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こらぼでほすと 秋刀魚6

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ハイネの説明を聞いてから居間に戻ると、ちゃかちゃかとニールが台所で動いていた。坊主は、そのままだ。
「あの、今日のお昼は木の葉丼か他人丼なんですが、どちらがいいですか? もし、他のものがよかったら準備しますけど。」
「木の葉丼とは、渋いものがあるなあ。」
「ニール君、他人丼は、牛? 豚? 」
「今日は牛です。あとはニンジンサラダとほうれん草とうすあげの味噌汁とおからです。」
「ママにゃん、漬物ある? 」
「あるよ。」
「私は木の葉丼だな。おまえたちは? 」
 トダカは、あっさりしたほうを選ぶ。それぞれが他人丼か木の葉丼かを選んで、メニューは確定だ。これは、みんなからだよ、と、トダカが果物の盛り合わせ篭を渡す、と、リジェネが、わーいと手にして分解を始める。寺では、滅多にお目にかかれないブツからリジェネは説明している。
「あ、マンゴー。これ、秋なのにあるんだね。ママ、これ、あとで食べたいっっ。メロンだぁ。きゃあーこれも好きっっ。ナシもいいなあ。」
「はいはい、冷蔵庫に入れてくれ。リジェネ、おからを運んでくれ。ハイネも頼む。」
 てきぱきと全員分の料理を運んでいるニールは、亭主に食事だ、と、仕事を片付けさせる。さすがに、この人数だと大きい卓袱台といっても書類を置いておく場所はない。
「飲みますか? 」
「いや、まず食う。あれはないのか? 」
「ナメタケ? メンマ? 福神漬け? 」
「メンマ。」
「ありますよ。トダカさんは? 」
「ビールくらいだな。おまえらは? 」
「おう、ビールは欲しい。」
「俺は茶でいい。」
 ビールの希望者を数えて、トダカが冷蔵庫から缶ビールを取り出す。他にも、あてになりそうなものも持ち出してくる。だいたい料理が揃うと、亭主が手を合わせて、「いただきます。」 と、挨拶するのに合わせて全員が合掌だ。
「おい。」
「ああ、すみません。」
 亭主が、声をかけるとマヨネーズが登場する。木の葉丼に、むにゅーと絞られるのに、一桁組は絶句した。
「トットダカ? 」
「ああ、うちの婿殿、味覚が素敵な人なんだ。」
「俗にいうマヨラーなんで気にしないでください。リジェネ、そればかり食べないでニンジンも食え。ほら。」
 ニールのほうは、スプーンで他人丼ばかり食べるリジェネにニンジンを放り込んでいる。それから、全員のお茶を用意してと動いている。
「味は大丈夫ですか? 」
「ああ、おいしいよ。これを作れるのがニール君というのが凄いな。」
「修業の成果ですねぇ。」
「我々の分まで用意するとなると大変だったろ? 」
「いえいえ、おやつを年少組が食べにくるんで、いつも通りです。・・・・すいません、お土産をいただいてしまって。気にしないでくださいよ。」
「本来なら、私らがごちそうさせていただくつもりだったんだから、これぐらいはさせてくれ。」
「ありがとうございます。あとでデザートに出します。うちのが喜びます。マンゴーは大人気なんですが、特区じゃ夏くらいにしか見かけないんで。」
「そうかな? これは特区で準備させたものだよ? 」
「高級百貨店にしかないでしょ? うちは大人数なんで・・・・あはははは。」
 怖ろしく高級なので、悟空が食べられるほどに準備すると家計費が、とんでもない数字になる。そんなものは寺では出せない。貧乏性のニールには売ってても買えないし、誰かが買って来たら、「もったいない。」 と、叱ることになる。そこいらは笑ってスルーだ。
「トダカ? 」
「うちの娘さん、庶民派なんだよ。年少組が揃うと軽く十人前は必要になるからさ。」
「は? 」
「年少組って、キラ様たちも含まれているのか? 」
「ああ、含まれているよ。うちのシンとレイ、キラ様、アスランくん、悟空君がルーティーンのメンバーで、これにカガリ様やらラクス様も年少組だ。悟空くんが、よく食べるんだ。この丼を大盛り二杯ぐらいで、おやつだ。」
「この間、キラ様の護衛をしてくれていた子だね。そうか、そりゃ大変だなあ。」
 もぐもぐと一桁組も丼を消費しつつ頷く。毎日、大人数の食事の準備をするとなれば、確かに高級品は使えない。
「ああ、そうだ。カガリが差し入れを送ってくれるんですが大量すぎるので控えるように注意してもらえませんか? 冷蔵庫に入りきらないほどに送ってくれるんで、申し訳なくて。」
 一桁組なら注意できるのだろうか、と、ニールが尋ねたら、一桁組は想像したらしく笑い出した。オーヴの風習として、まず残るほどに準備してもてなすものと決まっている。悟空を基準にして差し入れすると、そういうことになるのは想定内だ。
「それは無理だなあ、ニール君。うちのほうは、余るほどに準備するのが礼儀なんだ。悟空くんが食べきれないほどということになると、そうなるんだよ。」
「つまりね、悟空君たち年少組が満腹になって、ニールくんにも満腹になってもらうとすると、年少組がギブアップするほどでないとならないからさ。量は多くなると思う。その差し入れ、ニールくんも食べているのかい? 」
「ええ、いただいてますよ。伊勢海老が送られてきた時は凄かったです。悟空がエビフライが食べたいって言ったんで揚げましたが巨大でした。俺は一匹食べきれませんでしたから。」
「うーん、それは私たちでも無理だなあ。あれは焼くか茹でたのがベストだ。生きてるなら刺身もいい。」
「伊勢海老はいいなあ。・・・・ああ、それで、『お父さん助けてコール』だったのか。」
「そうですそうです。たくさん生きたのが届いたので、トダカさんに捌いてもらったんです。」
「おい。」
「はいはい。次は? 」
「肉。」
 坊主が空になった丼を差し出したので、ニールがお代わりを用意する。はい、どうぞ、と、卓袱台に置いたら、坊主がスプーンで肉部分を女房の口に投げ入れる。
「くっちゃべってないで食え。」
「ああ、ママ、サラダもっっ。」
 もちろん、リジェネもフォークでニンジンサラダを用意してニールの口元に待機する。三口ほど坊主が食わせると、リジェネの番だ。サラダも投げ入れられて、ニールもモグモグ食べている。気にする様子もなく呑み込むと、そちらもお代わりは? とか尋ねている。一桁組は絶句している。普通は恥ずかしいとかあるたろうと思ったのだが、そういうものはないらしい。
「日常、こんなです。気にしないでください、お客様。」
 ハイネが説明しつつ、ニールに味噌汁椀を持たせて、飲めと命じている。食事の世話をして食べないというのは事実らしい。確かに、ニールは、ほとんど手を付けていない。
「いいから食べなさい、娘さん。じじいたちは、まだまだお代わりするほど減っていない。」
「ママ、ちょっとは自分で食べようよ。全然、食べてないっっ。」
 リジェネも、うーっと睨んでいるので、はいはい、と、ニールも、ようやく手を付ける。マジかっっ? という顔で一桁組がトダカに視線を投げたら、こちらは優雅に微笑んで頷いている。どうやら、これが日常らしい。
「トダカ、これは過保護になるな。」
「そうだろ? 年少組も、これには参加するからね。可愛いだろ? うちの娘さん。」
「ビールの追加もセルフなんだな。」
「ああ、冷蔵庫から好きなのを取って来てくれ。私のも頼む。」
作品名:こらぼでほすと 秋刀魚6 作家名:篠義