猫のいる生活
ふふふ、やっぱりこれよね。物陰から獲物がチラチラ見える……チラリズムに魅せられてしまうのは猫も人間も一緒ね。
「ほらほら、もっと頑張らないと捕まらないわよ!」
私もまた猫じゃらしを操って霞を釣る。霞は何度も何度も猫じゃらしを捕まえようと飛びかかってくる。
ああ、楽しい。これぞ猫との時間だわ。
「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああん!」
「えっ、ちょ、大淀!?」
がっくりとうなだれていたはずの大淀が急に大声で泣き始めた。
「どうしたのよ大淀?」
「うわあああああああああ! ずるいー! 足柄さんばっかりー! うわあああああああああああああああああ! 私も遊ぶー! ああああああ!」
まるでだだっ子だわ……大淀とは長い付き合いだけど、こんなの初めて見た。霞を猫にするなんて奇行に走るくらいだし、やっぱり色々と疲れていたのね。
「大淀、落ち着きなさいって。ほら、霞だって驚いてるじゃない。それじゃ余計に近づいてこないわよ」
「やだー! 遊びたいー! 私も遊ぶのー! うわあああああああああああああん!」
ダメだこりゃ。これはもう言葉で言い聞かせてどうにかなるもんじゃないわね。まったく、しょうがないわね。
「ほら、泣かないの。いい子だから、ね?」
私は大淀を優しく抱き寄せて頭を撫でてあげる。
「うわあああん! ママァ!」
アンタの母親になった覚えはないんだけど……まあ、今はいいわ。落ち着くまでは付き合ってあげるわよ。やれやれ。
…………ハッ!?
ここはいったいどこ? 私は……そう、私はさっき大淀に飲み物をもらって、それを飲んでから……どうしたんだっけ? おかしいわね。そこからの記憶がまったくない。いったい何が起こったの?
「ママァ、おっぱい」
「はーい、よしよし。大淀ちゃんはいい子でちゅねー」
目の前では足柄と大淀が幼児プレイをしていた。
……本当にいったい何が起こったのか、誰か教えて。