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星の糸 もう一人のウルトラマンACE (1)

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私は彼を深く愛している。彼と一緒ならどんな死にも耐えられる。しかし、一緒でなければ、たとえ生きていても生きていることにはならない。

ジョン・ミルトン

第一話 復讐のフルムーン



生きるって平和じゃないよ。
誰もが心の奥底に誰とも分かち合えない孤独な沼を抱えているの。それを分かってくれる人と出逢いたくて生きているの。できれば自分の愛する人がそうであって欲しいと願いながら…
私だってそうよ星司さん。
あなたの背中は、まずウルトラマンエースとして地球を守る使命を全うしようとそのことばかり語るけれど、私だって人間だもの、女の子だもの、好きな人には自分の全てを受け入れて欲しい。
私は感じていたのかもしれない。初めて会ったあの日のあの瞬間からあなたは私の運命の人だって、探していた引き裂かれたもう一つの魂に出逢えたんだって。私の中の魂が震えたのよ。だからあの日ベロクロンにタンクローリーで特攻したあなたを追いかけたの。まるで理性を超えた何かに導かれるように必死に、目の前にある自分の任務を人に押し付けてまでも。星司さんはそんな私をどう思っていたのかしら?私を単なるウルトラマンエースとして命を共有するだけのパートナーと見ていたなら、正義感の強いあなたは私を真っ向から非難して軽蔑していたかもしれない。けどあなたは私を同じ運命を共有するパートナーとしてそのことには触れず受け入れた。そう思ったら少しは希望を持てるのかな。

「今日から俺たちは運命共同体ってわけか…」

ベロクロンのミサイルや火炎攻撃に襲われ、まるで空襲を受けたかのような福山の街の瓦礫から起き上がり手を差し伸べてくれたあなたは笑顔でそう言った。その笑顔があまりに眩しくて私は一瞬であなたに恋をした。
そうね、私たちは運命共同体ね。それだけは確かだわ。運命共同体はどんな時も運命を共にする同志。そんなこと分かってるよ。でも私は、もっと深いところであなたと繋がりたい、私もあなたの全てを受け入れるから、あなたにも私の全てを受け入れて欲しい。
愛してほしいの、同志としての友情ではなく一人の女として。
好きだと言って。
愛してると言って…そんなこと言ったら星司さんあなたはどんな顔をするだろう。今の二人の関係も壊れてしまうの?
バカよね、笑っちゃうわよね、そんな世間並みなことにうつつを抜かしている場合じゃないよね。私たちはウルトラマンエースとして地球を守ることに専念すべきなのだから。

ただ私は思うの。
星司さん、あなたは燦々と降り注ぐ太陽のよう。その背中で精一杯の正義と勇気を皆の前で示そうと戦ってる。それでも全ての人がそれを分かって称えてくれるわけじゃない。私はそんなあなたの唯一の理解者として静かに見守りフォローする月。熱い血潮のおもむくままにがむしゃらに正義を追い求めるあなたを私は包み込む愛になりたい。太陽と月がなければ存在しえない地球のように、平和だって正義と愛がなければ存在しえない。M78星雲から遣わされた平和の使者であるウルトラマンエースだって正義と愛から生まれる光の戦士なんだわ。だから私たちは二人で一人のウルトラマンエースなんだと思う。もっとも私の愛は聖母マリアのような万民に向けられた無償の愛みたいな壮大な愛ではなく、星司さん個人に向けられた純粋な恋慕に過ぎないけれど…
星司さん私には分からないの。
私たちは運命共同体の同志という特別な縁で繋がった仲間という一線をこれからも引き続けなければならないの?
それがウルトラマンエースとして地球を守るためになるの?
私、いつも思ってた。あなたはともかく私がウルトラマンエースに選ばれた理由は何なのか?私は私の意志でベロクロンに踏み潰されたタンクローリーの爆風の犠牲になったようなものなのにね。私がウルトラマンエースとして地球を脅かす侵略者や超獣と戦っているのはそれが与えられた使命というのもあるけれど、それにもまして星司さんといつも一緒にいたいから。あなたと共に地球を守る使命を全うすることが嬉しいから。そしてあなたを愛しているから。あなたと一緒ならどんな受難、たとえそれが死でも耐えられる。そんな私がウルトラマンエースであることを許されるなら私はあなたに恋をしてもいいんだよね。私たちが愛し合うことでウルトラマンエースの力は増しこそすれ削がれたりはしないような気がするわ…なんてね。  

私はいつから欲張りになったのかしら。出会ったばかりの頃は「一緒に東京へ行ってTACに入ろう」と誘って貰えただけで嬉しかったな。福山から東京へ発つ日、あなたは私に「運命共同体だから」と言って黄色のスカーフをくれたよね、あれは私の一番の宝物よ。東京へ行く車の中で私たちは何を話し合ったっけ。二人が同じ誕生日だってこと。私の両親や妹のこと。学生時代のこと。あなたの父親があなたが生まれて間もなく亡くなったというのは後から聞いたけれどそういえば星司さんはあまり家庭の話をしなかったね。
あなたは特に気にもしていないかもしれないけどあなたが私を気にかけてくれる、心配してくれるだけで私はとても嬉しかった、心強かった。あなたが傍にいてくれたから超獣やヤプールに立ち向かう恐怖も感じなかったのかもしれない。本当の私は特別に人間的に秀でたものなど何もないもの。だからかな不安なのよ。いつの日か私よりずっと魅力的な女性があなたの前に現われてあなたに好意を持ってしまったら…星司さん、それでも私たちは運命共同体の同志でいられるのかしら?星司さんにとっては運命共同体はあくまでも同志としての友情だから、他の女性に心を奪われても構わないと思ってるの?
私ちょっとだけ疑ってしまったの。この間のオリオン星人ミチルの事件であなたが私の言うことを信じてくれなかったから…あなたがミチルを懸命に庇おうとしたから…私はミチルの行動のありのままを言っただけなのにあなたは私がミチルを最初から偏見の目で見てると怒ったよね。でもそれは普段のあなたの正義とは違って見えた。私はいつもあなたの味方だったのに少しだけ傷ついた。もちろんあの時、ミチルの仲間のオリオン星人によってピラミットの上の十字架に磔にされた私を、負傷した身でありながら決死の覚悟でタックアローに乗り込み、ピラミットの発する怪光線で撃墜されながらも飛び降りて助けに来てくれたあなたの心根は信じたい、信じたいけれど……それでもそれをどこまで解釈していいのか今の私には分からないの。

運命共同体…不思議な言葉ね、私は最初友情はおろか恋愛すら超える大きな魂の絆だと思った。エースキラーとバラバと戦ったあの運命の七夕の誕生日までは。

「私たちは一体何なのかしら?」