二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

未来のために 5

INDEX|1ページ/3ページ|

次のページ
 
未来のために 5


一年戦争終結から七年、その後もジオンの残党による叛乱は後を絶たず、それを制圧する為、連邦軍は“ティターンズ”を発足し、徹底的な残党討伐を始めた。
エリート集団であるティターンズはあらゆる権限を持っており、連邦軍内でその勢力を広げて行った。
しかし、ティターンズによる暴挙は連邦軍内に亀裂を生み、内部抗争が勃発しつつあった。

連絡船「テンプテーション」の船長、ブライト・ノアは、艦橋の窓から溜め息混じりに宇宙を見つめる。
一年戦争の終結後、一年ほどは英雄扱いされて広告塔として引っ張り回されたが、それが落ち着くと、ホワイトベースのクルー達は皆、軍上層部の命令により閑職を充てがわれた。艦長であったブライト・ノアもそれに漏れず、連絡船の船長として各コロニーを行き来するだけの毎日を送っていた。
そんな日々に嫌気がさしつつも、ブライトはある目的の為、退役せずに連邦軍に居続けた。
連絡船で各コロニーに入港するたび、戦後に帰還した兵士や、ジオン軍に捕虜となった兵士の情報を集め、その中に目的の人物がいないかどうかを確かめている。
軍に居なければ手に入らないこの情報を得る為、ブライトは軍人で在り続けていた。
今も、先日入港したコロニーで手に入れたリストに目を通していたが、そこにお目当ての人物が見当たらず、深い溜め息を吐きながらキャプテンシートに背中を預ける。
「またハズレか…」
ブライト・ノアが探し求めている人物は、一年戦争でホワイトベースに乗艦し、モビルスーツ“ガンダム”のパイロットをしていた少年、アムロ・レイだ。
ア・バオア・クーで唯一、一緒に帰還出来なかったクルー。
絶体絶命の状況下で、突然、脳裏にアムロの声が響いた。
このままだと全滅だと、艦を放棄し脱出するようにと伝えて来た。ニュータイプの素質のあるミライだけでなく、オールドタイプの自分にも届いた声。
後に聞くと、他のクルーも同じ様にアムロの声を聞いていた。
その声は、全てを透視しているかの様に戦況を伝え、また『次の銃撃が止んだら走り抜けられる』等と、未来を予知して皆を脱出用ランチへと導いた。
そのお陰で、クルーは全員無事に脱出ランチに辿り着くことが出来たのだ。
ただ一人、アムロ本人を除いて…。
ランチに現れないアムロに、セイラやミライが必死に呼び掛けたが、返事が返ってくる事は無く、爆発を続け燃え盛る要塞を…自分達はただ、見つめる事しか出来なかった。
あの絶望的な状況で、生き延びていられるとは到底思えなかったが、しばらくした後、ミライがボソリと呟いたのだ。
“アムロは生きているかもしれない…”と、
確証など何もないが、そんな気がすると。
その言葉はブライトに希望を与えた。
もしかしたら他の艦に救助されているかもしれない、もしくはジオン軍の捕虜として捕らえられているかもしれない。
いつか、自分達の元に帰って来てくれるかもしれないと…。
七年という月日が流れた今も、ブライトはその希望を捨てられずにいた。

「船長、まもなくグリーンノア1に到着します」
オペレーターの言葉に意識を現実に戻す。
このコロニーでもまた情報を集めなければ…、そう思いながら襟元を正してオペレーターに指示を出す。
「よし、入港準備に入れ」
「了解」


コロニーサイド7「グリーンノア1」。
かつて、アムロ・レイやハヤト・コバヤシら、ホワイトベースのクルーとなった者たちが暮らしていたコロニー。
…そして、ジオン軍のザクによる強襲により、アムロ・レイが初めてガンダムに搭乗した場所。
このコロニーはあの強襲で甚大な被害を受けたが、戦後に改修整備され、現在は「グリーンノア1」と名を変え、居住コロニーとして多くの人々が生活している。
入港後、ブライトがスペースポートの通路を歩いていると、少年が声を掛けてきた。
英雄、ブライト・ノア艦長のサインが欲しいと言われ、複雑な思いが込み上げる。
本当の英雄は自分などではなくアムロだ。彼がいなければ自分など、とうの昔に死んでいた。
しかし、そんな事を言える訳もなく。少し苦笑いでそれに応じた。
その少年の瞳を見た時、何故かアムロの顔が重なった。
ほんの一瞬だったが、少年に昔のアムロを見た気がして、思わず少年の顔に見入ってしまった。
カミーユ・ビダンと名乗ったその少年は、そんな自分を不思議そうに見上げていたが、そのまま礼を述べると立ち去って行った。
「アムロの事ばかり考えていたからかな…。少し生意気な感じの瞳がアムロに重なったか…」
小さく溜め息を吐くと、ブライトは床に置いたカバンを持ち直し、そのままポートを後にした。
その少年との出逢いが、後に自身の運命をも左右する事になるとは思いもせずに…。

その後、ブライトはガンダムMkーⅡを巡るティターンズとエゥーゴの戦闘に巻き込まれ、エゥーゴに参加する事となる。



「レイ!クワトロ大尉達がティターンズの新型モビルスーツの奪取に成功したらしいぞ!それも二機!もうすぐ着艦するから受け入れ準備に入れ!」
反連邦組織エゥーゴの旗艦“アーガマ”のドックで、メカニックチーフのアストナージ・メソッドが同じくメカニックのレイ・ヴェガに声を掛ける。
「それ本当か!?アストナージ」
「ああ、ティターンズの新型、RX-178ガンダムMk-Ⅱだ!」
『…ガンダム…?』
アストナージが告げたその名前に、アムロの動きが止まる。
『なんだ…この感覚…“ガンダム”…この名前を聞くと…胸が苦しい…』
つなぎの胸元を握りしめ、アムロは呆然と立ち尽くす。
「どうした?レイ」
「あ、いえ…何でも…。準備します」
「おうっ、頼むぞ」
その場を立ち去るアムロに、アストナージが首を傾げる。
「なんだ?レイの奴、新型なんて聞いたら、喜んで食いつくと思ったのに」


少しすると、アポリーとロベルトのリックディアスに両脇を抱えられた状態で、ガンダムMk-Ⅱの二号機がアーガマのモビルスーツデッキに降ろされた。
そして、クワトロ大尉のリックディアスと共にもう一機の一号機が着艦した。
その一号機からは、私服の少年が降りてくる。
「民間人か!?」
アストナージが驚きの声を上げるが、隣のアムロはそれに反応する事もなく、ただガンダムMk-Ⅱを見つめる。
『何だ…この機体…見たことがある…。印象は少し違うけど…オレはこの機体を知ってる!』
「レイ?どうした?お前、さっきからちょっとおかしいぞ?体調が悪いなら休め」
驚愕の表情を浮かべるアムロに、アストナージが心配気に声を掛ける。
「あ…いや、ごめん。大丈夫…」
「そうか?」
「うん、すまない」
まだ少し顔色の悪いアムロを気遣いながらも、アストナージが整備の指示をメカニック達に出していく。
そして、アムロがアポリー達のリックディアスをドックまで誘導しようとした時、ガンダムMk-Ⅱ二号機から、少女と連邦の制服を着た男が降りてきた。
その男を見た瞬間、アムロの頭の奥がツキリと痛む。
『何?』
痛む頭を押さえつつ、アムロは男を見つめる。
連邦の制服を着た男、ブライト・ノア。
作品名:未来のために 5 作家名:koyuho