Lovin’you after CCA12
「ああ、昔勧誘した時はエドヴァルドに阻まれたが、大尉がネオ・ジオンに来てくれたおかげで作業が格段に捗る!パイロット達も初めはなんだかんだと言ってたが、気付けば隊長としてのあんたに一目置いてる」
「そ、そうかな…そうなら嬉しい」
殊勝な態度のアムロに、これが本当にあの“連邦の白い悪魔”かと疑問に思う。
しかし、美しい軌跡を描いてモビルスーツを駆るその姿を見ると、やはりそうなんだと理解すると同時に、よくぞこのパイロットと渡り合えたものだと、そして今は味方で良かったと心底思う。
年末の式典当日、スウィート・ウォーター内の大型モニターにレセプションの様子が映し出される。
「さあ、そろそろスタンバイしようか!総員搭乗開始!」
「「了解!」」
アムロの掛け声でパイロット達が一斉にモビルスーツに搭乗を始める。
「レズン少尉!」
コックピットに向かうレズンにアムロが声をかける。
「どうした?アムロ」
「…なんだか嫌な予感がする。もしもの時はデモンストレーションを中止して隊を率いて戦闘態勢に入って欲しい」
アムロの言葉にレズンが目を見開く。
「アムロ?」
そんなレズンにアムロがクスリと笑う。
「レズン少尉はシャアから何か聞いてるんだろう?」
シャアがアムロに内緒で何か動いている事には気付いていた。
しかし、何も言ってこないのならばと知らないふりをしていたが、今日になって嫌なプレッシャーを宇宙に感じる。
おそらくシャアが懸念していた事が現実になろうとしている。
ならばそれに対応するだけだ。
「参ったね。ネオ・ジオンと連邦に反感をもつ奴らが何かを仕掛けてくるかもしれないとさ。もちろんロンド・ベルのブライト艦長も知ってる」
「なるほどね。了解した」
レズンに軽くウィンクして白いノーマルスーツに身を包んだアムロがνガンダムのコックピットへと向かっていく。
それを見送るレズンにカミーユが声を掛ける。
「やっぱりバレバレでしたね」
「大佐はアムロに過保護過ぎるんだ。あいつはそんなに弱くないのに」
「ですね」
「それより、カミーユ。あんたモビルスーツに乗るの久しぶりなんだろう?大丈夫かい?」
「本当に、無茶言いますよ!あのアホ総帥は。でも、アムロさんの為なんて言われたら断れないじゃないですか!意地でも乗りこなしてみせますよ!」
カミーユは親指を立ててレズンに笑うと、Zガンダムのコックピットへと跳んでいった。
そして、その噂の総帥がサザビーへと搭乗するのが見える。
「きっとこれが終わったら、あの夫婦…喧嘩するんだろうな…」
レズンがポツリと呟いた。
《皆の日々の鍛錬の成果を見せて欲しい!》
シャアの言葉にパイロット達が一斉に声を上げる。
《よし、出るぞ!》
サザビーが先頭をきって宇宙へと飛び立つ。
そして、それに続くようにアムロが隊を率いてデッキを飛び出していく。
ラー・カイラムからもケーラ中尉が率いるモビルスーツ隊が飛び出してくる。
その圧巻な光景がモニターに映し出され、スウィート・ウォーターの民衆達が熱狂する。
《よし、フォーメーションワン行くぞ》
《了解!》
打ち合わせ通りにデモンストレーションが行われていく。
ウェブライダーから換装したZガンダムがアムロのνガンダムに続く。
その動きは何年もブランクがあったとは思えない程正確で、見事にZガンダムを乗りこなしていた。
「やるじゃないか、カミーユ!」
レズンがそれに感心しながらも周囲に注意をくばる。
すると、前を行く三機の動きが一瞬止まる。
何かを察したのだろう、三機が何かを警戒しているのが伝わる。
「来たか…」
