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MEMORY 序章

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 入学式の日に、茶渡と一緒にいた所為か、ヤンキーに絡まれそれを振り払った事を切っ掛けに、小島水色と浅野啓吾と知り合い、男女に拘りのない一護は彼らとも友人になった。
 啓吾は一護の容姿に目をハートにしていたが、一護は必要以上の接触はきれいにスルーしていた。
 高校受験で剣道部を引退した後、一護は高校に進学してからは部活には入らないと決めていた。
 一護の家が駅から近い事を知った水色と啓吾が一緒に帰ろうと一護を誘うが、一護は寄る所があるからと断る。バス停に向かう事のない一護に、水色と啓吾は好奇心で後を付ける。
 一護は軽い足取りで、高校から三宮まで歩き、一軒の駄菓子屋に辿り着く。

「なんだよ、一護って、高校生にもなって駄菓子なんて買うのかよ。」

 くくっと喉で笑う啓吾に、水色は賛同する気配もなく観察している。
 一護は店の前で掃除をしている少女と少年に声を掛けている。

「雨、ジン太。」
「黒崎さん。」
「おう、オレンジ頭。」
「今日は早いんですね。」
「入学式だったからね。浦原さん、起きてる?」
「店長、昨夜は徹夜してたらしいから、まだ起きてねぇかもな。」
「テッサイさんは?」
「店番してるぜ。」
「そっか。少し待ってみて。浦原さんが起きなかったら帰るかな。」

 挨拶を交わすと馴れた調子で店に入っていく。雨と呼ばれていた少女も後に続いた。

「あ、ずりぃぞ、雨。」

 叫んで箒を放り出して続こうとしたジン太という少年に、一護は箒を持ってくるように注意する。

「随分と親しそうだね。」
「だな。一護の家からは結構離れてるけど、この店の常連だったとか?」

 こそこそと会話をしながら、店のガラス戸越しでは気付かれるので、脇に寄って中の様子を窺う。

「こんにちは、テッサイさん。」
「おお、黒崎殿。高校の制服もよくお似合いですな。」
「ははっ、ありがと。」
「店長は朝になってからお休みになられたので、暫く起きてこないと思いますが、お待ちになりますか?」
「なぁにさ。制服見せろって言うから、態々入学式の帰りに寄ったのに。」
「まぁまぁ。黒崎殿が起こしに行かれれば、間違いなく店長も起きますぞ。お昼を召し上がっていかれませんか?」
「う~ん。テッサイさんのご飯は滅法魅力的だけど、私も帰ってお昼作らなきゃ。」
「左様ですか? 店長が残念がりますな。」
「寝てるのが悪いって言っといて。」

 くすくす笑って、一護は店から出てくる。

「黒崎さん。」

 後を追ってきた雨の頭を撫でて、一護は目を細める。

「お昼食べたら出直してくるから、浦原さんがまだ寝てたら一緒に遊ぼうか?」
「あい。」

 嬉しそうに頷く雨に、一護はくすりと笑って、踵を返した。
 そこから一護の自宅まで、結構な道のりを軽い足取りで歩き切り、水色と啓吾はどうかすると遅れてしまいがちに後を付いていった。

「一護って随分と歩くの速いんだね。」
「そんなに大股に見えないよな。」
「足の運びが速いんだよ。姿勢も綺麗だし、モデルみたいに綺麗に歩くよね。」
「うんうん。」

 鼻の下が延びている啓吾に構う事なく、水色は先程のシーンを思い出していた。
 あまり表情を変えない一護に頓着する様子もなく、店の者達は一護に対していた。表情筋はあまり動いていないが、纏う雰囲気が優しく温かい一護は、水色にとって女の子という認識外で友人になりたいと思わせる存在だった。
 次の角を曲がればクロサキ医院が見えるという所で、一護に続いて角を曲がった二人は目の前に腕を組んだ一護が立っているのに気付いて慌てて足を止める。

「尾行、ご苦労さん。あんたらお昼どうするのさ?」
「やっ…えっと……。」
「なんだ、ばれてたんだ?」

 慌てる啓吾と違い、水色は悪びれもしない。
 一護は水色の態度にも怒る気配もなく、二人に小首を傾げてみせる。

「当たり前じゃん。下手くそな尾行。特にケイゴは気配が騒がしいからすぐに判るよ。で? お昼、どうするんだ?」
「どうするって、テキトーに?」
「僕も今日はテキトーに、だね。」
「なら、ついでに作ってやるから食べてけば?」
「えっ! いいのか、一護。」
「口に合わなくても文句言うなよ?」

 言って一護は二人を連れて自宅の玄関を潜った。

「着替えてくるからリビングで待ってて。」

 一護はリビングのドアを示して階段を上がっていく。
 水色と啓吾は言われる儘にリビングのドアを潜った。
 壁に貼られた大きなポスターのような写真は一護と似た美人だ。

「誰だ、この美人!」

 思わず口走った啓吾に、水色は写真をしげしげ見る。

「一護と似てるね。でも一護より年上みたいだし……。モデルしてるお姉さんでもいるのかな?」

 水色は素直に感想を述べたのだが、その言葉を耳にして舞い上がった男が一人いた。

「そう思うかね?」

 派手なシャツの上に白衣を引っ掛けた髭面の男がいきなり眼前に迫り、水色が身を引く。ドン引きしている水色に気付く事無く、真咲が如何に美しい女性かを披露するように口走る男に圧倒されて黙り込んでいると、ドアを開けて着替えを済ませた一護がリビングに入ってくる。

「あ、一……」

 水色が気付いて名前を呼ぼうとするより早く、一護の踵落としが男の頭頂に炸裂する。

「…護……?」
「見ず知らずの相手にすら妻自慢をするか。恥晒しをするんじゃない。」

 クールに言い置いて、一護はシャツとジーンズの姿にダイニング・チェアに掛けられていたエプロンを着けてキッチンに立った。

「い、一護……おかえり……。」
「ただいま。自己紹介よりも先に嫁自慢を始める男が父親だなんて、私に恥を掻かせるんじゃない。」
「へぇ、一護のお父さんなんだ。……初めまして、一護さんのクラスメイトになった小島水色です。」
「同じく浅野啓吾です。」

 こりゃご丁寧にどうも、などと気さくに挨拶する父親を放っておいて、一護は昼食の準備を始める。
 父・一心と啓吾のテンションは同じほどに高い。そのハイテンションを前にしても水色は少しもたじろぐ気配もなく、一護はその様子に感心する。
 手早く用意されたスパゲティとサラダをテーブルに並べ、一護は真咲の美しさについて話題が盛り上がる三人を呼んだ。
 水色はすぐにテーブルに着き、啓吾と一心は真咲の話題に盛り上がりすぐに来ない。

「一護って料理上手なんだね。」

 一口食べて水色は笑顔で一護を誉めた。

「そう? 馴れただけだと思うけどね。何しろもうじき六年だし。」

 水色の誉め言葉にも、一護の顔色は変わらない。一護自身の舌はテッサイの料理に鍛えられているので、自分の料理などまだまだだと思っている所為もある。

「お父さん。いつまで嫁自慢に陶酔してるの。私この後出掛けるんだから、片付けに困るでしょ。それともちゃんとお皿を割らずに洗い物してくれるの?」
「おっ?」

 粗方食べ終わった一護からのクレームに、漸く一心は啓吾を解放した。
作品名:MEMORY 序章 作家名:亜梨沙