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しょうきち
しょうきち
novelistID. 58099
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冒険の書をあなたに2

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「かしこまりました。皆さまももうお気づきでしょうが、現在聖地では幾つかの異変に見舞われておりました。まずは図書館に現れた魔物、こちらはルヴァが対処済みですわね」
 ロザリアの青紫の瞳がルヴァへと向けられ、それへ頷きを返したルヴァが紐掛けされたオロバスを手に取り話し出す。
「この魔物はポピーたちの世界で普及している呪文を使っていましたがお二人の世界では存在しない種だそうでして、関連についてはいまだ謎が残っていますが、とりあえずオロバスと名付けて私の手元に置いています」
 おとなしく紐掛けされたままのオロバスを膝に乗せ、ルヴァは恋人の姿を横目でちらと盗み見る。ちょうど向こうも同じく視線を向けていたらしくかちりと視線が絡み合い、思わず頬が緩んだ。
 その間にロザリアがしなやかな動きで書類を幾枚か抜き出し、それへ視線を落としながら言葉を紡ぐ。
「招かざる客、という意味ではクラヴィスのところへも別のものが現れたそうですけれど」
 それまで目を伏せていたクラヴィスがほんの少し顔を上げて、ロザリアへと視線を流した。
「ああ……先日から水晶球に色々映り込んではいるが、前回の御前会議の直前に出て来たものたち────あれらは、恐らくリュミエールが呼び寄せたものだ」
 クラヴィスの言葉にリュミエールがはっとした顔つきで彼へ言葉を返す。
「わ、わたくしが……ですか、クラヴィス様」
 いつもと変わらないクラヴィスの表情に、戸惑いを見せるリュミエール。
「竪琴の周囲に異形のものたちが寄り集まっているのが視えたのでな……」
 御前会議の前、クラヴィスが光を放つ水晶球を微動だにせず眺め入っていたことを思い返し、リュミエールはあのときの意味不明な言葉の意味が分かり、霧が晴れたような気持ちになった。
「それでわたくしにハープを鳴らすよう仰ったのですか」
「そうだ。少し前から、私の水晶球には度々似たような……一点の光と、その周囲を取り囲む七つの強い光が視えている。だがその光が失われる間際に映るものは様々だ」
 そこで言葉を区切ったクラヴィスの視線が、ゼフェルへと向いた。じっと注がれるまなざしを受けて、ゼフェルが困惑しきった表情を浮かべている。
「……以前には、長い銀髪で赤い瞳の男と、花桃のような髪色の女が映っていたぞ」
「!」
 クラヴィスの言葉にオリヴィエとゼフェルの顔色が変わり、二人はどちらからともなく視線を合わせた。
「おい、それって……!」
 口を開きかけたゼフェルより少し早く、報告書を掲げたロザリアが良く通る声で言い放つ。
「あなたがたの夢に出て来た二人、ですわね」
 オリヴィエがやれやれといったふうで肩を竦める。
「そ。なーんか穏やかじゃない雰囲気の夢見ちゃったんだよねー、この私がだよ」
 声色に僅かな緊張が乗ったのを誤魔化すように、オリヴィエはティーカップに手を伸ばす。それへちらりと一瞥をくれたゼフェルがぼそりと声を出した。
「銀髪の男がピサロ、女のほうがロザリー……だったよな」
 オリヴィエが小さく頷いた以外、その場の誰もがなんとなく黙り込む。遠くで小鳥たちのさえずりが聞こえる中、ロザリアがこほんと小さく咳払いをして口を開こうとした矢先、しわがれた声がそれを遮る。
「……少し、よろしいですかな」
