こらぼでほすと 秋刀魚8
食事が終わった辺りで、別荘での上映会をやることになった。こちらは参加自由なので、見たいのだけで別荘のリビングに集まる。リビングの天井から備え付けの上映用のパネルを下ろして、その周辺にソファや椅子がセッティングされる。一番真ん中の席に、ニールとカガリとラクスが座った。そして、レイがニールの太ももにブランケットを乗せる。
「それじゃあ、ウヅミーズラブの運動会の特別編集版を上映します。かれこれ三十年くらい前の分です。」
「ということは、私は生まれてないんだな。」
「そうですね。まだ、ウヅミ様が国家元首になる前でしたから、少し時間に余裕がありました。」
「みな、二十代から三十代あたりです。」
「まあ、よく残ってましたねぇ。」
「二桁組の前半に、こういうものを残しているのがおりました。」
全員が席に着くと、カーテンも閉じて少し薄暗くなる。映像は、いきなり始まった。リレーあたりらしく、若者たちが笑いながら応援しいる。
「これがトダカだよ、ニール君。」
その中で、ウヅミと並んで笑っている青年を指して、一桁組のじじいたちが説明してくれる。確かに今よりは、ほっそりとした美青年だ。
「トダカさん、本当に美青年なんだなあ。」
「それで、となりで大笑いしてるのが、私の父上か。うわぁー若いなあ。」
「まだ、トダカがウヅミ様の補佐になったばかりでした。よく気が付いて便利だとおっしゃってましたよ。」
「まだ、鬼になったことがなかったから平和だったなあ。」
「ひどいことを言うなあ、おまえたち。私は、別にキレやすい性質じゃあなかったんだが? 」
「「「鬼? 」」」
若い衆たちは、キレたトダカを知らない。穏やかな人だとばかり思っているので、疑問符が飛び交っている。
「鬼なんだ。滅多にならないけど。」
「俺、とーさんが怒ったとこなんて見たことねぇーなんだけど? 」
「俺も見たことありません。」
「老成してキレるまでの時間は長くなってるからなあ。」
「私は聞いたことがあるぞ。父上が、『絶対にトダカだけは本気で怒らせるな。』 と、おっしゃってた。実際に激怒しているのは見たことはないな。」
映像は、全員リレーであるらしく、二組がトラックを駆けている。みんな、本気で応援しているが、ウヅミにバトンが渡ると、颯爽と走り出した。カガリも、ここまで若い父親の姿なんて初めてだ。何やら叫びつつ先を行くランナーを追い駆けて距離を縮めている。
・・・・全力疾走してるのなんて初めて見たなあ・・・・・
カガリより少し年上ぐらいのウヅミだ。体力ありまくりで走り切ったら、大笑いして、また檄を飛ばす。檄を飛ばされているのはトダカで、こちらも涼しい顔で走っている。もう二度と生身で会うことはないので切ない気分になる。まだまだ教えて欲しいこともあったし先を走っていて欲しかった。そう思うと胸がツキンと痛い。それを知ってか、ニールがカガリの肩を抱く。
「・・・薄暗いから大丈夫だ・・・・」
「・・うん・・・」
「俺に、もたれてもいいからな?」
「・・うん・・・」
周囲には聞こえない小さい声で囁いて、カガリの頭を自分の胸に押し付けた。亡くなってしまった大切な人を悼むのは誰だって涙が伴う。だから、顔を隠せるようにしまいこんでくれた。周囲も気付いてもスルーする。この映像は懐かしくて、関係者の胸には痛みももたらす。
場面が切り替わり、次は騎馬戦だ。もちろん、ウヅミは大将だし、トダカも大将で馬役にまたがっている。派手にほら貝で開戦の合図だ。
「うわぁー本格的だ。」
「こうやって戦うものなんだな。」
「私たちの騎馬戦より大将のぶつかり方が派手ですわね。」
カガリの気持ちが落ち着く頃に、カガリの背中を軽く叩いていたニールの手が止まった。そして、体温が温かくなる。それでカガリも気付いて顔を上げる。ソファの背中部分にニールの頭は落ち着いていて、くぅーと寝息だ。ラクスが立ち上がり、そーっとニールの身体をソファに沈め、カガリも身体を離す。ただし、ニールの手は握ったままだ。ゆっくりとソファに横にして、手を握ったままカガリもソファの前に座り込む。手を離すと目を覚ますからだ。レイが、枕をセットすると歌姫様も逆の手を握り、カガリの横に座り込む。
「寝た? 」
「ええ、ぐっすりですね。」
「じゃあ、映像は止めましょうか? カガリ様。」
