あの日の夏は海の底 前編
ー うだる様な暑さのなかを蝉が鳴いている。
僕は、いつもの様に部屋の隅っこで膝を抱え
空を見上げていた。
部屋では昼間からやることのないニート達が
暑さにうな垂れていた。
「こうも暑いとお馬さんにも行けないなぁ」
だらしない格好でおそ松兄さんが呟いた。
「仕方ないだろ…たまには大人しくしてろ」
チョロ松兄さんは、就活本から目を離さずに
言い捨てた。
「チョロ松〜酷いよぉ〜」
「うるさい。ただでさえ暑いんだから少し黙
っててくれる?」
「チョロシコスキー!なんでそんなに冷たい
んだよ!お兄ちゃん傷ついたよ?!」
「チョロシコスキーじゃねぇぇぇ!!!」
おそ松兄さんは起き上がるとチョロ松兄さん
をからかって遊び始めた。
二人のやりとりをスマホの片手間で見てた
トド松はおもむろに立ち上がり、出かける
準備を始めていた。
「あれ〜トド松〜どっか行くの?」
おそ松兄さんの問いにトド松が
「暇だからカフェに涼みにでも行こうかと
思って」
と答える。
「えー!?トッティ…えー!?」
おそ松兄さんの大きな声に顔を顰め
「ちょっ…うるさっ!!」
とため息まじりに言い放った。
「なんでお兄ちゃん誘おうとか思わないの?
心臓ギュッてしたよ!?」
「ヤダよ。おそ松兄さんと一緒に行ったら、
集られるの目に見えてるし。
それに、一緒にいるのが恥ずかしい!」
「ドライモンスターだよぉ〜」
おそ松さん兄さんは、トド松の一言にショッ
クを受けた顔で力なく倒れた。
「それに、今日は先約があるの!
ね!十四松兄さん?」
「そーだっ!今日はトッティがスイーツ食べ
に連れてってくれるって約束してた!」
トド松が視線を送ると、満面の笑顔でこちら
を見る十四松に
「お前さっきまで忘れてたろ?」
とチョロ松兄さんが、ツッコミを入れる。
「ま、そういうわけだから!おそ松兄さんは
違う人と行ってね!」
あざとくウィンクしてくるトド松に
「あざとっ」
僕はボソッと呟いてしまった。
「え?何?闇松兄さんなんか言った?」
トド松はトッティ顔でこっちを見てくる。
僕は、素早く目をそらした。
「トッティ!早く行こうよ〜」
「わかったよ、十四松兄さん!
あと、トッティって呼ぶのやめて!」
二人は楽しそうに話しながら、部屋をあとに
した。
二人を見送った僕らは、おそ松兄さんの構っ
て攻撃を食らっていた。
「ねぇ〜カラ松ぅ〜釣り行かね?」
「フッ!すまないなおそ松
俺はこれからカラ松ガールズとフリーハグ
をしに行くんだ」
「痛いよぉ〜肋折れた!」
クソ松はかけていたサングラスを外し、
ポーズを決めながら言った。
それを見たおそ松兄さんは、大笑いしながら
転げ回る。
「あーもう、暑っ苦しいなぁ」
兄二人のやりとりに呆れたチョロ松は、就活
本を閉じて立ち上がった。
「チョロ松ぅ〜どこ行くの?」
「うるせぇ!お前も連れてってやるから!
とりあえずズボンを履け!」
「え?マジ!?チョロ松のおごり?
ラッキー!!」
「いや、違うから」
「えぇ〜?」
「長男うるせぇって」
コントのようないつものやりとりを、俯いた
まま聞いていた僕に、おそ松兄さんが視線を
向けた。
「いちまちゅ〜お前も暇だろ?
一緒に行こうぜ〜」
そう言われるのは予想できていた。
正直全然行きたくないし、僕も行こうと思っ
ていたところがあったので
「猫んとこ行くから…いい」
と断った。
「ちぇー…まぁ、いっか!チョロ松遊んでく
れるし!
いちまちゅ〜次は遊べよぉ〜?」
「わかった」
おそ松兄さんの言葉に、気持ち半分で頷く。
チョロ松兄さんは面倒臭そうに、長男を連れ
だした。
二人を見送った後、カラ松と僕は二人きりに
なってしまった。
静かな空気に耐えかねて僕は立ち上がった。
「一松、どこか行くのか?」
クソ松の声に僕の心が跳ねた。
「別に…」
素っ気なく言い返し、部屋を出ようとすると
クソ松に腕を掴まれた。
「何!?」
「マイハニー!二人きりだというのに酷いぞ
俺も一緒に行かせてくれ!」
「うるせぇ!ハニーって呼ぶんじゃねぇ!
