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【青エク】(サンプル)ブルールビー、レッドサファイア

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 一


「えーと……」
 勢い込んで部屋へ入った燐が、中を見回した途端に一言呟いて言葉を失う。雪男も同じように一言呟いたものの、一体何をどう説明すれば良いのか判らず、黙った。
 ――これは……、ラブホだろ、ここ!
 雪男は腹の中で、全てを手配したというメフィストの顔に拳を思い切り叩き込む妄想と共に、悪態を吐く。あの男、いや悪魔は「面白そうだから☆」と言う理由で、この本来的に専ら情事に使われることの多い施設――所謂、ファッションホテルとかブティックホテル。もっと直接的にはラブホテルと呼ばれるもの――を「今回も」「わざと」予約したに違いない。
 以前、と言っても任務を始めたばかりの子供の頃、なんだったかの任務がやはり泊りがけで、なんの手違いか祓魔隊全員がこの手の宿に泊まらされたことがあった。手配そのものは騎士團の事務方の誰ぞがやってくれたのだが、その頃はまだインターネットと言うものが今ほど普及していなくて、宿の予約といえば毎年出版される全国の宿泊施設が掲載された雑誌で調べ、都度電話するのだ。その時もフロントらしき空間で、対応に出てきた主が普通のホテルと勘違いしたのを知って、大笑いしていたのを良く覚えている。
 残念ながら他に宿が近くになく、緊急措置として特別に宿泊できることになったのだが、その頃祓魔塾で一緒だった志摩金造と同室になったのは、それもまたそれでひどく苦い思い出だ。ヤニ臭い狭い部屋には鏡張りの天井に、フリルのついたどぎついピンクのシーツと更に派手な紫と金色で模様が描かれた掛け布団と言う丸いダブルベッドが置いてあった。耳年増だった雪男にはフロントでの対応と部屋に入った瞬間に、ここが普通の宿泊施設ではないということを理解していた。が、知識で知っているのと目の当たりにするのはまた違う生々しさがあり、ひどく恥ずかしくて、それをまた金造にしつこくしつこくからかわれて嫌な思いをした記憶がある。それ以来、ある種宿泊施設に対する恐怖が拭えないでいる。

 目の前の光景はその頃に比べたら随分と小綺麗でオシャレだが、以前より余計な知識と経験、そして相手がいる分、余計に扇情的に思えた。燐と雪男は、二人しかいない寮に住んでいるせいか、こういう場所を使う必要がなかった――そもそも、未成年は利用も出来ないのだが。だから、今回も「特別措置」なんて言う便利な言い訳でここを用意されたのだろう――。それに、ここで兄に手を出したら、メフィストのお膳立てにまんまと乗らされたみたいだ。これで任務が終わった後に、なんか訳知り顔なんぞされた日には、メフィストにも自分自身にも腹立たしさが抑えきれなくなる。
 こんなシチュエーション滅多にないのに。
 いや、我慢だ、雪男。
 心の中で天使と悪魔が戦いを繰り広げるが、辛うじて天使が勝つ。
「あー…、どうやら普通のホテルと間違えたみたいだね。あ、いや、最近は普通に利用する人もいるみたいだから、経費削減かも……ね……」
 言い訳にもならない言葉を呟く。燐がふーん、とどう捉えたのか判りかねる返事をしながら、面白そうに部屋の中を見回した。くっ、僕の気も知らないで。
「おっ、風呂せめーけどキレイだぞ! ジャグラーってあれだろ? 泡出るやつだろ?」