第三部14(114) Messiah 4
「さ、これは本番が終わるまで脱げないから、身体が冷えないように火のそばにいらっしゃい」
ドレスを纏ったユリウスを皆が暖炉のそばへと誘導する。
「髪はどうしましょうか?」
ユリウスの肩口あたりでクルクル波打った髪にブラシをかけながら女たちが今度はヘアメイクに取り掛かる。
「髪を上げて綺麗な首のラインを見せるのもいいけれど、こんな綺麗な金髪纏めちゃうの勿体無いわね」
「そうね。じゃあコテで巻いてそのまま下ろしましょうか」
「そうね」
髪を作り、化粧を済ませたユリウスを、皆が一歩引いて全身を確認し、最終的なチェックに入る。
「綺麗ね」
「でも、ちょっと顔まわりが淋しくないかしら?」
「言われてみればそうね」
「ドレスの事ばかり気を取られていて、ジュエリーを持って来るのをすっかり忘れていたわ。…私も年かしら」
町長夫人が頭を抱えてジーザスとばかりに天を仰ぐ。
その時ーー
「ユリア、ちょっと早いけど来ちゃったわ。さっきアレクセイに会って聞いたんだけど、あなたソプラノの代役で舞台に立つのですって?」
楽屋に入って来たのは、アルラウネだった。
「アルラウネ!」
「まぁ、綺麗よ」
ドレスアップしたユリウスを眺め、彼女と抱擁を交わす。
ユリウスから両腕を解いたアルラウネがもう一度ユリウスの全身をしげしげと眺めて言った。
「ちょっと…顔まわりが寂しいわね」
「あなたもそう思います?」
「やっぱり…ネックレスかイヤリングが欲しいところよね」
周りの声にアルラウネが
「あの、すみません。この中で、車をお持ちの方はいらっしゃいますか?」
と楽屋の人間に呼びかける。
アルラウネの問いかけに、
「ウチの主人が車で来ているわよ」
と町長夫人が答えた。
「すみません。ちょっと家に急いで取りに戻りたいものがあるので、車を貸して頂けますか?」
アルラウネの申し出に、
「分かりました。すぐに夫から鍵を借りてきます」
婉然とアルラウネに微笑むと、町長夫人は楽屋を後にした。
ドレスを纏ったユリウスを皆が暖炉のそばへと誘導する。
「髪はどうしましょうか?」
ユリウスの肩口あたりでクルクル波打った髪にブラシをかけながら女たちが今度はヘアメイクに取り掛かる。
「髪を上げて綺麗な首のラインを見せるのもいいけれど、こんな綺麗な金髪纏めちゃうの勿体無いわね」
「そうね。じゃあコテで巻いてそのまま下ろしましょうか」
「そうね」
髪を作り、化粧を済ませたユリウスを、皆が一歩引いて全身を確認し、最終的なチェックに入る。
「綺麗ね」
「でも、ちょっと顔まわりが淋しくないかしら?」
「言われてみればそうね」
「ドレスの事ばかり気を取られていて、ジュエリーを持って来るのをすっかり忘れていたわ。…私も年かしら」
町長夫人が頭を抱えてジーザスとばかりに天を仰ぐ。
その時ーー
「ユリア、ちょっと早いけど来ちゃったわ。さっきアレクセイに会って聞いたんだけど、あなたソプラノの代役で舞台に立つのですって?」
楽屋に入って来たのは、アルラウネだった。
「アルラウネ!」
「まぁ、綺麗よ」
ドレスアップしたユリウスを眺め、彼女と抱擁を交わす。
ユリウスから両腕を解いたアルラウネがもう一度ユリウスの全身をしげしげと眺めて言った。
「ちょっと…顔まわりが寂しいわね」
「あなたもそう思います?」
「やっぱり…ネックレスかイヤリングが欲しいところよね」
周りの声にアルラウネが
「あの、すみません。この中で、車をお持ちの方はいらっしゃいますか?」
と楽屋の人間に呼びかける。
アルラウネの問いかけに、
「ウチの主人が車で来ているわよ」
と町長夫人が答えた。
「すみません。ちょっと家に急いで取りに戻りたいものがあるので、車を貸して頂けますか?」
アルラウネの申し出に、
「分かりました。すぐに夫から鍵を借りてきます」
婉然とアルラウネに微笑むと、町長夫人は楽屋を後にした。
作品名:第三部14(114) Messiah 4 作家名:orangelatte