Lovin’you after CCA12
「happy new year アムロ」
二人で迎える新しい年に、熱いものが胸に込み上げる。
戦争が終わったあの日には、まさかこんな風に二人で新年を迎える日が来るなんて思ってもいなかった。
アムロがシャアの胸に身体を預け、その歓びを噛み締める。
そんなアムロをシャアがギュッと抱き締める。
「今日の様に、また互いの心がすれ違ってしまったり、喧嘩をする事もあるだろう。しかし、来年のこの日も君と共に過ごしたい」
「シャア…」
アムロはシャアの顔を見上げ、優しく自分を見つめる瞳にそっと手を伸ばす。
「一年戦争が終わったあの日…ホワイトベースのみんなの所に還る事が出来た時…、私にも還れる所があるんだって…思ったんだ」
アムロが指先を震わせて涙を堪える。
「でも…、実際は…みんなとは引き離されて…広告塔に引きずり回された後…研究所に閉じ込められて…また一人になってしまった…」
シャアは頬に伸ばされたアムロの震える手を上から覆いギュッと握る。
「アムロ…」
「戦争に巻き込まれる前、サイド7で父さんと暮らしていた時も、父さんは殆ど家に居なかったから…自分の家だったけど…還る場所だとは思えなかった…。そんな私にとって、ホワイトベースの仲間の元は唯一還れる場所だったんだ…」
あの時、コアファイターから零れ落ちるように降りて…みんなが乗るランチの元に向かって手を伸ばした。
無重力の中、くるくると身体を回しながら進む私を、みんなが手を広げて迎えてくれた。こんなに嬉しい事は無いと…涙が溢れた…。
昔を思い出し、涙を浮かべるアムロの髪を優しく梳きながら、自分の胸にギュッと抱き締める。
「今はここが…私の胸が君の還る場所だ。そして、それは永遠に失われる事は無い」
「シャア!」
「だから、安心して君は好きなように飛べばいい。そして必ずここに還って来るんだ」
シャアから伝わる優しい思惟に、漸く本当に還る場所を手に入れたんだと、ここが自分の居場所なんだという想いが込み上げる。
「うん、うん!」
その暖かい胸に頬を擦り寄せ涙を流す。
そして、優しい光をたたえるブルースカイの瞳を見上げる。
「アムロ、私の還る場所も君の元だ。これからも共に生きていこう」
「シャア…うん、ずっと…ずっと一緒に…」
「ああ、ずっとだ…」
二人は互いを強く求め合い、抱き締め合う。
そしてふと、アムロは昼間のレズンの言葉を思い出す。
『なんて言うか…大佐とアムロはさ、お互いを失う事に人一倍臆病だよね』
図星を指されたと思った。
きっと…自分はこの人を失ったら生きていけない…。
震えるアムロの頬をシャアが両手で優しく包み込む。
「何を怯える?」
その問いに、アムロが切なげな瞳を向ける。
「私は…貴方を失ったらきっと生きてはいけない…」
その言葉に、シャアが目を見開く。
そして、目を閉じ少し思案すると優しくアムロを見つめる。
「その時は…一緒に逝こう…」
「シャア!?」
「だが…あの子達を遺してはいけまい?だから、何があっても生き抜こう」
「うん…」
「だからアムロ、約束してくれ。決して無理はしないと…自分の身を軽く見ないでくれ、私も君を失ったら生きていけないのだから…」
その言葉に、アムロはシャアが自分を不安にさせない様にと気遣い何も告げなかった事に…そして、デモンストレーションでずっと傍について守っていてくれた事に気付く…。
「あ…」
シャアはそんなアムロに優しく微笑むと、両頬を包み込んだまま、自身の額とアムロの額を触れ合わせる。
「愛してるよ、アムロ。永遠にともにあると…今ここに誓おう…」
「シャア…!」
二人はそのまま互いに唇を寄せ合い、深く口付けを交わした。
この誓いを胸に刻み着ける様に…。
その頃、ラー・カイラムの艦長室では、ブライトとミライが二人で窓から宇宙を見つめていた。
「もう…あれから何年が経つんだったかな…。アムロの奴が俺たちの元に帰って来てくれた時…嬉しさと共に…自分の不甲斐なさに情けなくなった…」
「ブライト…」
「俺は…上からの命令とはいえ…アイツらを死地へと送り出したんだ。その俺が生き残って…アムロを死なせてしまったのかもしれないと思った時…自分はなんて情けない艦長なんだと…」
そう告げるブライトの言葉を遮る様に、ミライがそっとブライトの手を握る。
そんなミライに少し驚く。けれどその意味を…優しさを感じて、ミライの手に自分の手のひらを重ね合わせる。
「あの日…ホワイトベースを放棄した時…本当は俺も艦と共にしようと思って…ブリッジに立っていたんだ…」
「ええ…、そうだと思った…。でも、私は貴方に生きて欲しくて…貴方を迎えに行ったの」
あの時、ランチにブライトがいない事に気付いたミライは、咄嗟にブライトが何をしようとしているか察して艦橋へと走った。
艦橋で、覚悟を決めたブライトの瞳を見て、艦長としての誇りある死を認めてあげるべきかと思った。けれど、クルーとしてではなく、女として、それを受け入れる事が出来なかった。
だから声を掛けた。
そして、共に生き延びて欲しいと願った。
「貴方が…私と共に生きてくれてよかった…」
「ミライ…」
「ブライト、艦長である貴方を誇りに思うわ。そして、夫である貴方を心から愛してる」
その意思の強い瞳に見つめられ、ブライトは戸惑いながらも胸が熱くなる。
「ミライ…君には一生敵わないな…」
「ふふふ…女は強いのよ」
end
作品名:Lovin’you after CCA12 作家名:koyuho