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未来のために 11

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そして、その時シャアからララァを失った深い悲しみが伝わってきた。
シャアもララァを愛していたのだ。だが、それなら何故ララァを巻き込んだんだと、怒りが湧いてきた。
でもそれは多分、自分の犯した罪を、シャアのせいにして憎まなければ、精神が保てなかったからだ。
…そうだ、僕は…自分の罪をシャアになすりつける事で逃げたんだ…。ララァを失って悲しんでいたのは自分だけでなく、シャアだって同じだったのに…。

アムロは自身の胸に手を当て、シャアの事を心の底から憎んでいた訳ではない事に気付く。
「そうだ…僕はシャアに怒りを…憎しみをぶつける事で自分の罪から逃げてただけだ。…シャアがララァを巻き込んだから、僕がララァを殺してしまったんだと…シャアの所為にして…」
本当はララァが羨ましかった。
ニュータイプ能力ごとシャアに愛されるララァが羨ましかった。僕も誰かに愛して欲しかった。
そしてシャアは、ララァと同じように“レイ”を…僕を愛してくれた。求めてくれた…。“レイ”も…そんなシャアを愛してた。
記憶が無く、過去のわだかまりの無い自分は…素直にシャアを愛おしいと思ったんだ。
「シャア…」
“レイ”の…いや、“自分”のシャアに対する想いが溢れ出す。
そして、ミライの言葉を思い出す。
『記憶を失っていた間の“レイ”も“アムロ”も同じアムロよ。もしかしたら…周りとのしがらみの無い“レイ”こそがアムロの本質かもしれないわね』
“レイ”も“アムロ”も“僕”だ僕はシャアを愛してる。
この想いは…僕のものだ…。
「シャアに…会いたい…」
ようやく自分の想いに気付く事が出来たアムロは、その想いに胸が締め付けられる。
そうなると、途端にシャアに会いたくなった。
会って前のように抱きしめて欲しい、愛して欲しい。シャアに対する想いが溢れ出して止まらない。
アムロは自身の身体を抱き締めて目を閉じる。
そして、今は遠く離れた場所にいる愛しい人へと心を飛ばす。
『シャア…貴方に会いたいよ…貴方を愛してるんだ…』

不意に、シャアは誰かに呼ばれた様な気がして振り返る。
そして、自分を求める心を感じて胸を押さえる。
「…アムロか?君が…私を呼んだのか?」
シャアは窓から見えるコバルトブルーの地球を見つめ目を細める。
「アムロ、君に会いたい…」


