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しょうきち
しょうきち
novelistID. 58099
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冒険の書をあなたに2

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 木々が揺れてざわめき、ポピーの声が響く────決して大声ではないのに良く通るその声には、一切の濁りがなかった。
「わたしの友────プロートン、トリトン、ペンプトン。太陽の右手を取れ」
 来た時と同じように右の手のひらが赤く光を放つ。そして周囲にいつの間にか置かれていたルラムーン草が一つ飛ばしに赤い炎を上げる。
 その様子を興味深げにじっと観察していたルヴァだけは、これが古代の言葉であることを理解していた。
(置かれた印は全部で六ケ所。プロートンは一番目、トリトンは三番目、ペンプトンは五番目……とすると、次は)
「デウテロン、テタルトン、ヘクトン。月の左手を取れ」
 ポピーの詠唱に応えるように、今度は左手が青く光った。そして二番目、四番目、六番目の干し草がぼうと青く燃え上がる。
 周囲の木々のざわめきは嵐さながらに強まり始めた。その中心にいるポピーの魔力が引き起こしているのだと、この場を見たものならば恐らく気づくだろう。
 ルヴァはターバンを片手で押さえながら、ちらとアンジェリークに視線を向けた。
 胸の前で両手を組み合わせ、目を閉じている────すぐにアンジェリークの背に翼が現れて、全身が淡い金色の光を放つ。
 守護聖たちはどんどん強まる風力に負けぬよう、めいめいに服や髪などを押さえて様子を見ている。
「わたしはミデンなり。古き友よ、メソンの地より我らは帰還せり」
 空は青く晴れ渡っているにも関わらず轟々と強風が吹き荒れて渦を巻く中、その中心部に毅然と立ったポピーの両手からは、赤と青の光が燦然と輝いていた。
 吹き飛ばされていきそうになったオロバスを慌てて懐に避難させ、ルヴァは詠唱に耳を澄ませていた。
(ミデンはゼロ、そしてメソンとは中央を意味しますが、ここ聖地のことですかね……後でゆっくり聞いてみましょう)
 アンジェリークのサクリアも関わっているらしく、赤、青、そして黄金の光の氾濫とも言える眩しさに、居合わせたものはもはや目を瞑らざるを得ない。
「時の萌芽よ、蔓となり伸び行きて番人に伝えよ!────ルーラ!」
 詠唱が終わりを告げると、六つの炎が天へ向けて真っ直ぐに燃え上がった。
 それは来たときよりも遥かに大きな火柱となって辺りを包み込み、その炎が立ち消えた後に残されたものは、何一つなかった。