星の糸 もう一人のウルトラマンACE (1)
副隊長格でかつて婚約者をメトロン星人に殺された山中隊員が複雑そうな面持ちで言った。
皆が小鳥遊涼平の話を信じ切っているように思えて私の頭は真っ白になった。小鳥遊涼平は満足しているというような表情で「大丈夫ですよ。いきなり言われて信じろっていう方が確かに無理ですよね。時間をかけて分かってくれればいいんですから」とその場を収めようとした。
「もういい!分かってくれないなら証明するまでだ。行くぞ夕子!」
星司さんは私の手を引くと前方にあったタックパンサーに乗せ走り出した。
「何なんだ、みんなあいつの言いなりかよ…」
「今に始まったことじゃないわ。今までだってみんなに分かってもらえなかったことはいっぱいあったじゃない…ただすぐに誤解は解けたけど」
私の頰に生温かいものが滴り落ちた。みんな私が小鳥遊涼平の言ったヤハウェ星のプリンセスだと思ってるんだ。そして小鳥遊涼平と心一つに戦って悪のテロリストたちを倒し、ヤハウェ星に帰るべきだと。私はそんなことは一ミリたりとも望んでないのにどうして知らないところで運命が決められなくちゃならないの。私の幸せなんてどうだっていいって言うの。
「夕子…離さないって言ったろ。たとえ君の味方が俺一人でも、俺は死んでもあいつに君を渡さない!」
「星司さん…一緒よ、もしも死ぬ時は。だって私たちは運命共同体なのだから」
「夕子…」
星司さんはタックパンサーを人気のない路肩に止めると戦闘用のヘルメットを脱いだので、私も慌ててヘルメットを脱いだ。星司さんは私の顔を両手で持ち上げ私の目を見つめた。
「畜生…今すぐにでも結婚できたらな…」
「結婚?」
「そう結婚だよ、結婚して子どもができたらあいつだって諦めるかもしれない…だけど今の俺たちには許されない。ウルトラマンエースとして戦う以上それはあっちゃいけないんだよな」
星司さんは私の涙を拭うとその口を口で塞いだ。そしてゆっくりと舌と舌を絡めた。ねえ星司さん…分かってる?私たち二人ぼっちの世界に落ちてしまったみたいだよ。二人だけの孤独に…私たちの愛はどうして誰にも祝福してもらえないの…私だって普通の女の子として好きな人と幸せになりたい、それだけなのに。
[第一話 復讐のフルムーン/終わり]
作品名:星の糸 もう一人のウルトラマンACE (1) 作家名:Savarog