妖夢の朧な夢日記-aoi
悪夢に苛まれ
咲かぬ桜の、成れの果て
私が見つめた、その事実
いなくなった、一番に考えていた者の、その痕跡を
いつまでも、いつまでも
あの方の遺したものを
いつまでも、いつまでも
もう声を忘れてしまったのに
もう顔も忘れてしまったのに
あの微笑みを、今でも待っている
帰ってくることを、
いつまでも、いつまでも
あの日消えてしまったと
もう何も残っていないということも
わかっていながら待ち続けていた
嗚呼、このまま座っていれば
あの人の形見を抱えていれば
眠りこけて朽ち果ててしまえば
会えるのかな
幸せになれるのかな
開かなくなった目の端で
風と共に消え去ったはずの師の姿が
眠らせていた記憶を、
甦らせたくなかった自らの姿を
呼び起させるような事を言おうとする
やめて、やめて
わかってはいたけれど、わかってはいたけれど
それを理解したら、それを踏んだら
ここにいる意味がなくなってしまう―
薄桃色の、柔らかな声で目が覚めた
あの方が私に向かって、笑いかけていた
―何。私は、ここにいるわよ
作品名:妖夢の朧な夢日記-aoi 作家名:桜坂夢乃