こらぼでほすと 秋刀魚9
なんとか借り物競争は終わった。これは片付けるものがないので、すぐに人探し競争になる。今度も四つのコンテナの茶封筒から取り出して、該当者とゴールする。書いた人がニールたちだから、まだキラが書いたのよりはマシという程度だ。
よーい、ドンッと空砲で走り出したのは、オーヴ組だ。取り出して、名前が書かれている人は、その該当者を探しているのだが、吉祥富貴の人間の名前なんてオーヴ組にはわからないから、結構、大騒ぎだ。
「べにさーんっっ、べにさんはいますかっっ? 」
叫ばれている名前に、吉祥富貴の面々は、ん? と気付く。それは読み方が間違っている。べにさんは、紅孩児のことだ。呼ばれてるぞーとスタッフが声をかけて一緒に走る。
「あ、そうか、読み方がいろいろあるんだった。フリガナすればよかったな。」
「ということは、いのししさんとかしゃーさんとか、いろいろ呼ばれそうだねぇ。」
人外組は漢字なので読み方がいろいろとある。そうなるとフリガナがなければ、まともに読めない場合もある。まあ、形容詞の場合は、身近なところからチョイスできるので、なんとかなるだろう、と、一桁組はスルーの方向だ。
鷹が引いたのはダコスタだったが、となりのオーヴ組が首を捻っているので、覗いたら、「たらしの人」 だった。俺のと交換しよう、と、紙を入れ替えてタープへ走って来た。そして、いきなりニールを担ぐ。
「へ? 」
「たらしの人というのは、おまえさんだろ? 」
「え? いや、違う。てか、鷹さんっっ。」
「お兄さんの意見は正論だ。」
周囲は、はいはい、そーですねーと温い目で頷いている。いろんな生き物をたらしているので、それについては異論はない。寺の坊主だのイノベイドだの、ちょっと普通ではないのが、たらされているからだ。しょうがないよねぇーとトダカは大笑いして一桁組に説明している。
「三蔵さんはたらされたのか? 」
「そうなるんじゃないかなあ。強引に寺に住まわせて女房にしちゃったからねぇ。」
「確か、ダメ人間製造機だったな、ニールくんは。」
「三蔵さん、うちの娘が嫁ぐまでは、自分で家事もやってたんだけど、何もしなくなったからさ。」
「そりゃ、あれだけテキパキ準備されたら、何もすることはないだろうな。」
「それも自分好みの料理だしなあ。」
「味付けも申し分なかった。和風の料理ができるってだけでもポイントは高い。」
「カガリ様が、寺に滞在するっておっしゃる意味は、よくわかったよ、トダカ。確かに、気楽で楽しいだろう。」
「まあねぇ。ニールにとっては、娘が帰って来てるって感覚だから、ざっくばらんなもんさ。」
ゴール付近では、鷹がニールを、お姫様だっこでキスしているのでカガリやシンからライダーキックされていたりするのが見えている。自称ニールの恋人なので、パフォーマンスしているらしい。そしてニールを取り戻したカガリが、お姫様抱っこで観覧席に運んで来る。
「カガリ? 俺、恥ずかしいんだけど? 」
「はあ? おかんは体力温存だ。ここは私が運ぶべきだろっっ。」
「このぐらい歩いたって・・・」
「ダメだ。くくくくく・・・・おかんは軽いから運びやすいぞ。」
筋肉脳姫にすれば、ニールぐらいの重さは問題ではない。さくさく歩いている。その後を協議が終わったラクスやらリジェネも歩いている。
「私、リジェネならオンブはできると思うのですが、さすがにママは無理ですわ。」
「僕、ラクスも無理だよ。ちゃんと鍛えて、ママを抱っこできるようになろー。」
とか言ってたら、ヒルダがリジェネを引いたらしく、そのまんま強奪されていった。おやまあ、と、笑っていたら観覧席に到着だ。そして、ここにオーヴ組が紙を持ってやってきていた。
「申し訳ありませんっっ、トダカさんっっ。」
深々とお辞儀して紙を見せている。そこに書かれているのは、『恋人』の文字だ。トダカは、えーっと
微妙な顔をしている。
「過去、トダカさんはウヅミ様の恋人役を拝命されていらっしゃいました。どうか、お願い致します。」
と、説明されたのだが、あんまやりたくない。
「拒否する。他の該当枠を探しなさい。」
「では、ニールくんをっっ。」
「はあ? うちの娘は、きみの恋人じゃないだろ。」
「これから交際を申し込みたいと思います。」
「何をバカなことを。」
「そうだ、トダカの娘さんは人妻だぞ。」
「おまえごときの恋人など、失礼にもほどがある。」
一桁組まで加わって拒否している。送り届けられたニールにしてみると余興で一緒に走るくらいなら、と、思っていたら、そのままカガリが、オーヴ組の部下の前で立ち止まった。
