不幸少年と幸運E英霊の幸福になる方法4
士郎を抱きしめ、その髪を撫で、背中をさすり、アーチャーは呼吸を整え、自身を落ち着け……、やっと伝えておこうという気になった。
「私もともに背負う。お前が抱えてきたものも、その聖杯も。お前が一人ですべてを被ることはない」
「え……?」
少しもがいて身体を離した士郎はアーチャーを見上げる。
「ずっとお前の傍らにいよう。その命が尽き、契約が切れ、お前の身体が朽ちるまでを見届けることはできないが、この世界に存在する限り、お前の傍にいてやろう」
目を瞠り、ぽかん、と口を開けて、士郎はいまだその意味を解せていない。
「マスター、許可を」
二度、三度と瞬き、
「ぅ、ん……」
士郎は頷く。そうして、アーチャーの肩に額を預けた。
「マスター……、泣くな……、頼むから……。こ、こういうのは、弱いんだ……」
どうやら、聖杯が化けた偽物のアーチャーも本物のアーチャーも、士郎に泣かれるのが苦手とみえる。士郎の震える肩を抱き込み、背中をさすってアーチャーは困り果てている。
「っ……ぅ……ごめっ……」
「マスター、だからだな……」
頭を撫でて、ぎゅう、と抱きしめて、ただただ士郎の涙が止まることをアーチャーは願う。
そんなアーチャーを知ってか知らずか、士郎は声を上げることもなく静かに泣いていた。
不幸少年と幸運E英霊の幸福になる方法4 了(2018/3/28)
作品名:不幸少年と幸運E英霊の幸福になる方法4 作家名:さやけ