、奥のカウチで順番に、という流れになった。施術用のカウチも奥にセッティングしてある。普段なら施術用の部屋でやるが、ショートコースなら、ここでもできる。端に座っているのから、ひとりずつ、八戒が施術することにした。残りは、そのままフリートーク大会だ。
「ここの店は、こういうサービスもあるのか。」
「ああ、うちは、お客様に心地よくなっていただいて、お帰りいただきたいのでね。八戒さんの施術は人気だよ。」
「いいなあ、オーヴにも店を出してほしい。」
「それは無理だなあ。オーナーが許さないだろうさ。」
「ニールくんも施術とかできるのかい? 」
「いえ、俺はできないので肩叩きぐらいです。やりましょうか? 」
「ダメダメ、娘さん。そんなに甘やかしたら、こいつらは図に乗る。」
「乗らせろ。たまのことだ。」
「じゃあ、食事が終わったら叩きましょうか。・・・・まだコースの半分くらいなので。」
「いいなあ。じゃあ、酒で身体を柔らかくしておくとするか。」
「ニールくんも食べないか? 」
「ええ、じゃあ、失礼します。」
適当に料理は運ばれてくるので、それらを取り分けて用意する。さほど食事に興味はないが、まあ、お愛想程度に、ニールのほうも箸をつける。ハイネが戻って来て、今度は悟浄が消える。順番にホストも衣装を変えていく。ハイネも女物だが、割と地味なものだ。悟浄の代わりは紅が務めている。こちらは私服だが、自分の民族衣装なのでハイネたちと遜色はない。本物の王子様なので、本気で本物の衣装だからだ。
「娘さん、お座り。配膳係が揃ったから。私にも酌を頼むよ? 」
「ああ、すいません。どうぞ、お父さん。」
大きなガラスの器に酒を注ぐとトダカは口にする。そして、となりのニールを眺めて嬉しそうに笑う。とても楽しい。
「うん、いいねぇ。娘さんに酌をしてもらって飲むのは愉しい。」
「いや、お父さんは接待側ですが? 」
作品名:こらぼでほすと 秋刀魚4 作家名:篠義