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未来のために 5

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その考えや、ブレックス准将には大いに賛同できたが、ここに赤い彗星がいるとなると話は別だ。
元ジオンのパイロット、シャア・アズナブル大佐。ジオン・ダイクンの息子で、セイラ・マスの兄。彼が、両親の死に対する復讐の為、ジオンに身を置いていたと、後にセイラから聞いた。あの時、要塞を脱出しようとしていたキシリア・ザビを討ったのは彼であったのかもしれないと、セイラは言っていた。
そんな彼が何故、今、偽名を使い連邦に居る?何か目的があるはずだ。
それにアムロ、記憶を失っているとはいえ、仇敵であるアムロを何故生かし、側に置いている?シャアは一体何を考えているんだ?
そして、ブライトは隣に立つ少年、カミーユ・ビダンに視線を向ける。
ガンダムMk-Ⅱを乗りこなした少年。その姿にかつてのアムロを重ねた。
この少年も、もしかしたらアムロ同様ニュータイプかもしれない。

そんなブライトを、ロベルトが目に動揺を浮かべて見つめる。
『ホワイトベースの元艦長…ブライト・ノア。さっきドックでレイに話し掛けていた…。レイがアムロ・レイだと気付いたか…!?』
動揺するロベルトを、アポリーが心配気に見つめていた。


張り詰めた雰囲気の艦橋に、ドックのアストナージから通信が入る。
〈アストナージです。すみませんがそちらにロベルト中尉は居ますか?〉
突然名前を呼ばれ、ロベルトが慌てて通信に答える。
「どうした?アストナージ」
〈実は、レイが倒れたんです。医務室に運び込んだのでそちらに行ってやって下さい〉
「倒れた!?どうした?何があったんだ!?」
〈それがよく分からないんです。整備の為にMk-Ⅱのコックピットに入った途端、頭痛を訴えて、そのまま気を失っちまったんです。その前も少し様子がおかしかったんで、元々体調が悪かったかもしれませんが…〉
「分かった!直ぐに行く!」
通信を切ると、ロベルトはブレックス等に軽く会釈をして急いでその場を立ち去った。
そんなロベルトを、アポリー、クワトロ、そしてブライトが心配気に見送る。
クワトロも直ぐに向かいたい様に見えたが、ブレックス准将とブライトの手前、後を追う事は出来ず、拳をギュッと握りめてブレックスへと向き直った。


医務室では、アムロがベッドに蒼い顔をして横になっている。
「ドクター、レイはどうしたんですか?」
医局長のハサン医師にロベルトが詰め寄る。
「分からん。CTを撮って確認したが特に異常はない」
「でも!」
ハサンは少し思案してロベルトを見つめる。
「ロベルト中尉。君はレイの素性を知っているのか?」
突然のハサンの言葉に、ロベルトが驚いて顔を上げる。
「ドクター?」
ハサンは七年前、アムロの手術をした医師だ。アムロの素性や事情もシャアから聞いて、ある程度知っている。
そして、ロベルトもアムロの素性を知っていた。
「知っているんだな?」
ハサンの問いに、ロベルトが戸惑いながらもコクリと頷く。
「ならば、言おう。もしかしたらガンダムMk-Ⅱに触れた事で記憶を思い出し掛けているのかもしれん。それで脳が混乱して意識を失った可能性がある」
「記憶を…?」
「あくまで推測だ。しかし、あの機体は後継機とは言え、レイにとっては記憶を呼び戻すに足る存在だろう?」
RX-178ガンダムMk-Ⅱ、連邦の白い悪魔の搭乗機RX-78ガンダムの後継機。
カラーリングこそ黒いが、その姿は、初代の機体を彷彿とさせるには充分すぎるものだった。
ロベルトは、苦痛の表情を浮かべながらベッドで眠るアムロを見つめ、唇を噛み締めた。

to be continued...



作品名:未来のために 5 作家名:koyuho