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MEMORY 死神代行篇

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 一護は雨竜の反論は端から無視して雨竜の背中側に立つと、襲い掛かる虚を斬魄刀で屠り始める。

「!」

 一護に視線を向けていた雨竜の視界の外から襲い掛かられる。雨竜が気付いた時には、一護の斬魄刀が虚を貫いていた。

「ボケっとすんなっ! 滅却師の力を見せつけるとか豪語した癖に何をぼんやりしてんだっ!」
「くっ……!」

 お返しとばかりに、雨竜は一護の背後から襲い掛かろうとしていた虚を矢で撃つ。

「……それでいんだよ。」

 そう言って、一護は後は無言で虚を屠り続けた。
 戦いながら、雨竜は吐き出すように祖父が死神に見殺しにされた恨みを一護にぶつけて言葉を紡ぐ。
 一護は同情を交える事なく聴いていたが、冷たく一言返した。

「だからどうした?」
「なっ……!」
「テメェは目の前でじーさんが虚に殺されるとこを見てたんだろ。少なくともじーさんを殺した虚はじーさん自身が引き寄せた物だったんじゃねぇの?」
「何が言いたいっ!」

 感情的になって一護を振り返る雨竜の視界の端で虚が動く。反応しきれない雨竜の代わりに。またしても一護が雨竜に襲い掛かる虚を屠る。

「私の母は、罠に掛かった私を助ける為に虚の餌食になった。私の所為で父親は妻を失い、幼い妹達は母を失ったのに、家族の誰も私を責めなかった。それがどんなにつらい事かあんたは知らないだろう。」

 淡々と語る一護に、雨竜は言葉を呑む。

「甘ったれんな。」

 一護の冷静な声が雨竜の耳を打つ。

「自分の負い目まで責任転換してるから、そう仕向けた死神だけじゃなく、全ての死神を憎むなんて考えになるんだ。テメェは自分の責任からも逃げてんだよ。」
「なっ……!」
「私は私の所為で母を虚に殺される羽目になった。だったら、私はこれからも家族を護っていく。私と同じ存在を造らない為に虚を倒す。個人の恨みなんぞに囚われている暇はねぇんだよ。」

 益々虚の数が増える。空紋は広がっていく。
 見て取った一護は、そろそろ浦原が援助に来る頃だと判断する。
 大虚が亀裂から顔を出すのと、隙間なく寄ってきた虚の一部が崩れるのは粗同時だった。

「くっろさっきさーん、助けに来てあげましたよーん。」

 巫山戯ているような浦原の物言いに軽く溜息を吐いて、一護は浦原に視線をやる。
 ジン太が無敵跌棍で「ジン太ホームラン!」と叫びながら虚を打ちのめし、雨が千連魄殺大砲で打ち抜く。テッサイが跌掌で虚を吹き飛ばす。
 浦原商店のメンバーの乱入で虚の垣根がみるみる崩れていく。
 浦原の、鼻歌でも歌っているような表情を見て、一護は深く溜息を吐いた。

「周りの虚はアタシらが引き受けますよ。黒崎サンがあいつとの戦いに専念出来るようにね。」

 浦原の指が、空紋から顔を出す大虚を示す。

「ほら。無駄口を叩いている暇なんてないッスよ。」

 空紋に爪を掛けて隙間を拡げている大虚。
 集まってくる虚を舌で突き刺し噛み砕いて食っていく。

「うっわぁ……グロい。」

 一護が暢気な声で言うと、雨竜が苛立つように視線を向ける。
 向けた視線の先の一護は声を裏切るように鋭い視線を大虚に向けていた。

「黒崎、どうするんだ。」
「ん~。無策で突進しても仕方ないし………。」

 少し考えていた一護は、雨竜を振り返り、雨竜越しに浦原に視線を送る。一護の視線に無表情を返し、浦原は拡げた扇子に口元を隠した。
 一護は眼を眇めて浦原の視線を捕えると、一つ息を吐いて抜いていた斬魄刀を正面に構えた。

