第三部11(111) Messiah 1
「え?ええ〜〜〜〜⁉︎む、無理だよ。いくら何でも、いきなりソ、ソリストなんて」
ユリウスがこれ以上ないというぐらいに両手と首を振ってその案を却下する。
「なぜだ?おまえだって合唱の練習に参加して、曲の流れは全て頭に入ってるだろう?それに…おまえ昔ゼバスでメサイアやった時に、ソプラノソロを務めた事あるじゃないか」
「そ…そうだけど…。もう人前で歌うなんて、30年近くしてないし…」
「だ〜いじょうぶだ!この会場は狭いしよく響く。いつも…俺の前で歌ってるように歌えばいいんだ。な?」
「アレクセイの奥さん、俺からも頼みます。俺たち今日のために一所懸命やって来たんです。何としてでも中止は避けたい。この通り!どうかお願いします」
「頼む!ユリア。どうか、俺を助けると思って!」
大の男二人に拝み倒され、ついにユリウスが折れる。
「分かりました。…それではベストを尽くしましょう」
「へ?」
ユリウスの返事にアレクセイが呆けたような反応を返す。
「だから、ソプラノソロ、引き受けます」
「ま、マジか?」
「もう!この後に及んで、そんな冗談言いません!」
ユリウスの少し焦れたようなその言葉に、漸くアレクセイが正気に返る。
「ありがとう〜〜!ユーレチカ。おまえはやっぱ俺の天使だ!」
アレクセイがユリウスの身体をギュッと抱きしめた。
作品名:第三部11(111) Messiah 1 作家名:orangelatte