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第三部6(106) 1934年ポスキアーヴォⅢ

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テーブルの上に一枚の封筒を置いてミーチャの前に滑らせる。

「中を見ても、いい?」

ミーチャの問いかけにユリウスが無言で首を縦に振った。
母親から緊張感が伝わって来る。

古くなって幾分か黄ばんで来ているものの、母親が後生大事に保管していたのであろう、皺一つない封筒から中身を取り出し検める。

封筒の中には三枚の切手と、差し出した人物からの簡単な手紙が入っていた。

「手紙、読んでもいい?」

ユリウスが頷く。

ゴクリと唾を飲み、ミーチャがその手紙を開く。

使われている紙もインクもかなり上質なもののようで、書かれた文字が劣化することもなく、きちんと判読する事が出来る。
便箋を透かすと透かしが見て取れる。

その手紙には几帳面なキリル文字で、同封された切手の換金方法と、それから母に宛てた簡単な挨拶が認められていた。

署名がないが、男性の手跡である事が分かる。

「ねぇ、母さん。これ…」

ミーチャの疑問にユリウスが「それ以上聞かないで…」とばかりに首を横に振る。

ミーチャは今一度その手紙の、切手の換金方法に目を通す。

そこにはロンドンとパリにある大手の、門外漢のミーチャでもその名を耳にした事のあるオークション会社の連絡先と担当者が記載されていた。

この切手と手紙を母に託した人間は、少なくとも外国のオークション会社に担当者を持つ程の富裕層…恐らくそれは革命前の貴族階級もしくはブルジョア階層に属する人間であろうと容易に想像できた。

ー 当時反目する立場であった支配者層の人間が…何故?しかも外国人のムッターに…?

ミーチャはその手紙をテーブルに置くと、もう一度、目の前の母親の整った顔を見つめた。