二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

さみしさの後ろのほう 1~5

INDEX|5ページ/5ページ|

前のページ
 
5

どぎまぎしていたのは俺だけらしい。昨日の事は何も無かったかのように帝は放課後俺の教室に現われた。

「貴方、これを忘れていってどうするんですか」

差し出されたファイルを受け取るも帝は手を俺に突き出したままだ。

「どうした?」
「鍵」
「ああ。後で返す。返すからちょっと付き合ってくれねぇかな?」

眉をひくりと動かしながらも断れないのは鍵の所為だろう。
昨日帝が言っていた合鍵は菊の鍵だったらしい。菊はそれを受け取ってすでに帰ったのだから、此所で俺の誘いを断れば帝は家に帰れない。

「意地の悪い……」

呆れながらも帝は頷いた。



「此所嫌いです。げーせん?なんて初めて来ましたが、ガチャガチャ騒がしくて不愉快」
「へえ。俺はてっきり菊と来た事あるのかと」
「あの子こんな所で遊んでるんですか?」

しかめっ面をして、両手で耳を塞いでいるような帝は知らないだろうが、菊は此所ではちょっとした有名人だ。というのも通り名が付く程ゲームが得意であった。
特にUFOキャッチャーをやらせたら右に出る者は居ないだろう。俺も目当てのものが取れずに困っている人に声を掛け、呆気なくそれを取ってしまう菊の姿を何度も目撃していた。

教えてやろうかとも思ったけれど、ブツブツと小言を並べている帝の様子を見るに、友人を思うならその勇姿は知らない振りをした方が良いらしい。

ああいう時の菊は目の色が変わるよなあ。なんて思いながら歩いていると、小さな声が聞こえない事に気付いた。振り返ると誰も居ない。
急いで来た道を戻ると帝はすぐに見つかった。耳を塞ぐのも忘れて一点を見つめている。

「欲しいのか?」

ぴくりと肩を震わせて帝が俺の方を向いた。けれどすぐに透明な壁越しに大きな白いうさぎのぬいぐるみに視線を戻す。俺が声をかける時より少し険しい目付きになっていた。

「まさか。貴方、私を何だと思っているのですか。あんなもの、家にあったって何の役にも立ちません」
「ぬいぐるみに機能性を求めるなよ。俺はあれ可愛いと思うけどな。触ったらふわふわしてて気持ち良さそうだし」

バッグの中から財布を取り出して、千円札を帝に突き付ける。訳が分からない。そんな顔に両替、と言葉を足した。

「もしや貴方、あれを?」
「俺が欲しいからだ。お前の為じゃないからな」

そう言って、俺は百円玉を二枚機械の中に放り込んだ。頑張れってこういう事だろ、菊?