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MEMORY 死神代行篇

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 一護少年は同じ場面を目にしていて、何故ルキアの本心に気付かなかったのだろう?
 暴走した霊力を鎮める為に霊矢を打ち続けて手をボロボロにした雨竜を気にしてばかりいた所為だろうか。一護は暴走し掛けた霊力を自力で静めてしまった為に雨竜に借りはない。気を逸らしていなかったから気付けたという事なのかも知れない。
 学校の支度の為に朝自宅に戻った一護はコンを鞄の中に詰めて来ていた。
 学校帰り、鞄を持った儘浦原商店に寄った一護を浦原が待っていた。
 鞄を開くとコンが飛び出して一護に怒鳴る。

「くぉるぁ、一護ぉ!」

 精一杯ドスを効かせたのだろうコンの叫びに、一護は動じる事もなく受け止める。

「何の説明もなしに、何の真似だ、一護。」
「トイレに縛り付けられた方が良かったか?」
「はぁっ⁉」
「家で一番見つかり難い場所はそこだからな。お前が騒げないようにして見つかり難い其処に縛り付ける事を選ぶぞ、ルキアなら。」
「何で姐さんが……。」
「尸魂界からの追手が掛かるから、だろうな。」
「だったらこんな所でのんびりしてる暇なんかねぇだろうがっ!」

 焦って今にも飛び出しそうなコンを掴んで一護は溜息を吐いた。

「闇雲に走り回っても見つかるわけないだろ。それに追手がいるならそれを躱せないじゃルキアを助けられないんだぞ。」
「……どうするってんだ?」
「取り敢えず私は、浦原さんに相手して貰って、自分の力がどれだけ通用するか試してみなきゃ話にならないんだよ。」

 一護は無言で浦原に合図を送り、ぬいぐるみから改造魂魄を抜いて貰う。丸薬を胸ポケットに入れて、一護は生身の儘で地下勉強部屋に降りた。降りきってから丸薬を口に放り込み死神化する。

「こらぁ、一護ぉ……あ?」

 自分が一護の体で怒鳴っている事に気付いて、コンは戸惑う。

「テッサーイ、結界宜しくー。」
「承知致しましたー。」

 梯子の下から浦原が怒鳴ると、上からテッサイの声が降ってくる。

「結界?」
「内側のものは外へ出られません。霊圧然り、人も物も、結界を解くまで出られないッス。」
「ちょっ……一護っ!」
「勝手に行動されたら困るから大人しくしてろよ。これで、ルキアの助け方が変わってくるんだ、邪魔したら只じゃ置かないからな。」

 ワントーン落ちた一護の声に、コンは大人しく引き下がる。
 一護は浦原に向き直ると頭を下げる。
 浦原はふと笑って、杖を構える。

「なんだぁ? 何、杖なんか構えてんだ?」

 一護の体の中で、コンはその様子を見ながら呟く。
 一護は晶露明夜を構え、脚を踏み出した。
 コンが気が付いた時には、一護は浦原の背後に回って晶露明夜を振り下ろしたが、杖に軽く受け止められている。次の瞬間には浦原は一護の背後に回り杖を振り下ろしている。一護はかろうじて受け留めて移動する。
 段々動きが小さくなっていき、コンの眼には二人が動いていないように見え始めた頃、上から黒猫が降ってきてコンの頭に載った。

「うえっ⁉」

 悲鳴と呼ぶには色気のない声を上げたコンの頭から地面にストっと降りた黒猫が、見守るように二人に顔を向ける。
 コンにはまるで見えない二人の攻防を、黒猫はしっかり見て取っている。
 猫の正体は瞬神の異名を持つ四楓院夜一である。

