こらぼでほすと 秋刀魚4
「いいんだよ。私は、こいつらに、きみを見せびらかして楽しみたいんだからさ。ははははは。どうだい? いいだろ? うちの娘さん。」
「はいはい、ご満悦ご満悦。」
「おまえ、ぬけぬけと、よく言うな、トダカ。」
「私たちを山車にして楽しんでるよ、この男は。」
トダカが楽しそうなので、他の面々も微笑む。ヤモメのトダカが家族ができて楽しんでいるのが、よくわかる光景だ。みなさんも、どうぞ、と、ニールが酌をしてくれるので、こちらも酒が進む。
「チェイサーも用意しましょうか? 」
「いいや、これぐらいでは酔わないから大丈夫だ。ニールくんは、お茶だな。えーっと、お茶のボトルをくれないか? 」
ハイネが、そこにウーロン茶のボトルを配達する。ささっ、まあ一献とか逆に酌をしていたりする。ウヅミーズラブの面々にしても、単なる飲み会のノリだから接待というほどのことはない。
「トダカが、なかなか里帰りしてくれないと愚痴ってたが、本当なのかい? 」
「うーん、結構、帰ってるつもりなんだけど・・・・月一くらいは少ないですか? 」
「少ないんじゃないか。近所に住んでるんだから、二週に一度ぐらいは帰ってやれば? 」
「二週に一度か・・・そんなに泊まると三蔵さんがなあ。」
「ああ、ご亭主か。ご亭主も連れて帰るとか? 」
「いえ、毎日、お勤めがあるし、家が好きみたいで。」
「お勤め? なんの仕事なんだい? 」
「僧侶です。朝と夕方に本堂でお経をあげてるんですよ。」
と、ニールが普通に答えたら、八戒とハイネと紅が吹き出した。確かに僧侶なのだが、普通の僧侶ではないので顔を思い出したら吹き出したらしい。
「こらこら、三人とも。実際、三蔵さんは僧侶なんだから吹き出さない。」
「いえ・・・はい・・・そう・・なんですが・・・くくくくくく。」
「確かに・・・僧侶・・・・ぐっ・・・ぐぐぐぐぐぐぐ。」
「あの人、僧侶ってよりは裏社会の人しか見えないでしょ? トダカさん。」
「まあ、見た目は、そうだけど、きちんと仕事はしてるじゃないか。」
「技術は一級品なのは認める。だが、三蔵は・・・・あはははははは。」
「紅、そんなに笑わなくてもいいだろ? 三蔵さん、仕事は真面目だぞ? うちの子たちにも優しいし。俺なんかの相手ができるんだから、すごい人だぞ。」
「いや、俺はニールのほうが称賛に値する。あの三蔵の相手ができるのは、滅多なことじゃない。」
「僕も紅くんに賛成ですね、ニール。三蔵の好みの食事を三食、用意して、とうとう着付けまでニールにさせて、ニールが居ないと拗ねる厄介な坊主です。放置しても死なないんだから二週に一度と言わず、毎週、里帰りしたらいいんですよ。」
「そんなことしたらトダカさんとこへ殴り込むぜ? 八戒さん。ママにゃんいないと機嫌がフル下降して怖いんだからさ。」
「でも、悟空の食事のこともあるし・・・みんな、誤解してるって。そんなに難しい人じゃないってば。」
「難しい人ではないけどさ、娘さん。独占欲は激しいと、お父さんも思うよ? 」
「てか、トダカさん。ママにゃんは、ダメ人間製造機なんで、ああしたのはママにゃんだと俺は思うぜ? 元々は、自分で、なんでもやってたんだからさ。」
「きみもダメ人間になってるだろ? ハイネ。」
「そりゃもう、ママにゃんの世話を受けちまったら、誰だってダメ人間になると思う。トダカさんはダメ人間にならないので、俺は尊敬してますけど? 」
「お父さんは、俺に何にもさせてくれないでしょ? 里に帰ったら、食事を作ってくれたりするし。」
「娘さんは、何にもできなくてよろしい。お父さんがやってあげるから、里ではゴロゴロしてなさい。嫁ぎ先で、こき使われてるんだからさ。」
「使われてませんよ。三食昼寝付きのグータラ専業主夫です。俺が動きすぎたら叱られてるのに。」
「当たり前だ。きみがダウンしたら心配なのは、亭主だけじゃない。私たちも心配なんだからね。もっと、グータラしていればいいんだ。」
「というかさ、あの亭主が叱るぐらいに動いてるのが問題じゃないのか? まだ、昼寝したほうがいいんだぞ? 忘れてるだろ?」
「忘れてない。横にはなってる。」
「ちゃんと布団で寝ろ。畳でゴロゴロしてるだろ? 」
日々の暮らしを把握しているハイネにツッコミされると、ニールも言い返せない。最近は、昼寝と言っても居間で、少し横になるぐらいで十五分かそこらのことだ。痛いところを・・・と、ハイネを睨むが、相手はヘラヘラと笑っている。
「おまえがダウンすると店でも不発弾みたいに機嫌が悪くなるんだ。亭主が、そうならないように努めてくれ。」
「そうかなあ。」
「まあ、ニールは不発弾になった三蔵は目にしませんからねぇ。僕らは、おもしろいんですが年少組が怖がってますんで、なるべくダウンしない方向で、お願いします。」
「はあ。うーん、ここんところはダウンしてませんよ? 八戒さん。」
「そうですね。身体は回復してるみたいで、よかったです。」
スタッフたちの会話に、ウヅミーズラブのじじいたちは大笑いしている。本気でいちゃこらした夫夫であるらしい。
「それほどなのか? トダカ。」
「ああ、独占欲が激しくてさ。なかなか長期間は里帰りさせられないのさ。」
「ダメ人間製造機か・・・・それは、すごい奥さんだなあ。」
「そりゃもう、お客様。至れり尽くせりの世話をしてくれるので、何もしなくなること請け合いです。そして、ママにゃんの家庭料理で悩殺されてしまうと、抜け出せません。」
「でも、ニールくん、きみ、和食なんか用意できるのか? 」
「ええ、こちらに居着いてから、八戒さんから教えてもらいました。亭主が和食か中華しか食べない人なので。」
「基本は教えましたが、亭主の好きな味付けを取得したのはニールの努力です。」
「いや、大したことはやってないですよ。市販のペーストとかも使ってるし。俺自身も、すっかり和食のほうが口に合うようになりました。あっさりして食べやすい。」
「まあねぇ。長いこと、具合が悪かったから、そういう料理のほうが身体にはよかったんだろう。」
「それじゃあ、食事に誘うなら、そういうほうがいいのかな? 」
「は? 」
「しばらくは、こっちに滞在なんで時間があれば誘いたいなあ、と、私は思ってるんだ。トダカ抜きで。」
「うん、それはいいなあ。」
「おじさんたちも、脂っこいものは得手ではないから、そういうものなら付き合える。」
「時間があるなら、トダカさんとこへいらっしゃれば、どうですか? 適当でいいなら、用意しますよ? 」
「やだよ、娘さん。こんなムサイ男たちと食事なんて。」
「でも、人目のあるところは問題があるでしょ? トダカさん。SPが必要な方たちなんだろうし。」
オーヴの政治中枢の人間ばかりだ。さすがに、普通に食事に出かけるのは危険極まりない。それなら、トダカ家で、のんびりしたほうが安全だとニールが言うと、じじいたちは大きく頷いていたりする。
・・・・・うわぁーママにゃん、それってたらしてるってっっ・・・・
作品名:こらぼでほすと 秋刀魚4 作家名:篠義