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 アンヘルパークを抜けてユニオン街道にまで差し掛かると、やっとハジメは歩調を緩めてダズルの手を放した。今は手袋をしているから見えないが、手首が赤くなっているだろう。小柄なくせにハジメは馬鹿力なのだ。悪いのはアイスなのに、何故かダズルが痛い目に遭っている。本人曰く「善良な市民」でハジメ曰く「友達じゃない」から、たとえ男でもハジメにとって手か足を出していい相手ではないのだろう。感情に任せて足を踏んづけたりしたら、相手と自分との間に関わりを認めてしまうと思っている。根はまじめなのに、根性がねじくれて複雑なハジメらしいマイルールだ。
「……アイツ、今日初めて会ったのか?」
 尋ねる言葉からはアプライト作戦の日から、という部分が抜けていたが、ハジメは首を横に振った。
「アルミア記念日から一週間するかしないかぐらい、休暇の最終日かな。妹と農場のみんなを連れて、プエルタウンに遊びに来た時に。あれからちょくちょく」
「よく今までほっといたな」
「悪さするワケじゃなかったからね。せいぜい、僕がからかわれてムカつくぐらいで」
「何でハジメにちょっかい出すんだ?」
「知らないよ」
 知りたくもない、と言っているように聞こえた。後姿が肩で溜息を吐いて、表情さえ見せないまま、スタイラーをつけた腕が街道脇の森から飛び出してきた二匹のドードーに向けられる。射出されたディスクにドードーが目を白黒させている間に、ハジメの指先から伸びたラインが二匹まとめてくるくると囲い取っていた。
「ま、興味が他に逸れてまた変なこと企まれても困るし。僕に向いてる間は我慢するよ」
 ハジメは駆け寄ってきた二匹のドードーの首の根元を撫でる。ふたつずつある頭に、それぞれ不公平にならないためだろう。よろしく、と告げてその内の一匹の背にまたがると、ハジメの肩にムウマがぴったりとくっついた。
「戻ろう、ダズル。報告に行くんだろ?」
「ああ、うん」
 先にブイゼルを抱き上げて前に乗せ、自分はブイゼルの後ろから腕を回すようにしてドードーに乗る。少し背中を撫でると、ドードーはふたつの頭で交互にピピピピ、と高い鳴き声を上げて駆け出した。ハジメが乗ったドードーと並走するように街道を駆けるドードーの足は速く、揺さぶりも激しいため会話を続ける余裕はない。ブイゼルの尻尾が楽しそうに揺れるたび、交互にダズルの腹を打つのは少し苦しかった。ドードーは二本の首を互い違いに出しながら、昼下がりのユニオン街道でまどろむポケモンたちを避けひた走る。
 でも、とダズルはアイスの言葉や態度を思い出した。キザったらしく馬鹿にしたようなのは以前一回きり見た時と変わらず、今回は危うく挑発に乗るところだった。乗ったところで更に馬鹿にされるのはわかっていたというのに。ただどうして、アイスがあんな言葉を選んだのかはわからなかった。
 ドードーで並走するハジメは前を向いている。ムウマだけがまた姿を点滅させ、クククと喉で笑った。
 ハジメはスクール時代からの親友で、ライバルだ。それが壊滅した組織の元幹部と一緒にいたら、心配するのは当然だろう。そこに、とられるかも知れない、なんて子どもっぽい焦りはなかった。ハジメが関係性を認めようとしていないのだから、これ以上どうこうなるわけがない、それこそ友達なんて。
 そう、ダズルは心配しただけだ。それ以上なんてない。わざわざあんな言葉を選んだのは、無意識に自分の中にあるものを取り出したからじゃないのか。とられるって焦ったのはあんたの方じゃねぇの、と心中で呟く。
 街道は森で突き当たり、レンジャーユニオン本部が見えてきていた。
作品名:No Title 作家名:NOAKI