はじまりのあの日9 天使様がやって来た
「にゃっは~肉買ってきたぜ~。肉、肉、肉~。ご馳走ったら、やっぱ、肉だぜ、肉」
肉食派、テト姉。かなりご機嫌だ。買い物袋を振り回す
「キヨテル先生や別働隊とも連絡取ってね、分担したんだ~。うちらはお肉と~」
「簡単なお総菜、スナックとか軽いお菓子担当で~す」
「くっきー、びすけっと、おせんべいも、あにさま」
複数の買い物袋を下げた三人もホクホク顔。相当に良いものを手に入れたようだ
「おかえりみんな。じゃあ、肉なんかは、マンションの冷蔵庫に入れて置いて~」
「皆帰ったら、荷解じゃない。よし、勇馬、めぐ。茶の間に惣菜系、置いといてお・く・れ~」
宴が始まる高揚感。もう、準備段階で開宴状態。自然みんなが急ぎ足になる
「もどったわよ~。結局別方向の商店街まで出ちゃったわ~」
めー姉が、ご機嫌だ。ルカ姉も鼻歌交じりに。ミク姉スキップで。男二人は従者状態。やや疲れが混じった表情、やってくる
「イヤハヤ。皆様、コダワリガ凄まじいでゴザルヨ。中々に決まりモウサンカッタ」
キャスター付きの台車に、箱を四つ載せてくるアル兄
「ほんとだって。お店の人と交渉までし始めんだもん。めー姉のお酒だって選びすぎ~」
同様の弟。まあ、これだけの大所帯だとこれも必然だ。選択をし続ける姉達を、苦笑いで見る二人。きっとそんなカンジだっただろう、光景が目に浮かぶ
「ふっふっふっ。まあ、好きな物ってのは、そうなっちゃうじゃない。よし、冷やす必要あるものは各家の冷蔵庫へ閉まって。カル、リリに連絡して。今、どこら辺にいるか、聞いて欲しいじゃない」
「了解、あにさま」
「デハBeer(ビール)は冷やしておくでゴザル。酒一式は、ハウスの冷蔵庫に閉まっておくユエ」
それぞれに動き出す
「お、うまそ~じゃね~か、かむい~。一つも~らいっ」
甘辛粉ふきいもをつまむテト姉。彼作、甘辛粉ふきいも。普通、味付けしないじゃがいもに粉を吹かせる。紫様が作るのは、甘塩っぱい味を付けた粉ふきいも。ほくほくの食感と、みんな大好き濃いめの甘辛味。炭水化物のくせに、ご飯のおかず、おつまみにもなる悪魔的誘惑の料理
「おい、勝手につまむんじゃない。手、洗っただろうな」
「ひ~じゃね~は。うん、美味い。じゃあ、ボクも準備手伝ってやる」
言って、うどんを大桶に入れる作業にかかるテト姉。勇馬兄が氷をくべる。めぐ姉、めんつゆの準備。割る水は又後。味の濃さはお好みで
「あにさまさま、てるてるせんせ達、あと十五分くらい。りりねえさまが言ってた~」
十二時丁度。キヨテル先生達が帰ってくる。神威家の台所、もう『宴』状態で荷解大会。買い物袋を探ってゆく
「あっはは~。こだわりすぎなんて言ってたけどさ。結局レンもこだわってるよね~バナナに。甘々バナナに、モンキーバナナ。お、バナナチップスまで」
「な~んだ、レンも同じじゃない、好物しばり。お『プランテン』まで出てきた。こっちは、パイナップル、桃とサクランボか。洋梨もあるじゃない。果物大好きっ子だなレ~ン」
「い、い~じゃん。好きなんだからっ。作ってよ、バナナで何か。あと、フルーツポンチッ」
彼、兄指摘。恥ずかしがる弟。一同さざ波のように笑い合う
「わかったよ、レン。じゃあ、生チョコとバナナのデザートサンドで良いかな。プランテンは揚げて甘辛くしてあげる」
「白玉粉もあったから、浮かべてあげようじゃない。フルーツポンチにお団子。別に粒餡作っといて、和風パフェもいいな」
聞くだけでも美味しそうな両者のメニュー。というか、日本ではそこまで簡単に手に入らない、バナナの仲間プランテン。どこで手に入れてきたのやら