「石田。」
「なんだ?」
「巻き込まれねぇように、下がってろ。」
「僕はっ」
「私の霊力が暴走しない保証はないからな。浦原さん、結界宜しく。」
「いーッスよ。お高いッスけど。」
「……浦原さん?」

 語尾にハートマークが付いた浦原の声に返った一護の声はトーンが低くなっていた。

「ハイ?」
「石田が何する心算か気付いてて、虚用の撒き餌を売り付けたの浦原さんだよね?」
「え?」
「尸魂界から隠す為の結界とは言ってない。関係者以外立ち入り禁止の結界を張ってくれれば良いんだから、サービスでね。」

 石田が撒き餌を取り出した時点で、一護は撒き餌に浦原の霊圧が絡んでいる事に気付いていた。

「流石に、この段階でいきなり大虚の相手して、霊圧暴走させない自信はないからさ。」
「倒す自信がない、とは言わないんスね。」
「最悪でも追い返すくらいは出来んじゃね?」

 一護の忠告を無視して動こうとしない雨竜を浦原の方へ押しやって、一護は斬魄刀を構え直した。

「駆けろ、天鎖。」

 解号を唱えた一護に応えて、斬魄刀が只の日本刀から変形し大振りな黒い二本の刀に変わる。

「なっ……!」

 晶露明夜が一護の斬魄刀だと思っていた雨竜は驚いて一護を見直す。
 事態の展開に驚いて一護の霊球の中から抜け出したルキアが一護に駆け寄ろうとするのを、浦原が止め立てする。

「浦原ッ、貴様、一護を殺す気かっ!」
「まさか。」
「だったら……っ!」

 言い募ろうとするルキアの首筋を指先で軽く叩いて縛道を仕掛けた浦原に、ルキアは目を瞠る。

「この戦いは避けて通れない。必要なんスよ。朽木サンにとっても黒崎サンにとっても、ね。」

 浦原の傍に押し遣られた雨竜が一護に近寄ると、手にしている霊弓がドン、と大きくなる。雨竜の力で集めていた霊子の量など比べ物にならない大きさになった弓に雨竜は目を瞠る。
 先程まで、背中合わせで虚と対峙していた時にはこんな変化はなかった。一護の構える刀がさっき見た時と違う理由までは理解らないが、死神の能力によって斬魄刀が形を変える刀だという事は知っている。

「黒崎。あのデカブツ相手にそんな刀でどうする心算なんだっ!」

 噛み付く勢いの雨竜に、一護は不思議そうに小首を傾げて、雨竜が死神を憎むと口で言いながら何も知らないという事に気付く。

「悪いが石田。あんたの力は私が暴走した場合の為にとっておいてくれる?」
「何を言ってるんだっ!」
「論より証拠。」

 言って、一護は大虚の足元目掛けて走り寄る。

(虚閃は晶露の中に凝縮しきれる霊圧じゃない。散らすしかないけど跳ね返すだけじゃ周囲に被害が出る。質を変えるしかないんだ。力を貸せ、天鎖。)
(『俺が喰らって叩き返してやんよ。』)
(充分。ありがと。)

 大虚が虚閃を放つのと一護が斬魄刀を翳すのが同時になり、虚閃が一護の斬魄刀で跳ね返される。

「「!!」」

 浦原は顔色も変えずに見ている。
 虚閃を受け留めながら一護の霊圧も上がっている。
 斬魄刀に跳ね返される大虚の霊圧は、跳ね返る瞬間に質を変えているらしく、強風が吹き荒れているものの、周囲にそれ以外の被害は出ていない。

(『いつまでも受け留めるだけじゃあ、芸がないぜ?』)
(伊達に霊圧上げてない。害がないくらいまで虚閃の力が散ったら、その儘月牙を飛ばすよ。)
(『おうよ。』)

 一護は無我夢中を装って、口中で「月牙天衝」と唱えて霊圧を飛ばす。
 虚閃の力の一部をそのまま載せてカウンターで放った月牙天衝は、大虚を一刀両断した。両断された大虚の姿が、塵となって消えていく。

「……やり過ぎたかな。」
作品名:MEMORY 死神代行篇 作家名:亜梨沙