カラ松ガールズのとこはどーしたよ!?」
僕は顔をが熱くなるのを感じ、照れ隠しにク
ソ松を殴った。
「いちまぁーつ!相変わらず過激な照れ隠し
だなぁ〜
あれは、二人きりになるための口実だぞ」
頬を抑えながら、嬉しそうな顔でこちらを見
るクソ松に余計に恥ずかしくなった。
「猫んとこの後行きたいとこあるからさ…」
ボソボソと断る口実を並べ始めた僕に、
「どこへでもついて行くぞ?マイハニー!」
と笑顔で頭を撫でるカラ松。
もう、諦めよう!と心の中で呟きながら
「仕方ない…どーせ、ついてくるんだろ?
勝手にしろ」
僕は、ボソッと呟いた。
ー 路地裏につき、猫に餌をあげる。
カラ松と二人で暑い中歩くのも、案外楽しい
のかもしれないと思いながら猫を撫でた。
ふと顔を上げると、カラ松と目が合ったので
僕は恥ずかしくなって目をそらした。
「いちまぁーつ、なぜ目をそらすんだぁ?」
ニヤニヤしながら覗き込んでくるクソ松に目
潰しを食らわせた。
「ウゼーんだよクソ松!
とっとと次行くぞ」
「ギャァー目がぁ!待ってくれ一松!」
クソ松は開かない目を必死に開けようとしな
がら、僕についてくる。
「全くなんてギルティなんだ一松
照れ隠しの殺傷能力が凄いぞ?」
「あ?」
「なんでもないです…」
涙目をしたカラ松を睨みつけた。
「ところで一松…どこに行くんだ?」
なんの脈略もなく質問してくるカラ松を眺め
顔を地面に戻し
「海に行くんだよ」
といい、また顔をカラ松に向けた。
「…そうか、少し嫉妬するが…
確かにこんな日は思い出すなぁ」
カラ松は、呟きながら空を仰いだ。
僕もカラ松に誘われるように空を仰ぐ。
そう…こんな青い空の夏。
大きな積乱雲を見ると僕は、あの時を思い出
す。
僕の恋と青い神様との出会いを…
僕は、いつもの様に部屋の隅っこで膝を抱え
空を見上げていた。
部屋では昼間からやることのないニート達が
暑さにうな垂れていた。
「こうも暑いとお馬さんにも行けないなぁ」
だらしない格好でおそ松兄さんが呟いた。
「仕方ないだろ…たまには大人しくしてろ」
チョロ松兄さんは、就活本から目を離さずに
言い捨てた。
「チョロ松〜酷いよぉ〜」
「うるさい。ただでさえ暑いんだから少し黙
っててくれる?」
「チョロシコスキー!なんでそんなに冷たい
んだよ!お兄ちゃん傷ついたよ?!」
「チョロシコスキーじゃねぇぇぇ!!!」
おそ松兄さんは起き上がるとチョロ松兄さん
をからかって遊び始めた。
二人のやりとりをスマホの片手間で見てた
トド松はおもむろに立ち上がり、出かける
準備を始めていた。
「あれ〜トド松〜どっか行くの?」
おそ松兄さんの問いにトド松が
「暇だからカフェに涼みにでも行こうかと
思って」
と答える。
「えー!?トッティ…えー!?」
おそ松兄さんの大きな声に顔を顰め
「ちょっ…うるさっ!!」
とため息まじりに言い放った。
「なんでお兄ちゃん誘おうとか思わないの?
心臓ギュッてしたよ!?」
「ヤダよ。おそ松兄さんと一緒に行ったら、
集られるの目に見えてるし。
それに、一緒にいるのが恥ずかしい!」
「ドライモンスターだよぉ〜」
おそ松さん兄さんは、トド松の一言にショッ
クを受けた顔で力なく倒れた。
「それに、今日は先約があるの!
ね!十四松兄さん?」
「そーだっ!今日はトッティがスイーツ食べ
に連れてってくれるって約束してた!」
トド松が視線を送ると、満面の笑顔でこちら
を見る十四松に
「お前さっきまで忘れてたろ?」
とチョロ松兄さんが、ツッコミを入れる。
「ま、そういうわけだから!おそ松兄さんは
違う人と行ってね!」
あざとくウィンクしてくるトド松に
「あざとっ」
僕はボソッと呟いてしまった。
「え?何?闇松兄さんなんか言った?」
トド松はトッティ顔でこっちを見てくる。
僕は、素早く目をそらした。
「トッティ!早く行こうよ〜」
「わかったよ、十四松兄さん!