「いや、大丈夫だ。他のも見せてくれ。」
「疲れたって言ってたから、たぶん起きないよ。」
「これ、ダビングってできるか? 一桁組。」
「もろんです。ウヅミ様だけの特別編集はリクエストしてございます。」
「わかった。さて、これで騎馬戦の実践を確認させてもらおう。おかんを奪取するとなると、かなり難しい。」
「最初は連携いたしましょうか? カガリ。」
「うーん、どうだろうなあ。相手が相手だからなあ。」
「全騎でつっこむとか? 」
「いや、シン、それは危険だ。八戒さんに気功波を撃たれたら、そこで終わりだ。馬はナチュラルなんだぞ。」
「それなら、ラクスの騎馬は有利じゃないか? 馬が傭兵たちだ。」
「ですが、カガリ、一度として、うちの護衛さんたちは三蔵さんに勝ったことはございませんよ? それに二十四騎で襲い掛かるとなると、あちらも本気になられる可能性が・・・・」
「なら、四方向から突入がいいか・・・対処できなければいいんだろ? 」
「それなら悟空が突っ込んだ後に襲い掛かるほうが安全だな。」
騎馬についての作戦会議なんぞやりながら、みんなで映像鑑賞をした。ワイワイやっているとカガリも泣いている暇はない。攻略方法がないので、みんな、いろいろと考えているのだが、ラスボスは強いものと確定している。
小一時間、上映会をやってニールを残して庭に出た。昼寝しているニールの留守番はハイネが担当するので追い出された。
「とりあえず、大玉転がしあたりからやるか? 」
「そうだな。組み分けしよう、キラ。」
「え? オーヴばーさす吉祥富貴じゃないの? カガリ。」
「それでやったら、うちが負けるのは確定だ。おもしろくない。」
「んーじゃあ、僕がアスランと悟空と悟浄さん。」
「ラクスとレイとシン。」
「八戒さんと鷹さんとダコスタ。」
「アンディと三蔵と・・・トダカたちは参加するのか? 」
「じじいたちも付き合いますよ、カガリ様。」
「なら、一桁組はもらうか。」
「じゃあ、僕がトダカさん。紅と爾燕さんは、どっちがいい? 」
「紅をくれ。それとアイシャ。マリューは、キラのほうな? 」
「じゃあ、リジェネは僕がもらって・・・こんなもの? 」
「ラクスの傭兵組はもらう。足りない分は、スタッフで。」
「オッケー。じゃあ、カガリは帽子、赤でいいよね? 僕らが白を被る。」
「それじゃあ、ウヅミーズラブの運動会の特別編集版を上映します。かれこれ三十年くらい前の分です。」
「ということは、私は生まれてないんだな。」
「そうですね。まだ、ウヅミ様が国家元首になる前でしたから、少し時間に余裕がありました。」
「みな、二十代から三十代あたりです。」
「まあ、よく残ってましたねぇ。」
「二桁組の前半に、こういうものを残しているのがおりました。」
全員が席に着くと、カーテンも閉じて少し薄暗くなる。映像は、いきなり始まった。リレーあたりらしく、若者たちが笑いながら応援しいる。
「これがトダカだよ、ニール君。」
その中で、ウヅミと並んで笑っている青年を指して、一桁組のじじいたちが説明してくれる。確かに今よりは、ほっそりとした美青年だ。
「トダカさん、本当に美青年なんだなあ。」
「それで、となりで大笑いしてるのが、私の父上か。うわぁー若いなあ。」
「まだ、トダカがウヅミ様の補佐になったばかりでした。よく気が付いて便利だとおっしゃってましたよ。」
「まだ、鬼になったことがなかったから平和だったなあ。」
「ひどいことを言うなあ、おまえたち。私は、別にキレやすい性質じゃあなかったんだが? 」
「「「鬼? 」」」
若い衆たちは、キレたトダカを知らない。穏やかな人だとばかり思っているので、疑問符が飛び交っている。
「鬼なんだ。滅多にならないけど。」
「俺、とーさんが怒ったとこなんて見たことねぇーなんだけど? 」
「俺も見たことありません。」
「老成してキレるまでの時間は長くなってるからなあ。」
「私は聞いたことがあるぞ。父上が、『絶対にトダカだけは本気で怒らせるな。』 と、おっしゃってた。実際に激怒しているのは見たことはないな。」
映像は、全員リレーであるらしく、二組がトラックを駆けている。みんな、本気で応援しているが、ウヅミにバトンが渡ると、颯爽と走り出した。カガリも、ここまで若い父親の姿なんて初めてだ。何やら叫びつつ先を行くランナーを追い駆けて距離を縮めている。