レズンはそう呟くとアームレイカーをギュッと握り直す。
その瞬間、一筋の閃光が宇宙に走った。
それと同時にνガンダムとZガンダムが閃光の走った方向に向かい飛び出して行く。
《二時の方向に敵機発見!デモンストレーションを中止し戦闘態勢に入れ!》
アムロから各機に通信が入る。
動揺するパイロット達をレズンとケーラが叱責し、戦闘態勢に入る。
《レズン隊は右舷を!ケーラ隊は左舷を!私とカミーユ、ギュネイ准尉、ジュドー少尉はこのまま敵の真ん中に突っ込んで撹乱する!》
《了解!》
アムロの的確な指示に全機が直ぐさま戦闘態勢に入り、敵との交戦に突入する。
そして、当然アムロのνガンダムの傍には真っ赤なサザビーが並ぶ。
《シャア!トップの貴方が先頭にきてどうする!?下がれ!》
アムロの叱責をシャアが鼻で笑う。
《私を侮ってもらっては困る。君以外に堕とされる訳がなかろう?君こそ油断をするなよ》
そんなシャアにアムロが大きく溜め息を吐く。
そうだ、この人はなんだかんだ言ってもパイロットなのだ。
《ああ!もうっ。しょうがないな!行くぞ!》
《了解》
白い機体と赤い機体が重なり合いながら敵の中心へと切り込んで行く。
二人が敵の編隊へと入ったと同時に数機の敵機が爆音を上げて堕ちていく。
「相変わらず凄まじいな…」
その二機の後を追いながらカミーユが呟く。
「そういや、総帥と隊長が戦ってるのは見たことあるけど共闘してるのは初めて見るな。あの二人、打ち合わせていた訳じゃ無いだろうに、なんであんなに完璧な動きが出来るんだ!?」
ジュドーの言葉にカミーユがクスリと笑う。
「グリプスの時はあんな風に一緒に戦っていたよ。その時も今みたいに見事なフォーメーションだった」
その光景を、レウルーラの艦橋でクルー達、そしてナナイとカイルが見つめる。
「赤い彗星と白い悪魔ですか…流石というか…凄いですね。見事に敵の編隊が崩れていく…」
ライル艦長が二人の戦いぶりに感嘆の言葉を洩らす。
「感心している場合ではなくてよ?」
そこに、ブライト・ノアの妻であり、元ホワイトベースの操舵手、ミライ・ノアが現れた。
「ノア夫人!?何故貴女がここに?」
「シャア総帥の指示です。カイル君をフォローするようにと」
ミライがカイルに微笑む。
カイルはミライの言葉の意図するところを理解すると、ライル艦長に指示を出す。
「ライル艦長、十時の方向に向かって全砲を発射して下さい」
「は?今なんと!?」
「十時の方向にいるサラミス級の戦艦がスウィート・ウォーターに向かって攻撃を仕掛けようとしています。おそらく本命はこちらで、前方の敵はモビルスーツ隊を誘き寄せるための囮です」
「何ですと!?」
カイルの言葉に艦長が驚きの声を上げる。
「艦長、レウルーラを左に旋回して下さい」
「ノア夫人?」
「アムロと総帥…それにカミーユかしら、三機がそちらに向かっているわ、援護射撃と敵艦からの砲弾に備えてください」
にっこり笑ってミライが艦長に助言する。
「カイル、それでいいかしら?」
「はい。お父さんとお母さんもサラミスに気付いた様です。おそらく砲台を潰してくれる筈です」
艦長は直ぐに状況を察するとオペレーターにその戦艦を確認させる。
「艦長!確認できました。十時の方向サラミス級戦艦二隻!」
「攻撃用意!」
「サザビー及びνガンダムとZガンダムが敵艦に接触しました!」
「よし、援護射撃発射!」
レウルーラから一斉にビーム砲が放たれ敵艦へと向かっていく。
その砲撃を視認したシャアがニヤリと笑う。
作品名:Lovin’you after CCA12 作家名:koyuho