第三部13(113) Messiah 3
ユリウスがそのドレスを着てみると、予想通りかなりサイズが大きく、ドレスの中で華奢な彼女の身体が泳いでいる。
ぶかぶかで浮き上がった胸元を押さえているユリウスに、
「みんな、力を貸して頂戴!」
「任せて!」
と町長夫人の号令の元、その場にいた女性関係者がユリウスを取り囲み、彼女の身体に合わせてドレスのお直し作業が開始された。
「細いわね〜。若い娘の身体みたい」
「本当に二人も子供を産んだの⁈信じられないわ」
「このぐらい摘んでも大丈夫?歌う時苦しくない?」
「はい。大丈夫です。ありがとうございます」
「お礼を言うのは私たちの方よ。あなたが代役を引き受けてくれなかったら、私たちの今までの頑張りが、水の泡になる所だった。本当に、ありがとう」
ユリウスを囲んでドレスを摘みピンを打ち、縫い針を走らせている女たちが口々にそう言った。
「私…皆様のお役に立てるんですね」
「お役に立てるどころか…あなたは伝統のメサイアを復活させてくれたアレクセイと並ぶ今回の大功労者よ」
「さ…出来た。キツイところはない?今だったら直せるわよ?」
「キツイところはありませんが…」
その先をモジモジと言い淀む。
「ありませんが?」
皆に促され、言いづらそうに先を続ける。
「あの…胸元が」
皆の視線が手で押さえたユリウスの華奢な胸元に行く。
「それは…」
女たちが目を見合わせた後に、町長夫人が赤い唇の端をゆっくり持ち上げ、その続きを継いだ。
「下着の中にストッキングでも詰めておきなさい」
作品名:第三部13(113) Messiah 3 作家名:orangelatte