あと、トッティって呼ぶのやめて!」
二人は楽しそうに話しながら、部屋をあとに
した。
二人を見送った僕らは、おそ松兄さんの構っ
て攻撃を食らっていた。
「ねぇ〜カラ松ぅ〜釣り行かね?」
「フッ!すまないなおそ松
俺はこれからカラ松ガールズとフリーハグ
をしに行くんだ」
「痛いよぉ〜肋折れた!」
クソ松はかけていたサングラスを外し、
ポーズを決めながら言った。
それを見たおそ松兄さんは、大笑いしながら
転げ回る。
「あーもう、暑っ苦しいなぁ」
兄二人のやりとりに呆れたチョロ松は、就活
本を閉じて立ち上がった。
「チョロ松ぅ〜どこ行くの?」
「うるせぇ!お前も連れてってやるから!
とりあえずズボンを履け!」
「え?マジ!?チョロ松のおごり?
ラッキー!!」
「いや、違うから」
「えぇ〜?」
「長男うるせぇって」
コントのようないつものやりとりを、俯いた
まま聞いていた僕に、おそ松兄さんが視線を
向けた。
「いちまちゅ〜お前も暇だろ?
一緒に行こうぜ〜」
そう言われるのは予想できていた。
正直全然行きたくないし、僕も行こうと思っ
ていたところがあったので
「猫んとこ行くから…いい」
と断った。
「ちぇー…まぁ、いっか!チョロ松遊んでく
れるし!
いちまちゅ〜次は遊べよぉ〜?」
「わかった」
おそ松兄さんの言葉に、気持ち半分で頷く。
チョロ松兄さんは面倒臭そうに、長男を連れ
だした。
二人を見送った後、カラ松と僕は二人きりに
なってしまった。
静かな空気に耐えかねて僕は立ち上がった。
「一松、どこか行くのか?」
クソ松の声に僕の心が跳ねた。
「別に…」
素っ気なく言い返し、部屋を出ようとすると
クソ松に腕を掴まれた。
「何!?」
「マイハニー!二人きりだというのに酷いぞ
俺も一緒に行かせてくれ!」
「うるせぇ!ハニーって呼ぶんじゃねぇ!
カラ松ガールズのとこはどーしたよ!?」
僕は顔をが熱くなるのを感じ、照れ隠しにク
ソ松を殴った。
「いちまぁーつ!相変わらず過激な照れ隠し
だなぁ〜
あれは、二人きりになるための口実だぞ」
頬を抑えながら、嬉しそうな顔でこちらを見
るクソ松に余計に恥ずかしくなった。
「猫んとこの後行きたいとこあるからさ…」
ボソボソと断る口実を並べ始めた僕に、
「どこへでもついて行くぞ?マイハニー!」
と笑顔で頭を撫でるカラ松。
もう、諦めよう!と心の中で呟きながら
「仕方ない…どーせ、ついてくるんだろ?
勝手にしろ」
僕は、ボソッと呟いた。
ー 路地裏につき、猫に餌をあげる。
カラ松と二人で暑い中歩くのも、案外楽しい
のかもしれないと思いながら猫を撫でた。
ふと顔を上げると、カラ松と目が合ったので
僕は恥ずかしくなって目をそらした。
「いちまぁーつ、なぜ目をそらすんだぁ?」
ニヤニヤしながら覗き込んでくるクソ松に目
潰しを食らわせた。
「ウゼーんだよクソ松!
とっとと次行くぞ」
「ギャァー目がぁ!待ってくれ一松!」
クソ松は開かない目を必死に開けようとしな
がら、僕についてくる。
「全くなんてギルティなんだ一松
照れ隠しの殺傷能力が凄いぞ?」
「あ?」
「なんでもないです…」
涙目をしたカラ松を睨みつけた。
「ところで一松…どこに行くんだ?」
なんの脈略もなく質問してくるカラ松を眺め
顔を地面に戻し
「海に行くんだよ」
といい、また顔をカラ松に向けた。
「…そうか、少し嫉妬するが…
確かにこんな日は思い出すなぁ」
カラ松は、呟きながら空を仰いだ。
僕もカラ松に誘われるように空を仰ぐ。
そう…こんな青い空の夏。
大きな積乱雲を見ると僕は、あの時を思い出
す。
僕の恋と青い神様との出会いを…
作品名:あの日の夏は海の底 前編 作家名:ぎったん