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MEMORY 死神代行篇

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 言いながら、一護は織姫と茶渡の霊絡を探り二人の霊絡の先を掴んで少しだけ力を送り込んだ。
 天鎖の始解を解除し、晶露明夜を取り出して縦に構える。

「『金紗、晶露』」

 剣先からピンポンサイズの零球が次々に飛び出し、透明なそれが蒼く染まっていく。

「く、黒崎?」

 一護の体を埋め尽くすほどの霊球が蒼く染まる頃、一護は霊球を作るのをやめた。霊球に触れようとした雨竜に慌てて声を掛ける。

「待て、石田。うっかり障ると、霊球が爆発して、連鎖爆発を起こすぞ。」

 一護の言葉に雨竜が慌てて手を引っ込める。雨竜の目の前で、一護は晶露明夜を発動し続けるが、雨竜は力の種類を読み取れないらしく眉を顰めて何も言わずに見ている。

「『瑠璃月、旋風』。」

 風が起こり、霊球を巻き上げる。一護が高く翳した刀に霊球が吸い込まれていく。雨竜が目を瞠る中、晶露明夜の太刀が光を放ち鎮まった後には、一護の手から刀は消えていた。

「一体……何が……?」

 深く息を吐いた一護は、浦原の隣で縛道に縛られた儘のルキアに近付くと、肩に手を載せた。それだけでルキアに掛けられていた縛道が解ける。

「え?」

 驚くルキアを尻目に、ルキアの肩から手を放した一護はコンを手招いて有無を言わさず体に戻る。

「黒崎サン。」

 呼び掛ける浦原に苦笑を向けて、其の儘倒れてしまった一護の体を浦原が受け留める。

「石田に、貸し、一つ、って、言っといて……。」

 呟くように言って失神した一護に苦笑して、浦原は一護の体を抱き上げた。
 一護が体に戻ると同時に飛び出したコンを胸ポケットに入れていた事に気付いた浦原は、渋い顔をしたものの、その儘無言で一護の体を運んでいく。
 ルキアも雨竜も何となく一緒に移動していった。
 歩道橋の上に残してきた織姫と茶渡にはジン太が伝言に走り、一護の傍を離れたがらない雨が浦原の隣に座り、テッサイが運転する車で浦原商店まで戻った。

「車を置いて参ります。」
「頼みます。」

 短い言葉を交わして浦原が一護を抱き下ろし、雨は急いで店の奥へ走り込んでいく。

「お二人は此処で少々お待ち下さいナ。」

 浦原は言って奥へ上がり、後に続こうとしたルキアの襟首をいつの間にか来ていたテッサイが掴んで抑えた。

「放さんか。」
「こちらでお待ちください。」

 圧倒的な力でルキアの動きを封じたテッサイが奥へ入って行くと、入れ違いに浦原が戻ってくる。

「いやぁ、お待たせしちゃって。」
「浦原、一護は?」
「黒崎サンはいきなり大きな霊力を使った所為で疲れただけッス。」
「暴走したわけではないのだな?」
「大丈夫ッスよ。黒崎サンは以前から自分の霊力の高さを御存知だったッスからね。」
「何っ⁉」

 浦原の何気ない一言に、ルキアも雨竜も驚いて目を瞠る。

「石田サンに、黒崎サンから伝言ッス。『貸し、一つ』だそうッスよ。」
「!」

 気にしていた雨竜は驚いて目を瞠る。

「店長、黒崎殿のお着替えが済みました。」
「ありがと、テッサイ。」

 気配もなく奥から現れたテッサイの言葉に、浦原は一つ頷いてルキアと雨竜を促した。
 促されるままに奥へ向かったルキアと雨竜は、長い廊下を歩きながら有り得ない構造に困惑顔だ。浦原商店が建つ敷地は、こんなに長い廊下を有する事が叶うほど広くない。
 二階の陽当たりの良い部屋に通されると、敷かれた布団に寝かされた一護の傍に雨が付いている。雨の隣に並んで腰を下ろしたルキアと雨竜は、一護が浴衣に着替えさせられている事に気付いた。急遽運び込まれた一護用の着替えがあるなどと、随分用意の良い店なのだと雨竜が感心していると、一護がうっすらと目を開けた。

「気が付いたッスか、黒崎サン。」
「……浦原、さん…?」
「覚えてません? 力の使い過ぎて失神したんスよ。」
「あ……、そっか。……みっともねぇの。」

 苦笑して一護が呟く。

「一護。」
「黒崎。」

 ルキアと雨竜の声に二人の存在に気付いた一護が、浦原に視線で尋ねると浦原は苦笑して頷く。
 一護は危なげなく体を起こし、自分が浴衣姿である事に気付いて困惑すると、雨が薄手の羽織を一護の肩に掛ける。

「ありがと、雨。」
「……あい。」

 一護のしっとりした仕草に雨竜が頬を染める。

「石田? どうかしたのか?」
「いや……。」

 不思議そうに小首を傾げた一護に、雨竜は言葉を濁したが、顔を背けて口を開く。

「まるで女性のような仕草をするから……。」
「まるで?」

 雨竜の物言いに浦原商店のメンバーもルキアも不思議そうな顔をする。

「おーい、オレンジ頭、大丈夫かぁ?」

 意味が理解らず頭の上に疑問符を浮かべているみんなの所へ、織姫達に伝言を届けたジン太が戻ってくる。

「ジン太、ご苦労様。」
「おう。」

 浦原の労いに、ジン太は得意そうに言って、一護の顔を覗き込む。

「あれくらいで伸びちまうなんて情けねぇぞ、オレンジ頭。」
「喧しいわ。」
「まぁ、でも大虚を消しちまうなんて、女とは思えねぇよ。お前。」
「えっ⁉」

 ジン太の言葉に雨竜が声を上げて、雨竜の困惑の原因に見当がついていた一護は予想が当たって溜息を吐いた。

「何を驚いているのだ、石田?」

 見当が付いていなかったメンバーを代表してルキアが口を開くと、雨竜が困惑したように一護とみんなの顔を見比べる。
 一護は溜息を吐いて頭を振る。

「石田はどうやら観音寺のおっさんと同じ勘違いをしていたらしいな。」
「「はぁっ⁉」」

 ルキアと浦原が声を揃えて呆気に取られて雨竜を見遣り、他の三人は不思議そうに雨竜と一護を見比べる。

「学年首位のくせに、私がある日いきなり死神になったからってお門違いの恨みをぶつけた上に、私の性別判ってなかったんだ?」

 一護が揶揄うように雨竜に流し目をくれると、みんなは呆れたように雨竜を見る。
 雨竜当人はといえば、死神に対して恨みを持っているとはいえ、女性に喧嘩を仕掛けた事に気付いてショックを受けていた。

「道理でね。ルキアじゃなく私に喧嘩を吹っ掛けてくるから、力の強さで選んだのかと思ってたら、私を男と思ってたから本物の死神であるルキアじゃなく私を選んだわけか。」
「う………。」

 一護の溜息が更に雨竜を追い詰める。

「仮にもクラスメイトだったのに性別間違えてたなんて、石田への貸し二つだからね。」
「……理解ってる。」

 渋々ながらも、雨竜は自分の非を素直に認めた。


作品名:MEMORY 死神代行篇 作家名:亜梨沙