二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

MEMORY 死神代行篇

INDEX|18ページ/45ページ|

次のページ前のページ
 




 改造魂魄が蹴りを掛けた鍵根教諭に先に記換神器を使い、教室に戻ると、案の定、騒ぎの後の気不味さが充満していた。その中を、一護は淡々とぬいぐるみの行方を尋ね、幸いにも織姫が拾っておいてくれた事に感謝した。受け取ったぬいぐるみに改造魂魄を入れてから、トートバッグに詰めて、ルキアは一護の合図で記換神器を使った。
 帰宅途中、トートバッグに改造魂魄入りぬいぐるみを詰めたまま浦原商店に立ち寄る。

「黒崎サン。」
「こんにちは。」
「……いらっしゃい。」

 この件には関与しない。
 その言葉通り、浦原は常もと同じように一護を迎える。一護もそれを良しとしているので、蒸し返す心算はない。
 茶の間で休憩しながら、一護はトートバッグからぬいぐるみを取り出す。

「黒崎サン? ぬいぐるみを愛でる趣味なんてありました?」
「ないよぉ。」

 ならば何故、と訊こうとした浦原の口が薄く開いたままで停まる。無意識でも霊圧探査をしてしまう浦原は、ぬいぐるみに改造魂魄が入っている事に気付いたのだ。

「キャンディケースの代わりにぬいぐるみッスか?」
「代わり、というか、まぁねぇ。」

 一護は小さく溜息を吐く。

「四十六室の意に染まない存在でも、間違いでも、この世に生まれたのはこいつの意思じゃないわけだし? 勝手に生み出しておいて都合が悪いから破棄なんて、それこそ勝手が過ぎるじゃん、て私は思うわけ。」

 小首を傾げて無表情なままで口を開く一護の瞳に怒りが宿っているのを見て、浦原は改造魂魄が置かれた状況以外に、何か一護が怒りを覚えているのだと気付く。

「それにしてもぬいぐるみに対応出来るとは意外でしたねぇ。」

 無機物に対応可能なら他の使い道があるかも知れないし。
 浦原が研究者ならではの好奇心を発揮する科白を口にする。

「改造魂魄もモッドソウルも呼び難いな。……コン、で良いな。」
「おい、こら、一護。なんだそのネーミングは!」
「改造魂魄のコンで良いじゃん。」
「いやだっ! どうせならカイにしろよ、カイが良いっ!」

 駄々を捏ねる改造魂魄に、まともに相手をしてやっている一護の瞳に、悪戯な光が浮いている。浦原商店ではあまり見ないが、一護はどうやら改造魂魄を揶揄っているようだ。

「駄目、カイだとちょっとだけカッコいいから。」
「カッコいいから良いんじゃなえぇか。」
「コンなら魂魄のコンだって言えるけど、カイだと何処から取ったと訊かれたらどうする心算だ?」

 ぐっと詰まる改造魂魄に、浦原は『抑々誰に訊かれるというのだろう』と思考を巡らせるが、改造魂魄は気付かないようだ。

「姐さ~ん。」

 一護がひどいんだ、と訴えるぬいぐるみがルキアの脚に縋り、生足に至福を覚えている事に気付くと、ルキアは首根っこを掴み上げぐりぐりと畳にぬいぐるみの顔面を押し付けた。

「コン。私の肉体に入っている間は、そのスケベ根性を発揮するなよ。」

 湯呑を傾けながら、さらりと言ってのける一護に、コンを厭う気配はない。

「痛い、痛い、姐さん、勘弁して。」
「そのぬいぐるみに神経は通っていない筈なんだが?」
「入っているのが改造魂魄でも、変わらないか?」

 ルキアの疑問に、一護が小さく息を吐く。

「モッド・ソウルなら余計だろうが。死体に注入する予定だったなら、下手に痛みを感じる方が使えないんじゃないか? だから私の体で傷なんぞ負ってくれたんだろうが。」
「一護も姐さんも酷いっ!」

 よよっと泣き真似をするコンに、一護もルキアも態度は冷たい。ルキアの膝に懐いた際に見せたスケベ心が仇になっているのだろう。

「まぁまぁ、コンさんも男の端くれ。スケベ心くらいあって当然ッスから。」
「「浦原(さん)!」」
「ハイ?」

 声を揃えて名を呼ばれて、浦原が目を瞠る。

「乙女が男のスケベ心に示す許容範囲は、下品にならない程度の、言葉遊びと好いた男にだけだ。」

 ルキアの断言に一護も深く頷く。

「あら………。コンさんのは許容範囲外ですって。」
「ううっ………。」

 泣き真似をしていたコンは、端から相手にされないと断言されて凹む。
 一護とルキアは、浦原商店に来ると、雨を入れて三人で姦しく会話を交わす。といっても、一護もルキアもキャラキャラ騒ぐ性質ではないので、三人で並んでテッサイの作ったおやつを楽しむくらいのものなのだが。
 それでも気の弱い雨が嬉しそうに笑う顔を、浦原は最近目にする。
 一護が此処に出入りを始めた頃は、雨とジン太は同世代という見掛けだったが、一護は現世の子供であるから成長する。あっという間に二人よりも年上の見掛けになり、見掛けの通りに一護は二人に姉のように接するようになった。



作品名:MEMORY 死神代行篇 作家名:亜梨沙