Lovin’you after CCA12
Lovin’you after CCA12
クリスマスも終わり、総帥府は年末年始に向けてスウィート・ウォーターで行われる式典や行事の準備に追われていた。
「シャアは今日も忙しそうだね」
朝、シャアを迎えに来たナナイにアムロが声をかける。
「そうですね。しかし年末に行われる軍のレセプションではアムロ大尉もモビルスーツのデモンストレーションに参加されるのでしょう?そちらの準備でアムロ大尉もお忙しいのでは?」
「まぁ、バタバタはしてるけど優秀な部下が揃っているからね。私は編成とフォーメーションのチェックするくらいだからどうって事ないよ」
レセプションではネオ・ジオン、ロンド・ベル双方のモビルスーツによるデモンストレーションが行われる。
和平条約が結ばれているとはいえ、いつ有事に陥るかわからない情勢だ。それにテロ活動もまだまだ各コロニーで頻発している。
その為、パイロット達は日々訓練に勤しみ有事に備えているのだ。
レセプションでデモンストレーションを行う事により、その成果をスウィート・ウォーターの人々に披露し、人々の意識と軍の指揮を高めると共に、各コロニーにネオ・ジオンの軍事力を知らしめるのが目的だ。
「ナナイ大尉も、今が大事な時だからあまり無理しないで下さいね」
そっと、身重のナナイをアムロが労う。
「ありがとうございます。大佐もその辺りは気を遣って下さっていますので大丈夫です。」
「そっか…本当に辛い時はちゃんと言って下さいね」
「はい」
と、そこに準備を終えたシャアとカイルが現れた。
「待たせたな、ナナイ」
「お待たせしました」
「いえ、それでは参りましょう」
「カイルも行くの?」
「うん。例のレセプションのデモにお父さんさんもサザビーで出るから僕はレウルーラのサポートに入るんだよ。今日はその打ち合わせ」
カイルの言葉にアムロが呆れ顔でシャアを見つめる。
「総帥自ら参加するの?それってナナイ大尉に迷惑掛けるんじゃ…」
「アムロ大尉、今更です」
「ナナイ大尉…」
「それにカイル様がサポートに入って下さるので問題ありません」
まだ十二歳の子供がそこまで役に立つのだろうかと疑問に思いつつも、それでナナイの負担が減るならばと頷く。
「アムロ大尉、カイル様は大変優秀です。ご心配なさらずに」
「そうなんですか?邪魔になっていなければ良いんですけど…」
「邪魔だなど、とんでもない!まだまだご学業の方が優先ですが、そうでなければフルでこちらに入って頂きたいくらいです」
「は、はぁ…」
「ははは、アムロ、そう心配するな。君も今日はモビルスーツ隊の訓練だろう?無理はしないようにな」
シャアが優しくアムロの肩を叩く。
「無理って…、もう身体は全快してるんだから大丈夫だよ」
双子の出産で体調を崩していたアムロだったが、二年が経ち、まだ多少の不安は有るもののほぼ全快した為、今ではモビルスーツ隊の隊長に復帰している。
例のテロ事件でアムロの生存が明らかとなり、MIA認定も取り下げられた。
しかし、流石に総帥夫人が連邦に復帰する訳にもいかない為、連邦軍を除隊し、ネオ・ジオンのモビルスーツ隊の隊長に就いている。
ネオ・ジオンのパイロット達との蟠りも懸念されたが、テロ事件でシャアを守った事、そしてナナイやレズン、ギュネイがアムロを支持している事から思ったよりもスムーズに溶け込む事が出来ていた。
何より、あのアクシズショックの時、たった一機でアクシズを押し返していた光景を皆が忘れていなかったのだ。
そして、あの時放たれたサイコフレームの光は、パイロット達にもアムロの心を伝えていた。
「君がパイロットとして優秀なのは分かっているが、整備の方にも手を出しているだろう?そちらに入ると時間も忘れて作業に没頭してしまうじゃないか」
「あ…それは…だって…正直そっちの方が好きだし…」
「メカニックチーフはアナハイムからネオ・ジオンにアムロ大尉が来てくれたと大喜びです」
「ナナイ、アムロを甘やかすな」
「私は事実を申し上げたまでです」
シャアはフゥと溜め息を吐くと、アムロの頬に軽くキスをする。
「今日は私もデモンストレーションの件でそちらに顔を出す。帰りはそのまま一緒に帰るぞ」
シャアの言葉にアムロが「ええー」と嫌な顔をする。
「アムロ、本番で倒れたら意味がないだろう?素直に従いたまえ」
「はーい」
そんなアムロに、ナナイがクスクスと笑いを浮かべながら、二人を連れて総帥府へと向かっていった。
「大佐、アムロ大尉に例の事は伝えなくて宜しいんですか?」
総帥府に向かうエレカの中で、ナナイが今日のスケジュールを報告しながらシャアに尋ねる。
「そうだな…、おそらく薄々は気付いているようだが、まだ確定ではない事に心配を掛けたくない。それに、いざとなったら私が彼女を守る」
