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MEMORY 死神代行篇

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「確かに私も家族もルキアに助けて貰ったから、冤罪で殺されるかも知れないルキアを助けたいけどさ。」

 一護は膝に落ちているルキアの手を取って握る。

「ルキアは私に、また同じ思いをしろって言うのか?」
「えっ?」
「六年前、私が虚の罠に掛かった所為で私を護った母が殺されたみたいに、ルキアが私と家族を庇う為に取った手段の所為で処刑されるのを、黙って見て居ろって言うのか?」
「一……」
「母の時は、何が起こったのか判る前に母は殺されてた。ルキアを助けられる可能性があるのに、それを無視して身の安全を図って後悔だけを抱えて生きろって言うのか?」
「一護………。」

 眉を寄せるルキアに、一護は苦笑する。

「ルキア。出来るかも知れないなんて気持ちで挑んだって失敗するのがオチだ。出来る出来ないじゃない。やるんだよ。その為には色々な想定をして備える必要があるんだ。」

 一護が肩を竦めると、ルキアは困惑を残したまま苦笑を浮かべた。

「一つだけ言っとく。ルキア。」
「なんだ?」
「私が尸魂界の事や死神の力の程を何も知らないとか思うなよ?」
「………。」
「ルキアを助けようと動く者だって、瀞霊廷の中には必ずいる。流されるままになるな。」
「一護………?」

 納得していないルキアの様子を見て取って一護は溜息を吐くが、これ以上は言葉で言っても理解らないだろうと見切りを付ける。
 ルキアは、一護に何を言われたところで、一護が死神の力を本当に把握しているなどと信じられなかった。現世に生きる子供が、死神の使命の本質を把握して力を貸してくれただけで充分だ。いつか一護が尸魂界へ行き、流魂街から死神になってくれたらそれで良いと、ルキアは思った。
 その為にも、一護を護らなければならない。
 一護がやがて訪れる数十年後の尸魂界にルキアはいないだろうけれど、一護がその輝くような霊圧を身に纏って一人の死神となって護廷に身を置いてくれるようになる未来はきっと来る。
 ルキアは、いつか訪れるその未来を護る事こそが自分のすべき事だと思い定めた。

「一つだけアドバイスだ、ルキア。死神能力譲渡と決め付けて来るだろうが、言い訳が叶うなら言ってみろ。『虚に霊力を吸い取られて、回復の為に入った義骸で霊力が戻らなかった為に帰れなかった』と。」
「それだとそれこそ隠密機動の情報と矛盾しますよん。」

 浦原の横槍に一護が唇の端を少しだけ上げる。

「結果としてはルキアが一番手が掛かったけど、この二年、私が手を貸さなかった空座町担当の死神はいないよ。」
「! そうッスね。」
「? 浦原? 一護? どういう意味だ?」
「死神になる前から、強い虚が出た時、地区担当だけの手に負えない時は手を貸してたんだよ、私。」

 ルキアの疑問に一護は肩を竦めてあっさりと応えた。
 一護の言葉に雨竜は内心でショックを受ける。雨竜は死神になってからの一護しか知らないし、その力のアンバランスさ故に未熟と思っていたが、死神になる前から虚を弱らせるように力を使ってきたなど知らなかったし、思いも拠らなかった。
 雨竜は色々な情報が一遍に入ってきて混乱気味な自分の思考がまともに働いていない自覚があったので、大人しく帰って行った。
 門限近くになっても自分で動くのが億劫な状態のままだった一護は、自宅に電話を掛けてルキア共々浦原宅に泊まる旨を伝えた。
 電話を掛けに茶の間に降りた一護に付いて来ようとしたルキアを風呂に追い遣り、雨だけを傍に置いての電話だった。

『一護……。』
「ごめん、お父さん。流石に今日は疲れた。虚寄せの撒き餌をバラ撒いた莫迦がいて、その後始末に奔走したんだよ。浦原さん達もかなり手伝ってくれたんだけど大虚は堪えた。」
『やはりあれは大物だったか。』
「ん。双子にはルキアの兄が一時帰国する事になってその相談だって言っておいて。」
『判った。』