「ほう? なかなかやりおるのぅ。」
「⁉」

 夜一の声を拾ってしまったコンが仰け反って身を引く。
 夜一はそんなコンに頓着する事なく二人の攻防を見護っていた。
 浦原の攻撃に対して一護は無意識に霊圧で全身を鎧っていく。浦原の霊圧は圧し掛かるような圧力は与えていないが、一護は浦原の強さに無意識に防衛線を張っているのだ。
 無意識の一護の対策に、一護が本質を読み取る力があると言っていた浦原の言葉に納得する。
 一護は浦原の攻撃を防ぎながら、頭の隅ではあれこれシミュレーションを続けていた。参考になるのは“記憶”だが、ルキアの考え方や性格が記憶通りである以上、白哉も恋次も記憶と変わらないだろう。だとすれば、中央四十六室からの指令という形が取られていれば、何の疑いもなく信じて実行に移す。
 勝った気にさせて油断させる方が現世での行動はし易い。だが、何の疑問も持たず言われるがままの人形にあっさり負けるのも悔しい。
 感情と計算が衝突する。
 正面の浦原を見据えて、感情を捨てて計算だけを優先出来る男を羨ましいと思った。
 その瞬間、杖状の儘の紅姫が鎖結と魂睡に迫る感覚を覚えた一護は、僅かずつ当たる位置を逸らした。視界を埋めた浦原の眼が見開かれるのに気付いて、一護は唇の端を笑みの形に歪める。

「……出来そうッスね。」
「体の方が反応したなぁ。」

 緊張を解いた一護は、コンの傍に慣れない気配を感じて振り向く。警戒心は薄い。結界を張ったのがテッサイである以上、結界が保たれた儘の此処に、敵の侵入は有り得ないからだ。

「あ? 夜一さんじゃん。久し振り。」
「久し振りじゃの、一護。」

 驚く気配もなく猫に話し掛ける一護にコンが目を剥く。

「いっ、一護っ、なんでへーぜんとしてんだよっ! 猫が喋ってんだぞ!」

 騒ぎ立てて夜一を指し示すコンに返る一護の反応は淡白だ。

「ぬいぐるみが喋るよりはマシじゃん。」
「そーゆー問題じゃ……。」
「そーゆー問題なんだよ。心配すんな。別に化け猫の類じゃねぇから。」
「儂を化け猫呼ばわりするなぞ、白哉坊以来じゃのう。」

 夜一が白哉坊と呼ぶのは確か朽木白哉だった筈だ。

「……朽木白哉?」
「そうじゃ。知っとるのか?」
「知り合いじゃないさ。ルキアの義兄貴で朽木家の現当主、だろ。」
「よう、知っとるの。」
「ルキアを引き取った頃にはもう隊長になってたって聞いてる。正常な状態なら隊長歴五十年以上の相手なんざ上手く騙せねぇだろうけど、現在の白哉なら騙せる確率も高い筈だし。一発勝負の賭けには違いないんだ。上手くいくように見守っててよ、浦原さん。」
「見守るんスか?」
「マジでヤバくなったら手を出す心算でいるでしょ?」

 理解っていると言わんばかりに横目で視線を流してくる一護に、浦原は苦笑する。

「一護……?」

 コンには意味が理解らない。訝しく思って声を掛けるコンに視線をやって、一護は溜息を吐く。

「本気でルキアを助ける為には、尸魂界に連れ戻すのを邪魔するんじゃ駄目なんだ。尸魂界に乗り込んで、ルキアを処刑する口実も気概も、全て叩き潰すしかない。」
「んなっ……!」

 言葉の続かないコンに、一護は苦笑して視線を向ける。

「私が石田に貸し作ったのは、表向きはどうあれ、石田の協力を取り付ける為なんだよ。」
「石田って、誰だ?」
「……眼鏡の滅却師がいたろ。」
「あ、あいつか。」

 思い出したコンが納得したように頷く。

「………姫もチャドも、完現術の能力が目覚めただろ。」
「かんげんじゅつ?」
「素質があったところへ、私の霊力の影響受けて能力が目覚めたんだ。」
「……おいっ! 井上さんやチャドが能力に目覚めたからって、尸魂界に行けるわけが………っ」

 一護は苦笑するようにコンを見ている。

「お前ねぇ、コン。浦原さんをなんだと思ってるんだよ。」
作品名:MEMORY 死神代行篇 作家名:亜梨沙