「それでデモンストレーションに参加ですか…」
「すまないな、しかしこれだけは譲れない」
「承知しております。しかし、レズン少尉とブライト艦長には報告しておくべきかと?」
「そうだな、後デモンストレーションにカミーユ・ビダンも加える。Zガンダムの新型機がアナハイムから今日納品されるから、彼にはそれに乗ってもらう」
「カミーユ医師にですか?しかし彼はもう随分モビルスーツに乗っていないのでは?」
ナナイの言葉にシャアがクスリと笑う。
「彼は過去にガンダムMk-Ⅱをティターンズから奪い、そのまま戦闘をしてエゥーゴに入った男だぞ?まぁ、アームレイカーに慣れていないだろうから、一、二回シミュレータで練習させるか。アムロを守る為だと言えば一も二もなく乗るだろう」
シャアのその言葉にナナイが溜め息をつく。
使えるものは何でも使う、必要ならば道化も演じる。目的の為ならば何でもやる、その柔軟な姿勢は過去の人生から学んだ彼の処世術なのだろう。
「畏まりました。カミーユ医師には私の方から連絡致します」
「ああ、よろしく頼む」
その二人の会話を、カイルは黙って聞いていた。
その日の午後、アムロはデモンストレーションの準備でモビルスーツ隊と共にドックでモビルスーツのチェックをしていた。
「チーフ!」
フワリとドックの中を移動しながらメカニックチーフに声をかける。
「どうしました、アムロ大尉」
跳んできたアムロの腕をチーフが掴んで引き寄せる。
「装備なんだけど、デモンストレーションなのにフル装備なのか?」
「ああ、なんでも通常の出撃をよりリアルに再現したいって言う総帥からの指示だが」
「通常の出撃…ね」
アムロは口元に手を当て少し思案する。
「アムロ大尉?何か問題でも?」
メカニックチーフがアムロのその様子に疑問の声を上げる。
「いや、何でもない。了解だ。あ、明日、私はロンド・ベルの方に顔を出して当日の再確認をしてきますので、整備の方をよろしくお願いします」
「ああ、任せてくれ。それよりもちょっとギラドーガの調整で相談したい事があるんだが時間はいいか?」
「あ、はい。大丈夫です」
即答で了承するアムロにメカニックチーフが笑い出す。
「エドヴァルド・レイブンには悪いが、大尉がアナハイムからウチに来てくれて本当に助かってるぜ」
「え?そうですか?」
クリスマスも終わり、総帥府は年末年始に向けてスウィート・ウォーターで行われる式典や行事の準備に追われていた。
「シャアは今日も忙しそうだね」
朝、シャアを迎えに来たナナイにアムロが声をかける。
「そうですね。しかし年末に行われる軍のレセプションではアムロ大尉もモビルスーツのデモンストレーションに参加されるのでしょう?そちらの準備でアムロ大尉もお忙しいのでは?」
「まぁ、バタバタはしてるけど優秀な部下が揃っているからね。私は編成とフォーメーションのチェックするくらいだからどうって事ないよ」
レセプションではネオ・ジオン、ロンド・ベル双方のモビルスーツによるデモンストレーションが行われる。
和平条約が結ばれているとはいえ、いつ有事に陥るかわからない情勢だ。それにテロ活動もまだまだ各コロニーで頻発している。
その為、パイロット達は日々訓練に勤しみ有事に備えているのだ。
レセプションでデモンストレーションを行う事により、その成果をスウィート・ウォーターの人々に披露し、人々の意識と軍の指揮を高めると共に、各コロニーにネオ・ジオンの軍事力を知らしめるのが目的だ。
「ナナイ大尉も、今が大事な時だからあまり無理しないで下さいね」
そっと、身重のナナイをアムロが労う。
「ありがとうございます。大佐もその辺りは気を遣って下さっていますので大丈夫です。」
「そっか…本当に辛い時はちゃんと言って下さいね」
「はい」
と、そこに準備を終えたシャアとカイルが現れた。
「待たせたな、ナナイ」
「お待たせしました」
「いえ、それでは参りましょう」
「カイルも行くの?」
「うん。例のレセプションのデモにお父さんさんもサザビーで出るから僕はレウルーラのサポートに入るんだよ。今日はその打ち合わせ」
カイルの言葉にアムロが呆れ顔でシャアを見つめる。
「総帥自ら参加するの?それってナナイ大尉に迷惑掛けるんじゃ…」
「アムロ大尉、今更です」
「ナナイ大尉…」
「それにカイル様がサポートに入って下さるので問題ありません」
まだ十二歳の子供がそこまで役に立つのだろうかと疑問に思いつつも、それでナナイの負担が減るならばと頷く。
「アムロ大尉、カイル様は大変優秀です。ご心配なさらずに」
「そうなんですか?邪魔になっていなければ良いんですけど…」