 一同の視線が一斉に声の持ち主であるマーリンへと注がれる。アンジェリークの翠の瞳が弧を描き、鈴の音を思わせる声がすぐに続いた。
「どうぞ、マーリンさん」
 アンジェリークの声に丁寧に頭を下げ、マーリンが話し出す。
「わしらの時代より遡ること数百年前、勇者とその仲間たちに討たれた魔族の若者の名がピサロだと、古い文献にありましたぞ」
 マーリンの言葉に、ルヴァは何か引っ掛かりを感じた。あちこちに散らばった点と点を結ぶ線がうっすらと見え始めた気配に、思わず声を上げる。
「女王陛下、今のお話で確認したいことがあります。オロバスを解放したいのですが」
 いつものようににっこりと笑んだまま、アンジェリークがひとつ頷く。
 その笑顔に安堵を覚えながら、ルヴァは早速紐を解いてオロバスへと話しかけた。
「オロバス、あなたに質問します」
「なんだー?」
 ふわりと浮遊した後、嬉々としてルヴァの手の上へ着地したオロバスが頁を開く。
「ピサロという魔族について、何か知っていますか」
「ぴさろ。んー、魔族、ピサロ…………これかなー」
 オロバスは浮かび上がってきた文字を淡々と朗読し始める。
「後にデスピサロと名乗り、進化の秘法を用いて人間を滅ぼそうとした魔族の王。天空の勇者率いる導かれしものたちとの戦いに敗れた後、消息は不明」
 オロバスの説明を聞き、さっと報告書に目を走らせたロザリアの顔にも緊張の色が表れた。
「……二人が見た夢の内容と合致しますわね、陛下」
「そうみたいね」
 小声でそう話し合うアンジェリークとロザリアをよそに、ルヴァは真剣な表情でメモを取り、更に問いかけていく。
「もうひとつ教えてください。デスピサロを倒したという、天空の勇者について」
 ルヴァの質問に答えようと、オロバスがぱらぱらと頁をめくる。
「んっとー……予言通りに地獄の帝王エスタークを倒し、その後に続く巨悪を仲間たちと共に討ち滅ぼして世界に安寧をもたらしたとされる。その後の消息は不明」
 それまで黙って話を聞いていたポピーがはっと顔を上げ、大きな声を出した。
「エスターク!?」
 近くに座っていたマルセルがポピーへと視線を流す。
「知ってるの?」
 マルセルの問いかけに、ポピーは空色の瞳を輝かせて言葉を紡ぐ。
「はい、魔界で戦いました。でも戦った後にすぐ寝ちゃうんです。そんな前からいたんだ……」
 すごい長生き、と呟いたポピーがマーリンと顔を見合わせて何とも言えない顔つきをしていた。一方ルヴァは顎に指をあてがい考え込む仕草でゆっくりと口を開く。
「ということは、数百年前にも勇者たちと戦い、そのままあなたがたの時代まで眠りについていたってことなんですかねー。それともエスタークという種族がいるってことなんでしょうか。あーそういえばポピー、ティミーも確か天空の勇者でしたよね?」
 ルヴァの声に頷きを返し、ポピーが話を続ける。
「そうです。天空の血筋とエルヘブンの血筋が合わさって勇者が生まれるって言われてました」
 ポピーの言葉にランディとマルセルが笑みを浮かべる。
「なんか天空の勇者って、かっこいい響きだなー」
「ねー、なんか強そうだよね!」
 無邪気な二人の言葉に、ポピーは嬉しそうに顔を綻ばせた。
 ルヴァは何か口の中でとても小さく呟いてそのまま考え込み、オロバスへと視線を向けた。
「オロバス。先程勇者と導かれしものたちの話が出ましたが、彼らは総勢で何人いたんですか」
 ふわふわと浮かんでいたオロバスが再びルヴァの手に乗り、ぱらりと頁がめくれた。
「えっとー、バトランドの王宮戦士ライアン、サントハイム国の王女アリーナとその従者ブライとクリフト、武器商人トルネコ、モンバーバラの姉妹マーニャとミネアが勇者と共に戦った、とあるぞ」
 オロバスが読み上げた名を全て書き取ったところでルヴァは目を見開き、クラヴィスへと視線を投げた。