そして一ヶ月後、暗殺されたブレックス准将の後継としてエゥーゴの代表となったシャアは、地球のダカールで行われる地球連邦政府議会をジャックして演説をする事になった。
カラバの任務は、議会をジャックし、シャアを議会の会場へと送り届ける事。
「…シャアが…降りてくる…」
今朝行われたブリーフィングで、シャアが地球に降りてくる事を知り、アムロの胸に喜びが込み上げる。
そんなアムロを見つめ、ベルトーチカが眉を顰める。
一人になったアムロを空き部屋に誘い、ベルトーチカがアムロに抱きつく。
「アムロ!私、貴方が好きなの」
「ベル!?」
突然の告白にアムロが驚きの声を上げる。
「ジオンのコロニー落としで私は家族を失ったわ。そんな私に生きる希望を与えてくれたのは貴方なの!貴方の活躍で連邦はジオンに勝利する事が出来たわ!貴方は私にとってヒーローなの!」
「ベル…」
「ねぇ、クワトロ大尉の事なんか忘れて私のもになって!」
詰め寄るベルトーチカに戸惑いつつも、アムロはそっと首を横に振る。
「俺は…ヒーローなんかじゃないよ。連邦が勝手に祭り上げて勝利の象徴にしただけだ。俺の力だけで戦争に勝てるわけがないだろう?」
「でも!貴方の活躍が連邦の士気をあげた事は確かだわ!」
「どうかな…俺は命令されるまま行動しただけだから…君は俺に理想を求めているだけだよ。それは恋愛感情じゃないだろう?」
「そんな事ないわ!私は貴方を愛してる!」
必死にアムロを求めるベルトーチカに、アムロが小さく溜め息を吐く。
「俺は、戦争だったとは言え、何百という命を奪った男だよ。その中にはきっと、当時の君と同じ年頃の子供を持つ親だっていたはずだ」
「…それは!」
「戦争なんてそんなものだよ。戦争で英雄になるって事は、それだけ沢山の命を奪ったって事だ。そんな男を本当に愛せるのかい?」
そう言われ、ベルトーチカが言葉に詰まる。
「それでも愛せるなんて言えるのはきっと同類だけだ」
アムロはベルトーチカの両手をそっと掴むと、その手のひらを見つめて優しく微笑む。
「君の手は真っ白だ。俺みたいに真っ赤に染まっていない。君にはもっと相応しい人がいるよ」
「アムロ…」
「それに…ごめん。俺、やっぱりあの人が好きなんだ…」
「…もう…迷いは無いのね」
クワトロ達と離れてから、アムロがずっと悩んでいた事には気付いていた。
記憶が戻り、過去の自分と現在の自分の想いに苛まれ、本当の自分の想いを見付けられずにいた。
しかし、先日ミライに会ってあの助言を受け、アムロはようやくその答えに辿り着けたようだった。
だからこそ、今クワトロに会ってしまったらアムロは二度と手に入らないと、ベルトーチカは自身の想いを打ち明けた。
「うん…。ようやく…自分の気持ちに気付けたんだ…」
優しく微笑むアムロに、ベルトーチカが小さく溜め息を吐く。
「そんなにクワトロ大尉が好き?」
ベルトーチカの問いに、アムロは少し顔を赤らめながらコクリと頷く。
「昔は…あの人の事が怖かった。戦時中、色々あってあの人の事を恨んだりもした。でも、本質的には優しい人だって事も知っていた。事実、記憶を無くして過去のわだかまりの無かった俺はあっという間にあの人に惹かれた」
愛しげに、今は側にいない男を想って微笑む顔に、ベルトーチカはドキリとする。
こんな顔をアムロが自分に向けてくれた事は無かった。
これは、あの男にだけ向けられる顔。
けれど、そんな表情を見せるアムロを愛しいと思う。
それが自分に向けられたものでは無いと分かっているが、純粋で、綺麗な心を持つアムロに心惹かれる。
「ベル、ごめんな。でも、君の気持ちはとても嬉しかった。ありがとう」
優しく微笑むアムロに、ベルトーチカは盛大に溜め息を吐く。
「もうっ!確かにヒーローのアムロを好きだったけど、あなた自身を好きでもあるんだから!私に相応しいかどうかは私が決めるわ!まだ諦めたわけじゃ無いわよ!」
「ベル…」
少し困った顔をするアムロに笑いが込み上げる。
「ふふ、まぁいいわ」
ベルトーチカはアムロに向かって背伸びをすると、その唇に軽くキスをする。
「ベル!?」
「今は諦めてあげる。でも、クワトロ大尉が貴方を泣かせたら奪いに行くから!覚悟しておきなさい!」
アムロを指差して宣言すると、ベルトーチカは颯爽と部屋を出て行った。
アムロはそんなベルトーチカを唖然とした表情で見送る。
「…女の人は…凄いな…」
アムロはキスをされた唇を手で押さえながら呟いた。


地球へ降下してきたシャアがアウドムラに合流する。
「ハヤト艦長、よろしく頼む」
「こちらこそ、この作戦を成功させてエゥーゴの真の目的を人々に知らしめましょう。貴方の演説を全力でバックアップします。貴方ならば人々の心を動かす事が出来るはずだ!期待しています」
「ははは、そんなにプレッシャーを掛けないでくれ」
作品名:未来のために 11 作家名:koyuho