 受話器を置いた一護を、雨が心配そうに見上げてくる。

「大丈夫だよ。本当はそんなに疲れてないんだ。それよりルキアがお風呂から上がって来ない内に浦原さんに相談したい事があるから、ルキアがお風呂出たら教えてくれる?」
「あい。」

 こっくり頷く雨の頭を撫でてやって、一護は浦原の部屋へ向かった。

「浦原さん、途中で打ち切った画策の相談、続きしたいんだけど良い?」
「いいッスよ。どうぞ。」

 雨の姿がない事に気付いて視線を泳がせた浦原に気付いて、一護が口を開く。

「ルキアに聞かれたくない話だから、雨にはルキアの様子を見て貰ってる。」
「ああ。なるほど。そういう事ッスか。」

 難しい顔で考え込んでしまって口を開かない一護に、浦原が声を掛ける。

「黒崎サン?」
「……浦原さん、鎖結と魂睡の正確な位置って何処?」
「! 危険過ぎるッス!」

 一護の意図を読み取って、流石の浦原も慌てる。

「他に方法が思い付かないんだ。」
「だからって……!」
「ルキアは投げちゃってる気配があるからね。だったら精々悲壮感を纏って貰って奴に油断して貰おうじゃない。」

 不敵な顔をする一護に、浦原は苦笑するしかない。

「やっぱ、鎖結と魂睡を封じられたように装うしかないんじゃね?」
「霊圧を完全に消さないとバレますよ?」
「あ~、私が霊圧のコントロール苦手だからって事?」
「そうッス。」
「信用ないなぁ。」

 一護はくすりと笑って軽く瞼を伏せる。一護の体から立ち昇った霊気の中に、大柄な男と細身の男の姿が浮かび上がる。
 浦原は目を瞠る。

「黒崎サンの斬魄刀の化身ッスか?」
「そ。おっさんの方が『斬月』で、若い方が『天鎖』ね。」
「二刀なんスね。ああ。そういえば、斬月の解号を唱えた時には一刀で、天鎖を唱えた時に二刀になってましたね。」

 浦原が納得がいったというように頻りに頷く。浦原の飄々とした態度が気に障るらしく顔を顰めている天鎖に、一護は溜息を吐いた。

「『斬月』、『天鎖』、一時的に私の霊圧を完全に消す事って出来るよな?」
『開放する時に荒れる事を覚悟すれば出来ぬ事ではないな。』
『隊長さんを騙すとなるとタイミングが大事だな。』
「その辺は器用に出来んだろ、天鎖。」
『俺様に掛かれば出来ねぇわけねえだろ。』
「それでも勝算は高くないッスよ?」

 浦原の忠告に、一護は肩を竦める。

「理解ってます? 限定霊印を打っていても朽木隊長は隊長格で瞬歩が使えるんスよ?」
「実を言えば、私、瞬歩が使えるようになってる。」
「は?」

 一護の言葉が信じられなかったのか、珍しく浦原が間抜けな顔を晒す。

「今日の、虚を始末しながら遊子や夏梨の安全確認に走った時に、無意識に使ってた。反射的に使って、意図的には使えないように装ったけどね。」
「黒崎サン。」
「死神と対峙した時には使える素振りも見せる心算はない。けど、瞬歩が使えれば、こちらの動きを遅いと思ってる相手になら、避けた事も気付かれないだろう?」

 一護の真剣な眼には、油断はない。それでも賭けになるのだという認識はあるようだ。

「態と傷を負うって事ッスよね?」
「……姫の能力。」
「⁉」
「完現術だよね。どんな能力?」

 一護は浦原とは視線を合わせずに半眼を閉じて訊いた。
作品名:MEMORY 死神代行篇 作家名:亜梨沙