・・・・全力疾走してるのなんて初めて見たなあ・・・・・
カガリより少し年上ぐらいのウヅミだ。体力ありまくりで走り切ったら、大笑いして、また檄を飛ばす。檄を飛ばされているのはトダカで、こちらも涼しい顔で走っている。もう二度と生身で会うことはないので切ない気分になる。まだまだ教えて欲しいこともあったし先を走っていて欲しかった。そう思うと胸がツキンと痛い。それを知ってか、ニールがカガリの肩を抱く。
「・・・薄暗いから大丈夫だ・・・・」
「・・うん・・・」
「俺に、もたれてもいいからな?」
「・・うん・・・」
周囲には聞こえない小さい声で囁いて、カガリの頭を自分の胸に押し付けた。亡くなってしまった大切な人を悼むのは誰だって涙が伴う。だから、顔を隠せるようにしまいこんでくれた。周囲も気付いてもスルーする。この映像は懐かしくて、関係者の胸には痛みももたらす。
場面が切り替わり、次は騎馬戦だ。もちろん、ウヅミは大将だし、トダカも大将で馬役にまたがっている。派手にほら貝で開戦の合図だ。
「うわぁー本格的だ。」
「こうやって戦うものなんだな。」
「私たちの騎馬戦より大将のぶつかり方が派手ですわね。」
カガリの気持ちが落ち着く頃に、カガリの背中を軽く叩いていたニールの手が止まった。そして、体温が温かくなる。それでカガリも気付いて顔を上げる。ソファの背中部分にニールの頭は落ち着いていて、くぅーと寝息だ。ラクスが立ち上がり、そーっとニールの身体をソファに沈め、カガリも身体を離す。ただし、ニールの手は握ったままだ。ゆっくりとソファに横にして、手を握ったままカガリもソファの前に座り込む。手を離すと目を覚ますからだ。レイが、枕をセットすると歌姫様も逆の手を握り、カガリの横に座り込む。
「寝た? 」
「ええ、ぐっすりですね。」
「じゃあ、映像は止めましょうか? カガリ様。」
「いや、大丈夫だ。他のも見せてくれ。」
「疲れたって言ってたから、たぶん起きないよ。」
「これ、ダビングってできるか? 一桁組。」
「もろんです。ウヅミ様だけの特別編集はリクエストしてございます。」
「わかった。さて、これで騎馬戦の実践を確認させてもらおう。おかんを奪取するとなると、かなり難しい。」
「最初は連携いたしましょうか? カガリ。」
「うーん、どうだろうなあ。相手が相手だからなあ。」
「全騎でつっこむとか? 」
「いや、シン、それは危険だ。八戒さんに気功波を撃たれたら、そこで終わりだ。馬はナチュラルなんだぞ。」
「それなら、ラクスの騎馬は有利じゃないか? 馬が傭兵たちだ。」
「ですが、カガリ、一度として、うちの護衛さんたちは三蔵さんに勝ったことはございませんよ? それに二十四騎で襲い掛かるとなると、あちらも本気になられる可能性が・・・・」
「なら、四方向から突入がいいか・・・対処できなければいいんだろ? 」
「それなら悟空が突っ込んだ後に襲い掛かるほうが安全だな。」
騎馬についての作戦会議なんぞやりながら、みんなで映像鑑賞をした。ワイワイやっているとカガリも泣いている暇はない。攻略方法がないので、みんな、いろいろと考えているのだが、ラスボスは強いものと確定している。
小一時間、上映会をやってニールを残して庭に出た。昼寝しているニールの留守番はハイネが担当するので追い出された。
「とりあえず、大玉転がしあたりからやるか? 」
「そうだな。組み分けしよう、キラ。」
「え? オーヴばーさす吉祥富貴じゃないの? カガリ。」
「それでやったら、うちが負けるのは確定だ。おもしろくない。」
「んーじゃあ、僕がアスランと悟空と悟浄さん。」
「ラクスとレイとシン。」
「八戒さんと鷹さんとダコスタ。」
「アンディと三蔵と・・・トダカたちは参加するのか? 」
「じじいたちも付き合いますよ、カガリ様。」
「なら、一桁組はもらうか。」
「じゃあ、僕がトダカさん。紅と爾燕さんは、どっちがいい? 」
「紅をくれ。それとアイシャ。マリューは、キラのほうな? 」
「じゃあ、リジェネは僕がもらって・・・こんなもの? 」
「ラクスの傭兵組はもらう。足りない分は、スタッフで。」
「オッケー。じゃあ、カガリは帽子、赤でいいよね? 僕らが白を被る。」
作品名:こらぼでほすと 秋刀魚8 作家名:篠義