未来のために 9
最期に、ロベルトから伝わった言葉が頭に響く。
「…嘘…だろ…こんな…こんな…」
アムロの瞳から、ポタリと雫が落ちる。
それは後から後から溢れ出し、アムロの頬を濡らしていく。
「嘘だ…兄さん!」
一瞬前の光景が、フラッシュバックしてアムロの目の前に映し出される。
リックディアスのコックピットに吸い込まれていくビームサーベル。閃光を放って燃え上がり、砕け散る機体。
そして、その光景に別のものが重なる。
赤いゲルググを庇うように飛び出してきた緑色のモビルアーマー。褐色の肌に黒い髪の少女。
そのモビルアーマーに突き刺さるビームサーベル。それは、アムロの乗る機体が握っていた。
『そうだ、自分が、この手で突き刺した』
赤い彗星を庇った少女を、自分がこの手で殺してしまった。
自分は取り返しのつかない事をしてしまったのだと思った瞬間、走馬燈のように過去の光景が目の前を通り過ぎて行く。
白い戦艦、白いモビルスーツ、ブライト艦長、ミライさん、ハヤト、カイさん、フラウ、セイラさん、そして…赤い彗星のシャア!
心の奥底に眠っていた記憶が、一気に蘇る。
ア・バオア・クーで、ガンダムのコックピットに座ってみんなを透視て、声を掛けた。
セイラさんがランチに合流したのを見届けてホッとしたら、目の前にジオンの兵士がいた。流石にもう終わりだと思ったら…何故かその兵士は自分を心配気に見つめ、励ましてくれた。
そうだ、あれは兄さんだった。兄さんが、僕を助けてくれたんだ。
でも、その兄さんは、たった今、目の前で僕を庇って死んでしまった。
そう、死んでしまったんだ。
もう会う事が出来ない。そう思った瞬間、アムロの体から力が抜け、意識が遠ざかる。
ガクリとその場に崩れ落ち、床へと座り込んでしまう。
ロベルトを失ったショックと、一気に記憶が
戻ったショックで、アムロの脳はオーバーヒートを起こしてしまったのだ。
ズキズキと痛む頭を抱えながら、アムロは心の中で叫ぶ。
『嫌だよ兄さん!ずっと一緒に居てくれるって言ったじゃないか!』
そして、目の前が真っ暗になり、アムロはそのまま意識を手放した。
to be continued...