二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」
しょうきち
しょうきち
novelistID. 58099
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

冒険の書をあなたに2

INDEX|213ページ/213ページ|

前のページ
 

 禍々しいオーラを身体中から放つデズモンは、意識を失っているようにも見える。
 乗っ取られたか、既に亡いのか、それとも────と頭の中でいくつかの考察を始めたルヴァだったが、デズモンの目の前に取り残されたままのマルセルに近づいていく。
 マルセルは怯えて腰を抜かしながらも、麻袋と世界樹の苗木をしっかりと抱き締める。
「だ、大丈夫だからね……、ぼくが守ってあげるから」
 声の震えを誤魔化せなかったが、ぎゅうと抱き締めた麻袋から声がする。
「出してー」
 スラリンの呑気な声に、少しだけ緊張が解れた。
 そうだった、彼はとても強いスライムなんだった────すぐに袋の口を緩めると、中からぴょこんとスラリンが飛び出してくる。
「ホミレイをよろしくね」
 スラリンは不敵な笑みを浮かべ、マルセルとデズモンの間に陣取る。
 麻袋に入っているよう命じたのは、他ならぬリュカである。戦闘中どうしても手薄になることを鑑みて、非戦闘員のマルセルとリュミエール、そして生き残りホイミスライム、ホミレイの護衛役だ。
 そういえばスラリンだけ姿が見当たらなかったと思っていたルヴァは、どうやら誰かがこの事態をも先読みして先手を打っていたと知り、口角を持ち上げた。

 剣を構えたオスカーはルヴァの隣へ並び、横目で視線を投げた。
「あれ──どう思う?」
 聖地随一の頭脳の目には、これがどう映っているのか────オスカーの関心はそっくり問いとなって表れた。
「ジェリーマンでないのは明らかになりましたが……正直に言って、同じ人のようには、とても……」
 言葉の最後を濁しながら、ルヴァは僅かに首を傾げている。
 イゴーともまた違う禍々しい雰囲気に、その正体を掴み切れないでいるルヴァ。僅かに歯噛みする様子を見たオスカーも納得した様子で首肯する。
「そうだな。体だけ使われている様子に見える」

「どウして、アイつダけ」

 デズモンが口を開く度、黒い煙が口から薄く漏れ出ていた。
 聞き取れない程の小声でブツブツと何か言っていたが、幾人かはその黒い煙に気付く。
 気付いたうちの一人、勇者ソロが目を眇めて片眉を持ち上げた。
「……瘴気か……?」
 誰にともなく呟かれた言葉に答える者はなく、ふとデズモンの上空に影がさす。
 紫の光を纏った剣が素早く頭上から打ち込まれた────ピサロだ。
「アァァァァァァァア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!」
 濁った絶叫が響き渡り、デズモンの頭頂から地面スレスレまで、縦一文字に走る光。
 血飛沫の代わりに口から出ていた黒煙がぶわりと溢れ出て、一同がどよめいた。
 瘴気から主を守ろうとリュカの前に立ちはだかったバトラーが、鼻の頭に皺を寄せた。鋭い牙を剥き、威嚇しているようにも見える口から、低い声が発された。
「……既に人ならざるものか」
「そのようだね。スラリンの指摘通り随分と若いままだから、変だとは思ってたけど」
 バトラーの影から引き続き様子を窺うリュカがそう答えを返し、バトラーが小さく頷く。
「ピエールよ、あれが何か言っているが聞き取れているか?」
 デズモンを睨み据えたまま、バトラーがピエールへと声をかけた。スライムナイトは人間や多くの魔物たちよりも聴力に優れた種族であるため、ごく小さな音でも聞き取れるからだ。
「ええ……妙なことを口走っていますね」
 ピサロの攻撃によって真っ二つに裂かれたデズモンは、そのまましゅうしゅうと瘴気を放ちながら立っていた。
 リュカが横目でちらりとピエールを見る。
「なんて言ってる?」
「どうしてあいつだけ生きているのか、と」
 不可解だと言いたげに、リュカの端正な顔が歪む。
「何だそれ……」
 ピエールの深海色の瞳も、怪訝に眇められる。
「分かりません。ですが、とにかくそればかり繰り返しています」

「ベルはモウいナイの二」
 幼児を思わせる、舌足らずの声がした────二つに裂かれたデズモンの唇が、もごもごと動いている。
 イゴーでも赤子でもない、先程の濁った咆哮とも明らかに違う声色。一同に緊張が走った。

<続く>