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未来のために 11

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未来のために 11


シャア達が宇宙に還ってから二ヶ月程が過ぎた。その間、アムロは思い出した記憶の一つ一つを何度も振り返り、自分のシャアに対する想いを考える。けれど、その度にララァの死が頭を過ぎり、それ以上は考えられなくなってしまう。
「はぁ…」
アムロは溜め息を一つ吐くと、ベッドの上に寝転がる。
「俺は…どうしたらいいんだ…」
こんな時、いつもなら兄に相談していた。しかし、その兄はもういない。
ララァの様に自分を庇って死んでしまった。
「兄さん…会いたいよ…いつもみたいに俺を助けて…大丈夫だって抱き締めてよ…」
兄の笑顔を思い出し、その笑顔にはもう会えない事に涙が溢れ出す。
兄のお陰で命は助かったが、大切な人の命を犠牲にしてまで生き残ってしまった事に、どうにもならない罪悪感と切なさが心に込み上げる。
遺されるくらいならば一緒に死にたかった。けれど、そう思う事は自分を庇ってくれた兄に対する裏切りにも思えて、更に自分を追い詰めた。
「…シャアも…あの時…こんな想いをしていたんだろうか…」
シャアもまた、自分の為にララァを失った。
アムロの脳裏にシャアと過ごした日々が蘇る。とても、優しい人だった。そんな人が、ララァを失って心を痛めない筈がない…。
けれど、だからこそ、何故ララァを戦争に巻き込んだのだと、怒りが込み上げる…。
結局、何度考えても、アムロは自分の心に答えを見い出す事が出来なかった。

数日後、補給の為に訪れたホンコンシティで、アムロは懐かしい人に再会する。
「ミライさん!?」
小さな子供を二人連れた、かつてのホワイトベースの操舵手、ミライ・ヤシマだ。
ブライトがエゥーゴに参加した事により、ティターンズに拘束される事を危惧してジャブローの自宅を引き払い、宇宙に上がろうと、シャトルの裏チケットを手に入れる為ホンコンシティに来ていたのだ。
「アムロ!?」
ミライは信じられないといった顔をしてアムロの名を呼び、次の瞬間にはみるみるその瞳に涙が溢れ、雫となって頬を伝い落ちる。
「本当にアムロなのね…やっぱり生きて…生きていてくれたのね…」
「ミライさん…」
「今どうしているの?何故ここに?」
ミライの問いに、長くなるからと後日ミライが滞在するコーラルオリエンタル号で会う約束をした。


「ミライさん、お久しぶりです。ご心配をお掛けしてすみませんでした」
「何言ってるの!貴方が無事で本当に良かった!」
そっと抱き締めてくれるミライの温もりに、遠い昔母に抱き締めて貰った事を思い出す。
アムロは約束通りミライの元を訪れ、今までの経緯を全て話した。
「そんな事があったのね…」
シャアとそういう関係だった事までは話さなかったが、ミライは何か感じ取ったらしい。
少し間を置いて、優しく問いかけてくれた。
「アムロ、貴方、今とても大切な人がいるのではなくて?そして、その人との事に凄く悩んでる」
「…っ!?」
「記憶を失っていた間の“レイ”も“アムロ”も同じアムロよ。もしかしたら…周りとのしがらみの無い“レイ”こそがアムロの本質かもしれないわね」
「…俺の…本質?」
「ええ、もう一度その人との出会いから振り返ってみなさいな。そうすれば、自分の心が分かるかもしれないわ」
「…もう一度…振り返る…」
『ふふ、悩んでるっていう事は、どうしても切り捨てられないって事よ』
戸惑うアムロを見つめ、そんな事をミライは思う。
それを横で聞いていたベルトーチカが、焦った様にアムロの腕を掴んで立ち上がらせる。
「アムロ!そろそろ時間よ!行きましょう。貴女も、アムロを迷わせる様な事を言わないで!」
「ベル!?」
ミライを睨みつけるベルトーチカに驚きつつも、アムロはミライに別れを告げる。
アムロの腕をギュッと掴んで背を向けるベルトーチカに、ミライがそっと声を掛ける。
「ベルトーチカさん、好きな人の…幸せを一番に考えてあげてね」
「考えてるわ!私と一緒にいるのが一番幸せなのよ!」
「…そうかしら?」
「そうよ!」
ベルトーチカはそのままアムロの腕を強引に引いて船を後にした。
「ベル、何を怒っているの?」
怒りを露わにして腕を引くベルトーチカにアムロが疑問の声を上げる。
「怒ってないわ!アムロ、あなたは私と一緒にいるのは嫌?」
少しわがままで強引だが、決してベルトーチカの事は嫌いではない。ただ、恋愛の対象には考えられなかったが…。
「え?別に嫌じゃないけど…いきなりどうしたの?」
鈍いアムロにイラつきながらも、ギュッとアムロの腕に自分の腕を絡ませる。
『アムロは私と一緒にいた方が良いのよ!クワトロ大尉より、私の方が絶対アムロを幸せに出来るわ!』


アムロはアウドムラの自室でミライに言われた事を思い出す。
「あの人との出会いから…振り返る…」
アムロは目を閉じて、シャアと初めて出会った頃の事を思い出す。
あの戦争で、何度も剣を交えて戦った仇敵。
一番初めに相対した時は、圧倒的な力の差に恐怖した。
しかし何度も戦う内に、恐怖は負けた悔しさから対抗意識へと変わり「負けたくない」「この人に勝ちたい」と、思うようになった。そう、実際には顔すら知らない敵のパイロットは、いつしか自分の目標になっていた。
そして、偶然出会ったサイド6でのシャアは、中立地帯とは言え、エレカを泥濘みに嵌めて困っていた敵兵である自分に、軍服が汚れる事も気にせず、手を貸すような優しい男だった。
その時、“赤い彗星”を実際に目の当たりにして驚きはしたが、恐怖や憎しみは無かった。
そう、個人的な憎しみや恨みがあった訳では無いのだ。ただ、ジオンと連邦、所属する場所が違っただけ。それも自分は、成り行きで軍人になっただけの、連邦という組織に思い入れも志も何も持たない子供だった。
しかし、そんな彼と自分の間に亀裂をもたらしたのはララァの死だった。
ララァは、唯一自分と同じ能力を持ち、理解してくれた人。
「僕たちは魂で惹かれ合い、求め合った…」
当時、このニュータイプ能力のせいでホワイトベースの仲間や、幼馴染のフラウにまで、特別視され、畏怖されていた事で疎外感や孤独を感じていた自分にとって、同じ能力を持つララァの存在はとても大きなものだった。そして、シャアに受け入れられているララァが少し羨ましかった。
しかし、シャアはララァのニュータイプ能力を戦争に利用した。自分を慕うララァを、戦争の道具にしたのだ。
『ニュータイプは殺し合いの道具では無い』そう教えてくれたララァを…。
アムロはぎゅっと拳を握りしめる。
「ララァ…」
それでもララァは僕よりもシャアを選んだ。
僕が生きていてはシャアが死ぬからと、僕を攻撃した。
でも、例え選んで貰えなくても、僕はララァを求めた。
だって、出逢ってしまったから。
魂の番いである存在に、魂で惹かれ合った唯一の人に…。
最後にはララァも僕を認め、求めてくれた。
けれど次の瞬間、シャアを狙った僕のサーベルの前に割って入り、命を落とした。
僕は、誰よりも求めたララァをこの手で殺してしまったんだ。
取り返しのつかない事をしてしまったと…大切な人の命を奪ってしまった愚かな自分に絶望した。
作品名:未来のために 11 作家名:koyuho