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宝物は、きみとの時間

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ふーん、とミハエルは頬付けをついたままシュミットを見た。

「結局自分じゃ決められなかったんだ?」

「あいつの悩んでる顔を、離れているより目の前で見るのを選んだだけです」

「……そこだけ聞くと、あんまりいい趣味じゃないよね」

「何とでも言ってください」

ふーんとミハエルは頬杖をついていたが、やがて、ぱちりと指を鳴らした。

「それ、いいね!」

「なんです?」

「僕も誕生日に言ったら同じようにしてくれるかな?」

「……誰にです?」

「決まってるじゃない。エーリッヒに」

「………………リーダーになら、あいつははいと答えるでしょうね」

「そう思う?」

「……わたしとしては、多少不本意ながら」

「不本意なの?」

「………………ええ」

ふーんと、またミハエルは笑った。

「楽しみだな、僕の誕生日!」

「……………そうですね」





 * * * * * * * * * * * *





「僕は、別によかったんですけどね」

「何が?」

「これから先、一生分の時間がプレゼントでも」

言ってしまえば、ミハエルはどこか呆れたように、けれども仕方なさそうに笑った。

「じゃ、言ってあげればいいのに」

喜ぶでしょ、シュミットと言われたが、エーリッヒは首を振った。

「いえ、言いません」

「なんで?」

心底不思議そうにしたミハエル。
入れたての紅茶を差し出すとミハエルはうんと頷いて受け取ったが、なんで言わないのと尋ねる視線は外さない。

「これから先の楽しみが、無くなってしまうでしょう?」

「………ふーん」

言って、紅茶をすすって、ミハエルは肩を竦めた。

「ごちそうさま」





 * Schmidt, alles Gute zum Geburtstag! *


2010.5.3
作品名:宝物は、きみとの時間 作家名:ことかた