「私のおかんを恋人にしたいなら、まず、私を倒し、さらに三蔵を倒して納得させろ。」
「まあ、カガリ、そんな短慮な。それなら、私のママでもあるんですから、私も倒していただきませんとね? ほほほほほほ。それから子供たち全員を倒して納得させていただければ認めますわ。」
「カガリ様、ラクス様、それなら私も加わりますよ? ニールの父親なんですから。」
もちろん、トダカも爽やかな笑顔で立ち上がる。わぁー怒ってる怒ってるーと、一桁組は慌てている。トダカの絨毯爆撃的な暴言なんか聞きたくもない。
「とにかく認められんっっ。さっさと下がれっっ。」
「トットダカっっ、冗談だ。れっ冷静にっっ。」
「ニッニールくんっっ、トダカを鎮めてくれ。」
え? 大袈裟な、と、ニールがカガリの腕から降りて、まあまあ、と、周囲の肩を叩いて宥める。余興なんだから、と、言うのに、「きみが、そんなだから心配なんだよ、娘さん。」 と、トダカに返された。
「え? 」
「どっかで攫われないのか心配なんだ。」
「いや、お父さん。そこまで真剣に心配しなくても。」
「こういう輩は多いんだ。」
「そうですか? 」
「そうだよ。普段は、うちの人たちが一緒だからいいけどね。一人で出歩いて攫われたら怖いじゃないか。」
「はい? 」
「トダカさん、大丈夫ですわ。ママにはリジェネがくっついておりますから緊急通信が配信されます。特区内でしたら、すぐに奪還可能です。」
「まあ、そうなんですが。当人が、暢気さんなので。」
「そういうママだからこそ癒されるんですもの。リスクマネージメントはさせております。」
「ええ、私もニールの外出には気を配っております。」
「あの、俺、それほど弱くはないんですが? みなさん。どこの幼児なんですか? 俺は。 」
ニールにしてみれば、そこまで心配されることはないだろう、と、あきれて手を横に振っている。体力的には劣るが、そこまでされるほどのことではない。だが、トダカも歌姫様も笑顔で振り向いた。
「私の娘だ。幼児じゃないけど、お父さんは心配するのが仕事なんだよ? 娘さん。」
「私のお母さまですもの。心配するのは、当たり前です。何かあったら、黒子猫が大気圏降下しますよ? ママ。それに、どこかの二重人格も、どこかの実弟も、リジェネの兄も。黙っていませんよ? 」
「うっ。」
よーい、ドンッと空砲で走り出したのは、オーヴ組だ。取り出して、名前が書かれている人は、その該当者を探しているのだが、吉祥富貴の人間の名前なんてオーヴ組にはわからないから、結構、大騒ぎだ。
「べにさーんっっ、べにさんはいますかっっ? 」
叫ばれている名前に、吉祥富貴の面々は、ん? と気付く。それは読み方が間違っている。べにさんは、紅孩児のことだ。呼ばれてるぞーとスタッフが声をかけて一緒に走る。
「あ、そうか、読み方がいろいろあるんだった。フリガナすればよかったな。」
「ということは、いのししさんとかしゃーさんとか、いろいろ呼ばれそうだねぇ。」
人外組は漢字なので読み方がいろいろとある。そうなるとフリガナがなければ、まともに読めない場合もある。まあ、形容詞の場合は、身近なところからチョイスできるので、なんとかなるだろう、と、一桁組はスルーの方向だ。
鷹が引いたのはダコスタだったが、となりのオーヴ組が首を捻っているので、覗いたら、「たらしの人」 だった。俺のと交換しよう、と、紙を入れ替えてタープへ走って来た。そして、いきなりニールを担ぐ。
「へ? 」
「たらしの人というのは、おまえさんだろ? 」
「え? いや、違う。てか、鷹さんっっ。」
「お兄さんの意見は正論だ。」
周囲は、はいはい、そーですねーと温い目で頷いている。いろんな生き物をたらしているので、それについては異論はない。寺の坊主だのイノベイドだの、ちょっと普通ではないのが、たらされているからだ。しょうがないよねぇーとトダカは大笑いして一桁組に説明している。
「三蔵さんはたらされたのか? 」
「そうなるんじゃないかなあ。強引に寺に住まわせて女房にしちゃったからねぇ。」
「確か、ダメ人間製造機だったな、ニールくんは。」
「三蔵さん、うちの娘が嫁ぐまでは、自分で家事もやってたんだけど、何もしなくなったからさ。」
「そりゃ、あれだけテキパキ準備されたら、何もすることはないだろうな。」
「それも自分好みの料理だしなあ。」
「味付けも申し分なかった。和風の料理ができるってだけでもポイントは高い。」
