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MEMORY 死神代行篇

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 ルキアは野暮用があるから一人で帰ると言ったが、一護は浦原商店に用があると言ってルキアに同行した。

「一護。」
「浦原さんに滅却師について訊ねる気なんだろ。私は浦原さんに預けた物を受け取れるかどうか訊きに行く心算なんだ。」
「預けた物?」

 それ以上ルキアの疑問に応える気がないらしく、一護は無言でルキアと並んだ。
 浦原商店の店先では、ジン太が雨に絡んで虐めている。テッサイがジン太を持ち上げて地上から3mに吊るし上げて仕置きしている姿が見えた。テッサイの腰を蹴り付けて痛みに蹲るルキアを置き去りに、一護は一足先に店内へ足を踏み入れた。背中から届くジン太の悪態は無視である。

「こんにちは、浦原さん。」
「おや、いらっしゃい。」
「早速だけど、私のペンダント、改良出来てる?」
「………。」

 逃げを許さない視線を向けてくる一護に、浦原は無言で懐からペンダントを取り出して掌に載せて見せた。拾い上げたペンダントを一護が首に掛けたところへ、店内に入ってきたルキアが浦原に伝令神器を投げつけた。浦原の顔にヒットして後方へ飛んだ伝令神器が床に落ちる前に、一護がキャッチする。

「ルキアは滅却師について訊きたいんだとさ。説明してやって。それが済んだら姫とチャドの保護頼む。」
「黒崎サン?」

 不機嫌そうに言う一護に、浦原が不思議そうに小首を傾げる。

「石田は、滅却師の誇りだの死神を憎むだのしか考えずに、莫迦をやらかす気らしいからね。」
「石田が、何をやらかす気だというのだ、一護?」

 ルキアの問いに、一護は溜息を吐く。

「石田の傍に、撒き餌の臭いがする。」
「撒き餌?」
「虚を誘き寄せる撒き餌の臭いだ。」
「なっ……!」

 浦原が帽子の下に隠した眼は驚愕に見開かれている。

「この町で虚寄せの撒き餌なんぞ使ったら何が起こるか、理解ってないんだよ、あのバカは。」
「……黒崎サンは何が起こるかお判りで?」
「重霊地であるこの街で撒き餌なんぞ使った日には、大虚を引き寄せるくらいに虚が出現するだろうね。」
「大虚、だとっ⁉」

 顔を強張らせているルキアに、一護は小首を傾げる。

「莫迦なっ、大虚など、王族特務の管轄だぞっ!」
「アホか。大虚の一体や二体、力のある滅却師なら簡単に倒せる代物だぞ。死神の平隊員なら兎も角、上位席官で大虚を倒せないほど力が弱くて護廷など務まるわけないだろう。」
「お前に何が……っ」
「真央霊術院、だっけ? 死神の学校。」
「何故、それを……っ!」

 一護の言葉に驚いて浦原を振り返るルキアに溜息を吐いて、一護は遮るように言葉を継いだ。

「浦原さんから聞いたわけじゃない。私にも情報源はあるって常も言ってるだろう。兎に角、そこで教えるのは死神としての基礎の基礎だけだそうだ。つまり卒業すれば平隊員なら務まる。滅却師がなんであるかを知ってる死神自体、殆どいない筈だぞ。」
「お前は知っていると言う心算か?」
「……言ったろ。私の母は元・滅却師だ。」

 無言になったルキアに、一護は溜息を吐く。

「私には訊き難くて浦原さんに訊こうと思ったんだろ。滅却師の何たるかの本当のところは、千年以上昔に生きていたような死神でなきゃ判んないと思うぞ。瀞霊廷の上層部が隠蔽したみたいだからな。」
「中央四十六室が隠蔽など……っ!」
「アホ。」
「! 一護っ!」

 声を荒げるルキアにも一護は微塵も動じない。その様子に浦原は考え込む。一護は浦原も知らない事をたくさん知っているようだ。

「石田の阿呆は、撒き餌で誘き寄せた虚を倒して街を護れる気でいるらしいけど、此処が重霊地である事に気付いてもいない。お門違いの恨みをぶつけてくる餓鬼の尻拭いをしなきゃならないなんて迷惑な話だけどね。収まりの付かない餓鬼は、発散させてやる以外に始末が付けられないんだろうから、付き合ってやるさ。」

 踵を返そうとした一護が、ふと、立ち止まる。

「ああ、そうだ、浦原さん?」
「ハイ?」

 振り向いた一護が口元だけに笑みらしきものを浮かべて言葉を紡ぐ。

「石田の阿呆と違って、承知で撒き餌を売りつけた強欲商人さんは、責任持って大虚が現れた場合の虚の始末と空の修復をしてよね。」
「!」
「何だとっ⁉ 浦原っ、貴様……!」

 浦原に掴み掛ろうとするルキアを一護が止める。

「浦原さんは後始末引き受ける気があって撒き餌を売り付けたんだよ。責め立てるよりきっちり責任取らせる方が大事。私は家に寄ってコンを拾ってから石田と対決するから、ルキアも気を付けろよ。」

 一護に言われて、ルキアは憤懣やるかたないとばかりに鼻息を荒くしながらも、浦原をキッと睨み付けるだけでそれ以上抗議しなかった。

「兎に角、滅却師について情報を寄越せ。」
「……ハイハイ。」

 情報量をせしめる事が出来ないな、と内心でごちながら、浦原はルキアに滅却師について説明した。
 一護は浦原商店から自宅へ帰り、Tシャツとジーンズに着替えてぬいぐるみを掴んで雨竜の気配を追って駆け出した。



作品名:MEMORY 死神代行篇 作家名:亜梨沙