さみしさの後ろのほう 1~5
4
「それを私に言われても……」
翌朝、帝にどういう顔して会えば分からないと相談した隣の席の菊は苦笑いした。
菊とは俺が二年の春にこの学園に転入してからの仲だった。縁あって隣の席になってからと言うもの、お前は聖人かと聞きたくなる程の甲斐甲斐しさを発揮してくれる、俺の一番の友人だ。前の学校で一年の三学期に転校してやっと切れたと思ったのに、此所にも出やがった腐れ縁の髭野郎とはとても比べ物にならない良い奴である。
そんな菊と帝の姓は同じ本田。聞くに二人は親戚であるらしい。どうやら他にもこの学園に通っている彼らの親戚が居るそうだ。
本家は菊の家にあたるのだけれども、帝はこの世代の中で一番年上だった事もあり、よく菊達の世話をしてくれていたらしい。
「帝さん、可愛いものが好きなんですね。知りませんでした」
「菊も知らなかったのか?」
「ええ」
菊はにっこりと笑った。帝と違って菊はよく笑う。帝もたまにはこんな風に笑えば良いのに。
「実は私、引きこもってた時期があるんです。皆が腫物に触るみたいに私に接してきていた時でさえ、帝さんは気が向いたら私の所へ来なさいって。当時から帝さんは一人暮らししていましてね、彼の家の合鍵を頂いたんです。それでよく帝さんの家に入り浸っていたんですけど、可愛いものは見掛けませんでしたね。よほど隠したかったんでしょう」
それをこんな形で俺は知ってしまったのか。
よほど酷い顔をしていたのかもしれない。菊は苦笑いしながら大丈夫ですよと言ってくれた。
「帝さんきっとそんなに怒ってないと思います。ただ、どうしたら良いか分からなかっただけですよ。きっと」
「そうか?」
「そうですよ。私、この事は何も聞かなかった事にしますね。だからアーサーさんだけが知っているんです、帝さんの秘密」
頑張って、と菊はにっこり笑った。何をどう?とはとても聞けず、俺はそれに頷いた。
「それを私に言われても……」
翌朝、帝にどういう顔して会えば分からないと相談した隣の席の菊は苦笑いした。
菊とは俺が二年の春にこの学園に転入してからの仲だった。縁あって隣の席になってからと言うもの、お前は聖人かと聞きたくなる程の甲斐甲斐しさを発揮してくれる、俺の一番の友人だ。前の学校で一年の三学期に転校してやっと切れたと思ったのに、此所にも出やがった腐れ縁の髭野郎とはとても比べ物にならない良い奴である。
そんな菊と帝の姓は同じ本田。聞くに二人は親戚であるらしい。どうやら他にもこの学園に通っている彼らの親戚が居るそうだ。
本家は菊の家にあたるのだけれども、帝はこの世代の中で一番年上だった事もあり、よく菊達の世話をしてくれていたらしい。
「帝さん、可愛いものが好きなんですね。知りませんでした」
「菊も知らなかったのか?」
「ええ」
菊はにっこりと笑った。帝と違って菊はよく笑う。帝もたまにはこんな風に笑えば良いのに。
「実は私、引きこもってた時期があるんです。皆が腫物に触るみたいに私に接してきていた時でさえ、帝さんは気が向いたら私の所へ来なさいって。当時から帝さんは一人暮らししていましてね、彼の家の合鍵を頂いたんです。それでよく帝さんの家に入り浸っていたんですけど、可愛いものは見掛けませんでしたね。よほど隠したかったんでしょう」
それをこんな形で俺は知ってしまったのか。
よほど酷い顔をしていたのかもしれない。菊は苦笑いしながら大丈夫ですよと言ってくれた。
「帝さんきっとそんなに怒ってないと思います。ただ、どうしたら良いか分からなかっただけですよ。きっと」
「そうか?」
「そうですよ。私、この事は何も聞かなかった事にしますね。だからアーサーさんだけが知っているんです、帝さんの秘密」
頑張って、と菊はにっこり笑った。何をどう?とはとても聞けず、俺はそれに頷いた。
作品名:さみしさの後ろのほう 1~5 作家名:志乃