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intermezzo ~パッサウ再会篇8

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「あの日は…今にして思うと何か虫が知らせたのかもしれない。弾圧にあって指名手配の目をかいくぐり、俺はアパートに着替えを取りに戻ったんだ。アパートの前まで来ると、俺たちの部屋の窓が開いて、カーテンが夕風にはためいているのが目に飛び込んできた。まさか…?でも…俺は半信半疑ながら大急ぎで部屋を目指した。部屋の前の、俺たち家族が合カギを隠している壁板が僅かに浮き上がっていた。それで…俺はユリウスが戻ってきた事を確信した。部屋に入ると…長椅子で大きなお腹をしたこいつがすやすやと寝息を立てていた。俺の…俺の天使がかえってきた。ヒンヤリとした夕風の肌寒さと、俺の気配に目を覚ましたこいつの身体を強く抱きしめた。夢なんかじゃない本当にこうして俺の腕の中にいるこいつの存在を確かめるように抱きしめた。こいつの細い肩を、俺の涙が濡らしていった」

「あの日の夕方、夕闇に紛れるように、ファーターが、ぼくを迎えに来てくれた。「ムッターが無事、帰って来た。だから家へ帰ろう」と。ムッターもファーターも…無事生きていた。泣きそうな顔になった僕の肩を、ガリーナが優しく叩いてくれて、「よく頑張ったね」と言ってくれた。その言葉に…僕は泣けて…泣けて泣けて、ガリーナの胸の中でまたワンワン泣いてしまって、しまいにはファーターに呆れられてしまった。…男が女の前でわーわー泣くもんじゃないってね。そうして泣いている僕の頭を大きな手でくしゃくしゃと撫でてくれて、僕は荷物をまとめて、ガリーナと…それからやはり無事だったズボフスキーさんに今までお世話になったお礼を言って、それから半年間僕をお兄ちゃんのように慕ってくれたエレーナに別れを告げると、半年前にファーターと来た道を二人で戻って行った。家に帰って半年ぶりに抱き合ったムッターは何だか半年前よりも小さくなったように思えて…その時に、ぼくがムッターよりも大きくなって…いつの間にムッターの背を追い越していたことに気がついた。そんなぼくの手を、ムッターは両手で包み込んで、ファーターに似た大好きな大きな手と言ってくれた。そして僕の喉元に触れ、声変わりの始まった僕の成長を喜んでくれて、素敵な男性になってね…と言ってくれた。僕は…ムッターを守れる立派な男になろうとその時に改めて心に決めたんだ」

「家族が再び揃って僕は順調に出産の日を迎えた。ミーチャの時と同様安産で、ぼくは可愛い女の子のお母さんになった。生まれた愛らしい女の子は…敬愛する義姉の名前を取ってアルラウネと名付けられた」

そう言ってユリウスは傍のネッタの頭を、頰を愛おしげにそっと撫でた。