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代打の代打
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はじまりのあの日11 メイコとカイトの婚約

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仏の顔も三度まで。三本締めに万歳三唱。日本は、どうやら『3』という数字に何かがあるようだ。ワイドショーの司会者が告げる。そういえば、伝説の三塁手も、背番号『3』だ。3の響きで思い出す、あの日の三次会。宴も進み、おねむになった天使様が、マンションの客間でお休みになった後のこと。残った『まだまだイコウ』組、リビングで始まった『三次会』さっきの記憶の本。栞を挟んだあのページ。わたしは手を掛け、降りていく―

「大切にしないとダメよね~。さ、大切に頂きましょうか、お酒もおつまみも。無駄にしたらダメよねぇ」

言うが早いか、焼酎の瓶に手を伸ばすめー姉。さっき彼が話していた話題を蒸し返す

「はっはは、め~ちゃんにかかっちゃ、全部お酒だね。お酒の神様、メイコ様」
「さてな、カイト。メイコは酒の神じゃ、ないんじゃな~い。お前にとっては」

膝の上に座るわたし。見上げると、不敵な笑みを浮かべる彼に聞いてみる。めー姉はお酒の神様ではないらしい

「どういうこと~がっくん」
「ん、殿」
「お酒の神様っぽいけどね~、めー姉」
「酒乱の神様じゃねえのかぁ」

頭の上、疑問符が浮かぶ、わたしとカイ兄。ミク姉は思案顔。そういうテト姉、杏のお酒で上機嫌。ピコ君、Mikiちゃんのアホ毛が、クエスチョンマークに。何を言うか、メンバーの興味は、彼の次の一言に

「『弁財天』だろカイト。メイコ様は、お前の『女神様』じゃな~い」
「ちょっ。と、殿」
「あらっ。嬉しいこと言ってくれるじゃない、神威君。それとも何かご不満、カイト」

紫様が告げたとたん、真っ赤に染まるカイ兄。その兄を、盛大に抱き寄せるめー姉。きつくキツク抱きしめる

「わ~、め~こさんと、カイトのに~さんも仲良しさ~ん。もえもえ~」
「新婚の夫婦(めおと)よろしくでゴザル」

瞳を輝かせ、足をパタパタする、IA姉。ご馳走様でござると、微笑むアル兄。ただ、二人のスキンシップって

「でも、ぼくには『弟大好きお姉ちゃん』のコミュニケーションに見えちゃいます~。あ、Mikiちゃん、あ~ん」
「あ、うちも~。で、いっつも『やめてよお姉ちゃ~ん』って照れちゃうの。わ、ありがと、ピコきゅん。お返しに、あ~ん」

わたしの気持ちを、完璧に代弁してくれる、ピコ君、Mikiちゃん。今度は、たがいのアイスクリームをシェア、食べさせあう。この二人も仲良しさん

「ベンザイテンって、神様っすか、テルサン」
「そうですよ、勇馬さん。美しい女神様です。財産をくださる女神様、七福神としても絵描かれますね。本来はインドの守護神様、守り神様です。財産の恵み、守護の女神。メイコさんにぴったりですね」

先生、ミルクティーを一口。嬉しそうに、ババロアを食べる。質問する、勇馬兄はこだわりシュークリーム。めぐ姉と一緒

「メイコ殿が、拙者達をPROJECTへ導いてクダスッタ。歌い手という、かけがえのない『財』を下さったでゴザルナ」

真摯な眼差し、お酒でやや顔が赤いアル兄。その目が赤いのは、感慨と感謝の想いからだろう。シャンパングラスを翳し、シャンデリアの光を見る

「そして、メイコ姉様ご自身が、人々に『歌』という『財』を振りまくのですね。素敵ですわ、お姉様」
「護りの女神様も頷けるよね~。メイコね~さんが、PROJECTの櫓(やぐら)を支えてたんだもん」

