妖夢の朧な夢日記-aoi
首を絞められるような
緑色が、揺らいで見える
広がる毛の束を見て
誰かが目の前にいると知った
相当近くにいるのか、鼓動が聞こえる
誰だ
誰なんだ
声が届かない
声が出ない
口を塞がれている?
何をだ
何を思ってそんなことをしたのだ
訊こうにも動けない
動けないのだ
顎の下を、血液が通っている所を
凝視されているような気がした
けれど、何もできなかった
冷たい指で撫でられる
つー、と血管をなぞる腹
やめろ
やめてくれ
背筋が固まる
凍り付く
目の前の何者かは
反応にも表情にも、何もかも
見向きもせずに、撫で続けた
そも、それを見る目がないのだ
眼球がないのだ
顔は真っ黒に塗り潰されて
思い起こしたくない何かを
私の本能が必死に覆い隠すかのように
幼い子供の悪戯書きの如く
ぐしゃぐしゃに
そんなものを見つめていたら
息ができなくなってきた
強く圧迫されて、
痛い
苦しい
なんで、そんなことをするの
何か、悪い事をした?
投げかけることすらままならずに
鼓動が止む音がした
なのに
終わらなかった
どうしてかなんてもの、思い出したくもない
目の前で頭がころりと人形の様に―
頭頂部を撫でられる感覚で目が覚めた
後頭部には柔らかいものが当たっていた
振り向くと、緑色の髪の少女が心配そうに見つめてくる
―魘されていたみたいだけど、大丈夫?
彼女の問いかけに、肯定の意で返す
―なら、良かった。膝の上に乗せた途端に寝ちゃうものだから、びっくりしちゃった。
こんなにも疲れているんだから、休みなさいよ。
友人が言うんだから、そうなんだろう
その意に沿って、今日はまったりと過ごそうか
その友人の姿は、妙に似ていた
作品名:妖夢の朧な夢日記-aoi 作家名:桜坂夢乃