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intermezzo ~パッサウ再会篇2

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「なぜ?…どうして?…母さんを、レナーテ・フォン・アーレンスマイヤを知っているの?」

「やっぱり、そうか。アーレンスマイヤさんて言うのか…。レナーテさんは。フォンということは、貴族だった?」

「え、ええ。あの…?」

話が見えないというように戸惑った表情を浮かべたユリウスに、行商人の女が順を追って説明する。

「もう…20年前になるかね。この国境の町に、あんたによく似た金髪碧眼の女の人が毎日駅に顔を見せるようになった。
日が西に傾き始めた頃から日暮れまで、ずっと外国からこの駅に入ってくる列車から降りてくる客を確かめているんだ。それですっかり顔見知りになってね。ここへ毎日やって来る訳を聞いたら、『駆け落ちして外国へ行った娘がいる。幸せで暮らしていると信じてはいるが、万が一人生に傷ついて故郷へ戻ってくる事があった場合は、きっとこの国を出た時と同じくこの駅に降り立つ筈だから、その時はあの娘の事を温かく迎えてあげたい。だから毎日ここへ来ているんだ。私はその娘にかつてとても言えないようなひどい事を強いてしまった。なのにそんな母親にあの子はこの国を出る時に「ごめんなさい」と一言書かれた手紙を出してくれた。…その時の手紙の消印が、ここ、パッサウだった。だから自分はここへやって来た、とね。見せてもらった手紙は本当にパッサウの消印が押されていた。彼女外国から入ってくる最後の列車の降車客を確認して、その中に娘の姿がない事を確認すると、安心したような、でも少し淋しげな何とも言えない表情で駅を後にするんだ。それを…子供を産んだ時以外は毎日、本当に20年毎日さ。そうそう、昔は小さなお嬢ちゃんと連れ立ってやって来て、時折そこのベンチで今のあんた達のように並んで買ったお菓子を二人で食べていたよ。その姿があまりに似ていて、まさかと思ってね…。でも、そんな奇跡のような事が本当に起こるなんて…ね」

「おばさん!その人は…母さんは、今でもこの駅に?」

「ああ。20年間、毎日欠かさずと言っただろう?…もうすぐ来る筈さ。…あ、来た来た」

行商人の女が指差した遥か先に、西に傾いた日を背負った女性の姿がユリウスの目を捉えた。

その女性は、かつて自分が知っていたその姿よりも少し小さくなったように思えた。自分と同じ金の髪は少し淡い色合いなっていたが、全身から滲み出る優し気で儚げな雰囲気は昔のままだった。
やがて近づいて来た女性が顔を上げ、ユリウスの姿を認めると、雷に打たれたように立ち尽くした。

「そんな…まさか」

呆然とした表情で、呟くレナーテに、ユリウスの涙声の絶叫が駅舎に響き渡る。

「かあさん!」