「わ、それ美味しそ、お願い、カイ兄。がく兄も」
「それ、ウチも食べたい、カイト。さっすがおにぃ」
最近、姉妹姉弟に見えてしかたないと言われる、リリ姉とわたし達姉弟。その、レンとリリ姉が喜びの声。二人のエプロンも前掛け式の物、黒地に金糸のリリ姉。うす碧のレン
「お総菜は、エビチリ、エビマヨ。ウインナーの盛り合わせもあるね。あ、サラミとスモークチーズも出てきた」
「そのメニュ~なら、冷えても美味です。二次会用でもイイカナ~っと思って買いました~」
商店街で営業している、お総菜屋さんの包み。開くカイ兄
「お、良い選び方してるじゃない、ピコ。ならコレ、もうマンションの冷蔵庫に入れちゃおう」
「オレ行くよ、がく兄」
片割れが、包みを両手にマンションへ
「ほれ、肉。美味く調理してくれ、このお肉様」
「お前、贅沢しすぎじゃない重音」
「わ~、ザ・高級肉って感じです~」
紫の彼、嘆息。ピコ君驚愕。塊で出てくる赤身のお肉。キログラム単位の越後和牛を勢いよく置く。テト姉好みの、脂身が少ない物
「あ~コッチもお肉か。鳥さんの胸肉。じゃあ、これでパスタ作ろうかな。オレ今日は肉料理担当するよ、殿。サイコロのトンちゃんは何に使おうか」
別の包みを開け、肉尽くしに苦笑するカイ兄
「すまん、肉系ってか、洋モノは任せたカイト。ま、豚様は後で考えよう。使わなかったら、冷凍保存しても良いじゃない。牛様はStake(ステーク)だな。切っといて外で焼こう。それでいいか、重音」
満足気に肯定するテト姉。出てくる物と、メンバーの反応で調理プランが決まって行く
「待ってまって、今日の主役のリクエスト優先だよ~みんな~。さあ、天使様は何が食べたいのかな~」
IA姉の一言に
「これの『なっとうはさみやき』がたべたいです、にいさま。おねぎものせてください」
両手に抱え、ポテポテと持ってくるリュウトくん。手にしているのは、越後名産の分厚い油揚げ。好みが渋い
「いい好みね~リュウト君。おつまみにもピッタリだわ~」
「俺も好きだしな、とびっきりおいしいの作っちゃおうじゃない」
微笑んでしゃがみ、リュウト君を撫でるめー姉。両者も、紫様も嬉しそうな顔
「ゆきは、おなすのおひたし。ぽ父さんがつくってくれる、あま~いのがいいです」
「ああ、揚げ浸しだな。よしよし、良い趣味じゃない、ユキ。さっきから、俺の好物が多くて、コッチまで嬉しくなるな」
怖ず怖ずとユキちゃん。笑顔、腕組みで応える紫の彼。実は茄子が嫌いだったユキちゃん。紫の彼、揚げ浸しを作って『だまされたと思って、一口だけ。イヤなら残そうじゃない』口を付けたユキちゃん。嫌いだった茄子が、大好物に早変わり。カイ兄と紫様のおかげ。二人のご飯で、メンバー全員、嫌いな物が激減する『好み』の問題は別として
「コレマタ良いでゴザルナ。酒が進みそうでゴザルヨ。Wow洒落たエプロンでゴザルナ、姫」
エプロンを着け始める天使様。お揃いのドレスエプロン。エプロン姿は初めてだ
「あ、ホントだ~エプロン。天使様に買ったんだね、テルさん」
「ええ、良い機会でしたので。皆さんお揃いです」
「おおお、みんな、かあいい」
アル兄に褒められ、照れくさそうなユキちゃん。カイ兄が気付いて、みんなも気付く。微笑む先生。カル姉は大はしゃぎ。ユキちゃんは、彼が料理する姿を見た時から『ぽ父さん』と呼んでいる。実のお父さんも料理上手だったからというのが、その理由
作品名:はじまりのあの日9 天使様がやって来た 作家名:代打の代打