「邪魔だなど、とんでもない!まだまだご学業の方が優先ですが、そうでなければフルでこちらに入って頂きたいくらいです」
「は、はぁ…」
「ははは、アムロ、そう心配するな。君も今日はモビルスーツ隊の訓練だろう?無理はしないようにな」
シャアが優しくアムロの肩を叩く。
「無理って…、もう身体は全快してるんだから大丈夫だよ」
双子の出産で体調を崩していたアムロだったが、二年が経ち、まだ多少の不安は有るもののほぼ全快した為、今ではモビルスーツ隊の隊長に復帰している。
例のテロ事件でアムロの生存が明らかとなり、MIA認定も取り下げられた。
しかし、流石に総帥夫人が連邦に復帰する訳にもいかない為、連邦軍を除隊し、ネオ・ジオンのモビルスーツ隊の隊長に就いている。
ネオ・ジオンのパイロット達との蟠りも懸念されたが、テロ事件でシャアを守った事、そしてナナイやレズン、ギュネイがアムロを支持している事から思ったよりもスムーズに溶け込む事が出来ていた。
何より、あのアクシズショックの時、たった一機でアクシズを押し返していた光景を皆が忘れていなかったのだ。
そして、あの時放たれたサイコフレームの光は、パイロット達にもアムロの心を伝えていた。
「君がパイロットとして優秀なのは分かっているが、整備の方にも手を出しているだろう?そちらに入ると時間も忘れて作業に没頭してしまうじゃないか」
「あ…それは…だって…正直そっちの方が好きだし…」
「メカニックチーフはアナハイムからネオ・ジオンにアムロ大尉が来てくれたと大喜びです」
「ナナイ、アムロを甘やかすな」
「私は事実を申し上げたまでです」
シャアはフゥと溜め息を吐くと、アムロの頬に軽くキスをする。
「今日は私もデモンストレーションの件でそちらに顔を出す。帰りはそのまま一緒に帰るぞ」
シャアの言葉にアムロが「ええー」と嫌な顔をする。
「アムロ、本番で倒れたら意味がないだろう?素直に従いたまえ」
「はーい」
そんなアムロに、ナナイがクスクスと笑いを浮かべながら、二人を連れて総帥府へと向かっていった。
「大佐、アムロ大尉に例の事は伝えなくて宜しいんですか?」
総帥府に向かうエレカの中で、ナナイが今日のスケジュールを報告しながらシャアに尋ねる。
「そうだな…、おそらく薄々は気付いているようだが、まだ確定ではない事に心配を掛けたくない。それに、いざとなったら私が彼女を守る」
「それでデモンストレーションに参加ですか…」
「すまないな、しかしこれだけは譲れない」
「承知しております。しかし、レズン少尉とブライト艦長には報告しておくべきかと?」
「そうだな、後デモンストレーションにカミーユ・ビダンも加える。Zガンダムの新型機がアナハイムから今日納品されるから、彼にはそれに乗ってもらう」
「カミーユ医師にですか?しかし彼はもう随分モビルスーツに乗っていないのでは?」
ナナイの言葉にシャアがクスリと笑う。
「彼は過去にガンダムMk-Ⅱをティターンズから奪い、そのまま戦闘をしてエゥーゴに入った男だぞ?まぁ、アームレイカーに慣れていないだろうから、一、二回シミュレータで練習させるか。アムロを守る為だと言えば一も二もなく乗るだろう」
シャアのその言葉にナナイが溜め息をつく。
使えるものは何でも使う、必要ならば道化も演じる。目的の為ならば何でもやる、その柔軟な姿勢は過去の人生から学んだ彼の処世術なのだろう。
「畏まりました。カミーユ医師には私の方から連絡致します」
「ああ、よろしく頼む」
その二人の会話を、カイルは黙って聞いていた。
その日の午後、アムロはデモンストレーションの準備でモビルスーツ隊と共にドックでモビルスーツのチェックをしていた。
「チーフ!」
フワリとドックの中を移動しながらメカニックチーフに声をかける。
「どうしました、アムロ大尉」
跳んできたアムロの腕をチーフが掴んで引き寄せる。
「装備なんだけど、デモンストレーションなのにフル装備なのか?」
「ああ、なんでも通常の出撃をよりリアルに再現したいって言う総帥からの指示だが」
「通常の出撃…ね」
アムロは口元に手を当て少し思案する。
「アムロ大尉?何か問題でも?」
メカニックチーフがアムロのその様子に疑問の声を上げる。
「いや、何でもない。了解だ。あ、明日、私はロンド・ベルの方に顔を出して当日の再確認をしてきますので、整備の方をよろしくお願いします」
「ああ、任せてくれ。それよりもちょっとギラドーガの調整で相談したい事があるんだが時間はいいか?」
「あ、はい。大丈夫です」
即答で了承するアムロにメカニックチーフが笑い出す。
「エドヴァルド・レイブンには悪いが、大尉がアナハイムからウチに来てくれて本当に助かってるぜ」
「え?そうですか?」
作品名:Lovin’you after CCA12 作家名:koyuho