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第三部5(105)1934年ポスキアーヴォⅡ

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ダイニングに下りると、案の定夫は酔いつぶれてダイニングテーブルに突っ伏していた。

以前よりも痩けた頰には薄っすらと無精髭が生え、眉間には苦難を刻み込んだような深い皺を刻んでいる。

寝落ちた拍子に手にしていたグラスを倒したのだろう。
テーブルに広がるウォッカに長い亜麻色の髪が浸っている。

そんな夫の髪を指で梳き整えてやる。

髪を優しく触られたアレクセイが夢の中から気持ち良さ気に微かな笑みを浮かべる。

「ふふ…。子供みたいな顔しちゃって」

今や決して自分には向けなくなってしまったその柔らかな表情に、ユリウスの顔も綻ぶ。

テーブルに溢れたウォッカを拭き取り、寝ている夫にブランケットを掛けてやり、こめかみにそっと口づけを落とす。

「ゴメンね…。アレクセイ。あなたの人生をかけた仕事を…あんな形で奪ってしまって。あなたの矜持をズタズタにしてしまって」
少し哀し気にユリウスが寝ている夫に詫びる。

そして

「愛してる」

と耳元で囁き、もう一度夫の亜麻色の頭にキスを落とすと、頭からすっぽりとショールを被り前を堅く合わせて、黎明の冷ややかな空気の中へと出て行った。