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第三部9(109) マゼンタヴィクトリア

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「じゃあ、もう列車の時間が迫ってるから。僕は行くね」

「うん。じゃあクリスマスに」

「あ、ロンドンに行ったついでにアルラウネ伯母さんと会ったよ」

「アルラウネどうだった?」

「元気元気。相変わらずシャキー―っと背筋を伸ばして、キリーっとしてたよ。ここの話したら「私も一度訪問したいわ」って言ってた。クリスマスに伯母さんもここへ来ればいいよね」

「そうだね。…誘ってみようかな。…あの、ネッタは…?」

ユリウスが一番気になる娘の近況をおずおずと尋ねる。

その質問にミーチャは無言で首を横に振った。

「そう…」

「あ、でも伯母さんが「元気よ」とは言ってた。…大丈夫だよ。ネッタだって馬鹿じゃない。それに伯母さんもいるんだ。必ずムッターの事を理解するときが来るよ」
― そんな顔しないで~。さっきみたいな笑顔で僕を見送ってよ。

少しおどけた口調でミーチャがユリウスの顔の高さに屈むと、母親の顔を覗き込んだ。

「そ、そうだね。ありがとう。ミーチャ。じゃあクリスマス楽しみにしてるね。ごちそう作って待ってるから!」

「ホント?楽しみだな~。じゃあね、ファーターによろしく伝えて」

「うん。こちらこそ…、マリオンによろしく伝えて」

最後にギュッと抱き合って互いの両頬にキスを落すと、ミーチャは駅舎へと向かって行った。

そんな息子の後ろ姿を、見えなくなるまでユリウスはじっと見送っていた。