こちらは目が潤んでいるルカ姉。同様に感謝の言葉。Mikiちゃんは微笑みの中に、感謝の想いが滲み出ている

「あらウレシイ。ありがとうテル先生。みんなもありがとう。かけがえのないあなた達の言葉、とっても嬉しいわぁ。今、宝船に乗っている気分ね」

言葉には『笑っているよ』という感情が籠もる。ただ、その顔は、すでに泣き笑いのめー姉。人一倍、苦労をしてきた姉と兄

「まさに七福神の弁才天じゃない、メイコ様。その意味では、俺らにとっても女神様か」
「ほんと~だよね。メイコさんが初めてくれた、プロさんと一緒に。だから今、わたし達も歌えるんだもん」

カラカラ笑い、ホタルイカの沖漬けを食べる紫様。めぐ姉も感謝の微笑みだ

「七福神といえば、福神漬けもアテにいいわねぇ。カイト、あったよね、福神漬け」
「結局は、酒じゃね~か。メイコちゃんは『酒乱の弁才天』だぜ」

今だ赤面中のカイ兄に頬をくっつけるめー姉。お酒に話題を移したのは、泣き顔を見られたくないから。楽しげなテト姉の皮肉はスルー。手酌で、ふたたび杯を満たそうとして

「あっ、お、お酌させてよ、ね~ちゃん」

驚くめー姉。メンバーも目を剥く。カイ兄は言った『ね~ちゃん』と。言った本人、自覚して、ユデダコ色に

「ふふふふふっ、カイトォ、久々に聞いたわぁ。懐かしい、可愛かったわね、あの頃。今でも可愛いけど~」

アッケに取られるわたし達。泣き顔を誤魔化すため、これみよがしにイタズラお姉の微笑みで、話し始めるめー姉。カイ兄の首に腕を回し、頬をつついている

「まだ、二人っとも年齢一桁の時ね、そう呼んでくれてたの。懐かし~い。夏休みとかにね、泊まりに来る度、一日中遊んで。ず~と一緒に居て。休みが終わって、帰る日には電車の乗り口で泣いちゃってね」

懐かしさを滲ませながら、今度こそ、破顔するめー姉

「はいはい、ソウデシタ。はぁ~、恥ずかしい。でもね、オレは想ってたんだよ。め~ちゃんは、オレだけのね~さんだって。あの頃から今まで、ずぅ~っと変わらない」

ユデダコ状態から、やや復活しつつカイ兄。ため息をつき、目に涙が浮かんでいる。ただ、開き直ったか、公然と惚気始める。抱き寄せられていた腕を抜け、めー姉の太ももに頭を乗せる。そのまま、寝そべってしまう

「きゃああああ~、オノロケだぁ~。メイコね~さんの膝枕ぁぁぁ。カイトのアニさん、ごちそうさま~」
「天使様が居ないからって甘えちゃってさ~。ったくケシカラネぇ、もっとやれ、ヒュ~」

Mikiちゃんとリリ姉、学年違ってタイプは違えど女子高生。姉兄の関係に敏感な反応を示す

「おお、なんと素晴らしい構図かっ。ぐっじょぶ、メイカイ」
「モハヤ、これもお決まりでゴザル」

激写するミク姉。呆れているアル兄

「も~結婚したら良いんじゃね、めー姉とカイ兄。おれ、お似合いだって思うけどな~」
「あら、レン、おマセな事言うようになったわねぇ。ま、時間とタイミングの問題よ。ねぇ、カ・イ・ト」

片目を瞑り、左手を、甲の側を見せてくる。カイ兄の手を上げさせる姉。よく見ると、その小指に光る、お揃いデザイン、色違いのリング

「あっもしかして~、それ婚約指輪ぁ~」
「わっ、めー姉、カイ兄、結婚するの~」

とてつもなく嬉しげなミク姉。撮影を続けつつ、身をのりだして聞く。わたし自身も前のめりになる

「はは、違うよミク。これはペアリング。ま~、意味合い的には似たようなものかな、リン。一応、そんな意図で贈らせていただきました。オレからめ~ちゃんに」
「うふふ、嬉しかったわ~。まさか、子供の頃から好きだったカイトにね~。追いかけてきてくれるなんて思ってなかったもの」

膝の上、照れっ照れで、眉を下げながらいうカイ兄。夢見心地のめー姉