「カガリ様が、寺に滞在するっておっしゃる意味は、よくわかったよ、トダカ。確かに、気楽で楽しいだろう。」
「まあねぇ。ニールにとっては、娘が帰って来てるって感覚だから、ざっくばらんなもんさ。」
ゴール付近では、鷹がニールを、お姫様だっこでキスしているのでカガリやシンからライダーキックされていたりするのが見えている。自称ニールの恋人なので、パフォーマンスしているらしい。そしてニールを取り戻したカガリが、お姫様抱っこで観覧席に運んで来る。
「カガリ? 俺、恥ずかしいんだけど? 」
「はあ? おかんは体力温存だ。ここは私が運ぶべきだろっっ。」
「このぐらい歩いたって・・・」
「ダメだ。くくくくく・・・・おかんは軽いから運びやすいぞ。」
筋肉脳姫にすれば、ニールぐらいの重さは問題ではない。さくさく歩いている。その後を協議が終わったラクスやらリジェネも歩いている。
「私、リジェネならオンブはできると思うのですが、さすがにママは無理ですわ。」
「僕、ラクスも無理だよ。ちゃんと鍛えて、ママを抱っこできるようになろー。」
とか言ってたら、ヒルダがリジェネを引いたらしく、そのまんま強奪されていった。おやまあ、と、笑っていたら観覧席に到着だ。そして、ここにオーヴ組が紙を持ってやってきていた。
「申し訳ありませんっっ、トダカさんっっ。」
深々とお辞儀して紙を見せている。そこに書かれているのは、『恋人』の文字だ。トダカは、えーっと
微妙な顔をしている。
「過去、トダカさんはウヅミ様の恋人役を拝命されていらっしゃいました。どうか、お願い致します。」
と、説明されたのだが、あんまやりたくない。
「拒否する。他の該当枠を探しなさい。」
「では、ニールくんをっっ。」
「はあ? うちの娘は、きみの恋人じゃないだろ。」
「これから交際を申し込みたいと思います。」
「何をバカなことを。」
「そうだ、トダカの娘さんは人妻だぞ。」
「おまえごときの恋人など、失礼にもほどがある。」
一桁組まで加わって拒否している。送り届けられたニールにしてみると余興で一緒に走るくらいなら、と、思っていたら、そのままカガリが、オーヴ組の部下の前で立ち止まった。
「私のおかんを恋人にしたいなら、まず、私を倒し、さらに三蔵を倒して納得させろ。」
「まあ、カガリ、そんな短慮な。それなら、私のママでもあるんですから、私も倒していただきませんとね? ほほほほほほ。それから子供たち全員を倒して納得させていただければ認めますわ。」
「カガリ様、ラクス様、それなら私も加わりますよ? ニールの父親なんですから。」
もちろん、トダカも爽やかな笑顔で立ち上がる。わぁー怒ってる怒ってるーと、一桁組は慌てている。トダカの絨毯爆撃的な暴言なんか聞きたくもない。
「とにかく認められんっっ。さっさと下がれっっ。」
「トットダカっっ、冗談だ。れっ冷静にっっ。」
「ニッニールくんっっ、トダカを鎮めてくれ。」
え? 大袈裟な、と、ニールがカガリの腕から降りて、まあまあ、と、周囲の肩を叩いて宥める。余興なんだから、と、言うのに、「きみが、そんなだから心配なんだよ、娘さん。」 と、トダカに返された。
「え? 」
「どっかで攫われないのか心配なんだ。」
「いや、お父さん。そこまで真剣に心配しなくても。」
「こういう輩は多いんだ。」
「そうですか? 」
「そうだよ。普段は、うちの人たちが一緒だからいいけどね。一人で出歩いて攫われたら怖いじゃないか。」
「はい? 」
「トダカさん、大丈夫ですわ。ママにはリジェネがくっついておりますから緊急通信が配信されます。特区内でしたら、すぐに奪還可能です。」
「まあ、そうなんですが。当人が、暢気さんなので。」
「そういうママだからこそ癒されるんですもの。リスクマネージメントはさせております。」
「ええ、私もニールの外出には気を配っております。」
「あの、俺、それほど弱くはないんですが? みなさん。どこの幼児なんですか? 俺は。 」
ニールにしてみれば、そこまで心配されることはないだろう、と、あきれて手を横に振っている。体力的には劣るが、そこまでされるほどのことではない。だが、トダカも歌姫様も笑顔で振り向いた。
「私の娘だ。幼児じゃないけど、お父さんは心配するのが仕事なんだよ? 娘さん。」
「私のお母さまですもの。心配するのは、当たり前です。何かあったら、黒子猫が大気圏降下しますよ? ママ。それに、どこかの二重人格も、どこかの実弟も、リジェネの兄も。黙っていませんよ? 」
「うっ。」
作品名:こらぼでほすと 秋刀魚9 作家名:篠義