第三部2(102) 亡命
「しかし何だってネッタをあんなに頑固に海外へ留学させたがったんだ?おまえにしては珍しくネッタの意見には耳も貸さずに。確かに大都市ロンドンで見識を広めるのはいいかもしれんが…バレエだったらネッタが言うとおり、モスクワでも良かったんじゃないのか…」
「アレクセイ」
「ん?」
「ネッタだけじゃないよ」
「ん?何がだ?」
「ネッタだけじゃないよ。…ミーチャとネッタ。そしてアルラウネ。やっと大切な家族を国外へ逃す事が出来た。…いよいよ…最後はぼくらだよ」
ー ソビエトを、あの国を出るんだ。
「は?…お前…何言ってるんだ?!」
ユリウスは二通の旅券ー、アレクセイとそれから自分のー、をテーブルの上へ滑らせ、アレクセイの目を見つめてはっきりとそう告げた。
それは相談ではなく、もはや有無を言わさない宣告だった。
ユリウスの目はその事を決断した揺るぎない強い光を放っていた。
「アレクセイ」
「ん?」
「ネッタだけじゃないよ」
「ん?何がだ?」
「ネッタだけじゃないよ。…ミーチャとネッタ。そしてアルラウネ。やっと大切な家族を国外へ逃す事が出来た。…いよいよ…最後はぼくらだよ」
ー ソビエトを、あの国を出るんだ。
「は?…お前…何言ってるんだ?!」
ユリウスは二通の旅券ー、アレクセイとそれから自分のー、をテーブルの上へ滑らせ、アレクセイの目を見つめてはっきりとそう告げた。
それは相談ではなく、もはや有無を言わさない宣告だった。
ユリウスの目はその事を決断した揺るぎない強い光を放っていた。
作品名:第三部2(102) 亡命 作家名:orangelatte